MotoGP第9戦イタリアGP:ホンダ苦戦の週末、ファクトリーから中上貴晶が代役参戦

©Honda Racing Corporation

MotoGP第9戦イタリアGPが、6月20日から22日にかけて、イタリアのムジェロ・サーキットで行われた。 ホンダのテストライダーを務める中上貴晶は、ルカ・マリーニの代役として参戦し、スプリントレースを15位、決勝レースを16位で終えた。

ホンダはムジェロで全体的に苦しい戦いを強いられる

2025年からホンダのテストライダーを務める中上貴晶(ホンダ)にとって、イタリアGPは2度目の参戦となった。ただ、前回フランスGPのワイルドカード参戦とは異なり、今回イタリアGPはルカ・マリーニの代役参戦である。

ホンダのファクトリーライダー、マリーニは、イギリスGP後に鈴鹿8耐のテストに参加したが、2日目の5月28日に転倒。左股関節の脱臼、左ひざの靭帯損傷、胸骨および左鎖骨の骨折、右肺の気胸を負った。マリーニはすでに日本の病院を退院してムジェロ・サーキットにも姿を見せていたが、バイクに乗れるほど回復はしておらず、中上がその代役を担った。

今回の参戦はテストライダーとしてのワイルドカード参戦ではなく、代役参戦ということもあり、大きなアイテム、パーツの投入はなかった。開発のためというよりも、結果を求めていく参戦となった。

ただ、中上のイタリアGPは苦しい戦いとなった。これは中上だけではない。どのホンダライダーも、イタリアGPは厳しい週末だった。辛酸をなめた2024年シーズンを経て、2025年シーズンのホンダは結果を改善してきた。だが、イタリアGPについては今季初めて全4名のライダーが予選1(Q1)落ちしている。

中上も初日からコーナー立ち上がりでリアタイヤがスライドし、トラクション不足に苦しんだ。また、今年のイタリアGPは気温が高く、連日、午後には気温30度以上、路面温度は50度近くなったのだが、気温が高くなると状況が悪化する現象が起こった。決勝レースでは、中上曰く「昨年や日本でのテストも含めて、あまり感じたことのないレベル」のリアからのバイブレーションも発生した。

このような状況の中で、レギュラーライダーであり負傷欠場したマリーニもコースサイドで走りをチェックし、中上に細かなアドバイスをくれたという。

こうしたイタリアGPを、中上は予選19番手で後方からのスタートとなり、スプリントレースは15位、決勝レースは16位で終えている。結果は厳しいものだったが、中上の本来の仕事としては完走してデータを持ち帰ることだ。しっかり務めを果たしたと言えるだろう。

厳しい代役参戦ではあったが、これが、中上にとっては初のファクトリーチームでの参戦だった。2018年から引退までの2024年まで、中上はホンダのサテライトチームであるイデミツ・ホンダLCRで戦ってきたからだ。

MotoGPクラスで7シーズンを戦った中上だが、ファクトリーチームは「緊張感がある」と言う。

「メンバーも違うし、ピット内の景色も違うし、人数も多いんです。走る前にいろいろな人たちから情報がもらえて、共有されます。あらためて、『ファクトリーチームってすごいな』と思いました。僕はLCRしか知らなかったから」

「LCRとの人数の違いは見えていましたけど、実際にファクトリーチームに来て、あらためてファクトリーチームとサテライトチームの差を感じました。すごく大きいですね」

中上は、「小さいころからの夢だった、ホンダのファクトリーチーム。ここで走りたかったけれど走れずに引退しました。でも、今回、望んでいた形ではなかったけれど、チャンスが来ました」と、ファクトリーチームでの参戦について語った。

ホンダにとって難しい週末ではあったが、中上にとってはそればかりではないイタリアGPでもあった。

中上にとっては今季2戦目の参戦となった©Honda Racing Corporation
負傷欠場のマリーニも姿を見せていた©Honda Racing Corporation
中上にとっては初めてのファクトリーチームからの参戦©Honda Racing Corporation

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伊藤英里 近影

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