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ヤマハ・YZ250FX……979,000円
日本のエンデューロは海外に比べてコースは狭く、速度域は遅い。さらに海外の様にベテランライダーは少なく、大人になってから始めるライダーが多い。ハードエンデューロでは様々な障害物を超えなくてはならない。例えば丸太や岩、大きな段差などがあり滑りやすい沢などもコースに含まれる。
そんな条件なので、モトクロッサーがベースとはいえ内容はかなり別物となる。刻々と変化するコンディションに対応出来なくてはレースでの好成績は望めないわけだ。マシンを自分の支配下に置く、自分の思うように動いてくれないといけないわけだ。
まずエンジンは、吸入空気量を増加させた吸入ポート、排気カムシャフトのプロフィールを最適化(リフト量を増やし低中速域のコントロール性を向上)、エアクリーナーボックスにダクトを追加(中高速回転域の出力向上)、エアクリーナーはファンネル付き仕様(低中速回転域のトルクアップとコントロール性向上)、カムチェーンテンショナーのセッティング最適化、バランサーウエイトの位相による体感振動の低減とスムーズなレスポンスを実現、ミッションには熱処理を加えてパワーアップに対する強度アップ、6速のミッションは極低速から高速まで幅広いスピードレンジに対応、クラッチはスプリング荷重のアップとFX専用のプレートとフリクションディスクの採用、大発電量のACMの採用、国内専用のECUマップをインストール済み(スタンダートとマイルド)となっている。
つまりFとはかなりの点で違ったセッティングとなっており、障害物の攻略からハイスピードでの走破性まで対応可能な性能なのだ。
フレームでは懸架プレートの形状を変更している。これは非常に荒れた路面を走るエンデューロに合わせ、ハイラレラルビームフレームの性能を十分に発揮させるため。プレートの強度を上げたということ。サスペンションはバネレートも減衰力も国内向けに専用セッティングとした。高い走破性を保ちつつ疲れにくくしたもので、Fに比べると柔らかい方向性になっている。
フロントブレーキはFと同様にピストン径を大型化し、リヤブレーキはブレーキパッドをFX専用品を採用し、軽量化とコントロール性アップとした。
その他FXにはアンダーガードを装備していること、排気音質を向上させたマフラーの採用、サイドスタンドの標準装備、18インチのリヤホイールとダンロップMX33タイヤの採用、ハンドルポジションを前方へ16.5mm移動なども行われた。シート高は955mmとモトクロッサーよりは低く、車重は少し重くなって111kgとなる。それでも十分に軽く仕上がっていると思う。
国内のエンデューロ、ハードエンデューロに合わせた専用仕様がこのFXとなり、それは勝ちに行くライダーだけではなく、サンデーオフロードライダーにも乗りやすくお薦めのマシンになったと言えるのだ。
それでは試乗する。シート高はFより25mm低いので、僅かではあるけど足つきは良い。それでも十分に高いので身長170cm以下のライダーではツンツンだろう。日本専用のエンデューロモデルなので、もっとシート高は低くして欲しいと思うのだが、実はこのモデルでモトクロスもやってしまうのがアメリカのライダーだそう。そんなこともあって極端に低くは出来ず、各自でアフターマーケット製シートなどで低くして交換して欲しいという。
ま、それはともかくハイスピードで走る場面も多いので、ずっとスタンディングで走る訳にもいかず、このシートが必要ともなるのであろう。
最初はスタンダードモードで走り始めたが、これはFと同じく結構な過激であった。レスポンスは物凄くシャープでパワフル。ミッションギア比が低めということもあって、体のアクション無しで簡単にフロントは浮いてきてしまう。それではともうひとつインストールされているマイルドモードにしてみた。
お!結構変わるもんで、明らかにレスポンスはマイルドになり(それでも大きく開ければ加速は鋭い)扱いやすい感じになる。例えばウイリーしてみてもスタンダードモードでは操作が忙しくて余裕は少ないが、マイルドではアクセル操作に余裕が出て長く出来るのだ。
サスペンションもFに比べれば柔らかいから乗り心地も良い。レーサーで乗り心地と言うのも変だけど、私レベルの速度域でも非常にストロークを使える感じで、ギャップでもゴツゴツ感は少ない。勿論ジャンプの着地など大きな衝撃ではしっかり踏ん張ってくれる。
タイヤが18インチで、タイヤ自体でのたわみは19インチよりあるのだが、そこまでの差は感じることは出来なかった。モトクロス的な走行も、低速で障害物を超えるような走行も、岩場でもサスペンションは良く動きタイヤのグリップも良く走れている限りは楽しいと思われる。
これがひと度、障害物に引っかかったり、斜面でストップしてしまった時などでは、足を着いて押すなんてことは難しい。190cm近い身長のライダーならいいけど、大多数のライダーではそんな時はさっさと降りて押すことになる。
どうしてもエンストする回数も増えるけど、大発電容量ACMが装備されてるので心配には及ばないのが嬉しい。クラッチさえちゃんと切れていればすぐに始動してくれるからね。そのクラッチは軽いし容量がアップされてるので、これも安心感が大きい。
車重は111kgとFよりは重くなっている。しかし走っている限りはその重さを感じることは無い。勿論スタックしたり転倒した時には体力を使うけど、それでも全然許容範囲だろう。サイドスタンドもやっぱりあると便利だから、本格的なレースに出ないライダーにとっては重宝する装備。
全体としてFXは非常に乗っていて楽しい、楽しめる、それでいて抜群の走破性を持つマシンだった。今回乗った4台の中ではこれが一番欲しくなった。体力維持でモトクロスコースを走るのも、ちょっと山間に入り込んでみたりトライアル的な走りでも遊べそうな感じがしたのだ。何しろ日本専用仕様っていうのが嬉しいじゃないか!お値段は979,000円とFより66,000円高いが、内容からしたらお買い得なのではと思う。
ディテール解説
主要諸元
YZ250FX 車体打刻型式/原動機打刻型式:CG41C/G3N1E 全長/全幅/全高:2,175mm/825mm/1,280mm シート高:955mm 軸間距離:1,480mm 最低地上高:320mm 車両重量:111kg 原動機種類:水冷, 4ストローク, DOHC, 4バルブ 気筒数配列:単気筒 総排気量:249cm3 内径×行程:77.0mm×53.6mm 圧縮比:13.8:1 始動方式:セルフ式 潤滑方式:ウェットサンプ エンジンオイル容量:0.95L トランスミッションオイル量:- オイルタンク容量:- 燃料タンク容量:8.2L(無鉛プレミアムガソリン指定) 吸気・燃料装置/燃料供給方式:フューエルインジェクション 点火方式:TCI(トランジスタ式) バッテリー容量/型式:12V, 2.4Ah(5HR)/BR98 1次減速比/2次減速比:3.352/3.923 クラッチ形式:湿式, 多板 変速装置/変速方式:常時噛合式6速/リターン式 変速比: 1速:2.384 2速:1.812 3速:1.444 4速:1.142 5速:0.956 6速:0.814 フレーム形式:セミダブルクレードル キャスター/トレール:27°10′/116mm タイヤサイズ(前/後):80/100-21 51M(チューブタイプ)/ 110/100-18 64M(チューブタイプ) 制動装置形式(前/後):油圧式シングルディスクブレーキ/ 油圧式シングルディスクブレーキ 懸架方式(前/後):テレスコピック/スイングアーム(リンク式) 乗車定員:1名