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MV AGUSTA BRUTALE 800ROSSO……1,892,000円
世界各国のSS/ST600レギュレーションを考慮した675ccも存在するけれど、2011年から発売が始まったMVアグスタ製並列3気筒車の主役は、800ccである。このシリーズには、フルカウルスーパースポーツのF3、ネイキッドのブルターレ、ブルターレのカスタム仕様となるドラッグスター、レトロな雰囲気のスーパーヴェローチェ、ロングランでの快適性に的を絞ったツーリスモヴェローチェの5機種が存在し、それぞれに豊富なバリエーションモデルが存在するので、現在の同社のカタログには、15機種以上の800ccトリプルが並んでいる。
そんなMVアグスタ製800ccトルプルは、今年度から、ブルターレ、ドラッグスター、ツーリスモヴェローチェの3機種に、親しみやすい価格のロッソを設定している。その名が示す通り、ボディが赤一色でペイントされたロッソの特徴は、エンジンパワーを110psに統一していることと(ブルターレとドラッグスターのRRは140ps)、一部の装飾や加工を省略していることくらいで、パッと見ではコストダウンの気配は感じられない。ちなみに3台のロッソは、各シリーズの標準モデルより50万円ほど安く、この価格はMVアグスタに憧れを抱くライダーにとって、嬉しい材料になるだろう。
ブルターレ800ロッソのライバルと言ったら、即座に思いつくのはエンジン形式が同じ、トライアンフ・スピード/ストリートトリプルRSとヤマハMT-09だが、価格帯を考えると、ドゥカティ・モンスター1200やBMW S1000Rなども競合車になりそうである。とはいえMVオーナーの多くは、他メーカーとの比較ではなく、MVのラインアップ中で悩むケースのほうが多いようだ。
ライバル勢や兄貴分とは一線を画する、圧倒的な軽快感
細部の仕様変更は何度も行われているけれど、ブルターレ800の基本構成は、2013年に登場した初代以来、ほとんど変わっていない。となれば、現代の視点で接すると、多少なりとも古さを感じそうなものだが……。数年ぶりのブルターレ800としてロッソを走らせた僕は、微塵もそんな印象は抱かなかった。いや、厳密に言うならエンジンの低回転域のマネージメントはちょっとラフだったものの、その感触はあえての演出のような気がしないでもない。そんなことより僕が感心したのは軽さだ。並列3気筒エンジンはどんな領域からでも弾けるようなフィーリングを披露してくれるし、車体の動きは超が付くほどヒラヒラ&スイスイ。改めて言うのも気が引ける話だが、兄貴分に当たるブルターレ1000とも、前述した他メーカーのライバル候補とも、ブルターレ800の乗り味はまったく違うのである。いずれにしても、2013年の時点で、この乗り味の基盤が構築されていたことを認識した僕は、何となくしみじみした気分になってしまった。
実際にロッソを走らせている最中、僕が意外だったのは、パワー不足を感じないうえに、パワー特性にも違和感がなかったこと。サーキットや見通しのいい峠道などで、ブルターレ800RRとの比較を行ったら、-30psを実感することになるだろうけれど、1台で走っているぶんには、ロッソだって十分にパワフルである。もっとも僕がそう感じた背景には、ライディングのノイズとなる慣性トルクが適度に緩和され、燃焼トルクが瑞々しく感じられる、並列3気筒ならではの特性があるのかもしれない。もちろんこの点については、ブルターレ800RRやトライアンフとヤマハの並列3気筒車にも通じる話だが、パワーの落とし方や車体の設定が絶妙なのだろう、ロッソはとにかくスロットルが開けやすいのだ。
オールラウンドに使えるMVアグスタと言ったら、筆頭に挙がるのはツーリスモヴェローチェである。とはいえ今回の試乗を通して、僕はブルターレ800ロッソを気軽でスポーティなオールラウンダーと呼んでいいんじゃないかと思った。もちろん、快適性や安定性はツーリスモヴェローチェに軍配が上がるものの、とっつきやすさや日常域での使い勝手のよさなら、車重が16kg軽く、シートが20mm低く、軸間距離が45mm短い、ブルターレ800ロッソのほうが上なのだから。