パンアメリカ1250|ハーレーダビッドソンの新たなチャレンジ! 最先端技術満載のアドベンチャーモデルは走りも新しかった。

ハーレーらしいクルージング性能と、ハーレーらしからぬアグレッシブさの融合。|パンアメリカ1250試乗

アドベンチャーツアラー・Pan America1250
アドベンチャーツアラー・Pan America1250
ハーレーダビッドソンと聞いてすぐに思い浮かぶのはクルーザーモデルだ。そんな今まで当たり前だった常識を覆すモデルが発表された。アドベンチャーツアラー・Pan America1250である。そのラインナップにある、車高調整機構<アダプティブライドハイト>が標準装備されたSPECIALのインプレッションをお届けしよう。
PanAmerica1250SPECIAL(左・一部オプションパーツ装着)とPanAmerica1250(右)。SPECIALのほうがよりアドベンチャーらしい走りを堪能できる装備を搭載している。

「おおっ、写真で見るよりずっとカッコいいじゃん!」
それがPanAmerica1250に対する第一印象だ。ハーレー初のアドベンチャーモデルのスタイリングは超個性的。他メーカーのそれらとは一線を画していて、各部のディテールからはジープのようなタフさが感じられるなど強く脳裏に焼き付く。そのフォルムから今まさにハーレーというブランドが変化していることを実感した。

フルパニア装備時の迫力はアドベンチャーツアラーならでは。

ハーレーがさまざまな新しい取り組みをしているというのは数年前から話題になっていた。いままでラインナップがクルーザーだけだったことから個人的には保守的なイメージがあったのだが、電動バイクの「LIVEWIRE(ライブワイヤー)」が発表されるとハーレーが変わりつつあることを感じた。しかしライブワイヤーはパワートレインといい価格といい我々から離れたところにいる存在だったため、変化しようとしている雰囲気を感じ取るにとどまっていた。
しかし新たなカテゴリーのPanAmerica1250を目の前で見ると、今まさにハーレーが大きく変わっていく現場に立ち会っているのだということを実感した。

ミリタリー感あるカラーリングもラインナップされている。

SPECIALは電子制御サスペンションやブラッシュガード、チューブレススポークホイールなど数多くの専用装備を備える

PanAmerica1250のラインナップは無印のスタンダードモデルとSPECIALの2種。違いは装備にある。SPECIALには電子制御式のセミアクティブサスペンションやタイヤの空気圧をメーターでチェックすることができる監視システム、万一の転倒時にダメージを軽減するブラッシュガード、本格的なオフロード走行では必須のアルミニウム製スキッドプレートなど数多くの装備が付加されている。

  • SPECIALに搭載されている装備
    • タイヤ空気圧監視システム(TPMS) 
    • センタースタンド
    • マルチポジションリアブレーキペダル 
    • ブラッシュガード
    • アルミニウム製スキッドプレート 
    • Daymakerシグネチャーアダプティブヘッドランプ
    • ハンドウィンドディフレクター  
    • ヒーテッドハンドグリップ
    • ステアリングダンパー 
    • アダプティブライドハイト
    • チューブレススポークホイール

価格差は30万円以上あるが、アドベンチャーツアラーとしての特性を満喫したいからSPECIALを選ぶというユーザーが多いと思われる。また先に言ってしまうと、実際に乗った感覚からも内容の差は金額以上だと感じた。

スクリーン下部にはバンク角に応じてコーナーの先を照らしてくれる<アダプティブライト>を装備。
季節を問わず走るライダーにはありがたい<グリップヒーター>も備えている。

SPECIALの装備の中でも特に注目されているのが速度によって自動的に車高が変わる<アダプティブライドハイト>であろう。信号待ちなどで停止するときは車高が下がり、走り出すと自動的に車高が上がるという仕組みだ。
小柄なライダーにとっては夢のようなシステムである。かくいう筆者も身長165cm、純日本人的体型(要は足が短い)なので大排気量のアドベンチャーモデルに乗るときは少なからず緊張するのだが、<アダプティブライドハイト>が搭載されていると聞いただけで緊張感が大幅に和らいだ。

<電子制御フロントフォーク>のほか、ダート走行時に威力を発揮する<ステアリングダンパー>もSPECIALの装備
速度に応じて停車時に自動的に車高が下がる<アダプティブライドハイト>には注目が集まる。

トルクフルなエンジン特性と安定したハンドリング、なにより足着き性の変化に感動!

ローシートへの交換は工具不要という手軽さ。

停止状態のPanAmerica1250Sに近付き、座ってみると思ったより足がつかない。なぜ?と思ったら、エンジンを止めた状態で車体が上下に動くと車高が少し上がるのだという。そこでイグニッションをオン(スマートキーシステム採用)にすると瞬時に車高がスッと下がり、足つきが良くなった。なんて未来感ある動き。これはスゴいぞ!
さらにオプションのローシートに交換してもらうと一般的なネイキッドとそう変わらないのではという足つきに。これなら純日本人的体型の自分でも不安なく乗れる。大柄で重量がある車体ほど、こういう機能があるのはうれしい。アドベンチャーツアラーへのハードルが一気に低くなる画期的なシステムだ。

エンジンはハーレー伝統のVツインレイアウトを採用しながら完全新設計のRevolution Max 1250。

水冷・DOHC・可変バルブシステム採用など、高いパフォーマンスを狙った仕様だ。マフラーからのサウンドは大排気量車特有の重厚感あるものながら、アクセルへの追従性は良好。予想以上に軽快に吹け上がるではないか。
期待を胸にクラッチをつなぐと、Vツイン独特の排気音にあわせて路面を蹴飛ばすように加速する。決して軽量とはいえない車体だが、それを感じさせないくらい爽快なフィーリングだ。ここで今まで持っていたハーレーのイメージは完全に払拭され、新鮮な感覚に包まれた。

試乗当日の軽井沢はあいにくの天候。雨が降ったりやんだりで路面はほとんどがウェット。通常のバイクの試乗なら残念でしかない状況だが、アドベンチャーモデルであれば話は別。さまざまなシチュエーションを駆け抜けることを主眼に置いているのだから、むしろ好都合ではないかと思える。

やや荒れて、水たまりが多い枝道ではロングストロークのセミアクティブサスペンションが良い仕事をし、細かい衝撃を吸収。ライダーに不安を感じさせない走行安定性を実現している。電制なしのサスペンションがダイレクト感ある反応をするスタンダードモデルと比べると、SPECIALのセミアクティブサスペンションは情報の伝達がやや希薄な印象。そのため路面状況が掴みにくいと感じるシーンもあった。だがコンフォート性はSPECIALのほうが上。それゆえロングツーリングでは疲れにくいであろうことが想像できる。

コーナーリングでは大柄な車体をライダーが体全体で操るイメージだが、荷重移動に対する反応が良いのでダルな印象は受けない。むしろ重心の高さを生かして積極的に曲げていくこともできる。このあたりの挙動はアドベンチャーモデルとロードモデルの中間的な感じ。車体のディメンションや重心位置、やや後ろ気味の着座位置などが関係しているのだろう。バンク中の姿勢も安定していて、濡れたワインディングを気分良くスムーズに駆け抜けることができた。

また高速クルージングはハーレーの血統であることが色濃く感じられるシーン。
前後に長いロードモデルのようなガソリンタンクやバーハンドルによるアップライトなポジションはゆとりがある。スピードとVツインエンジンからの鼓動感が絶妙にマッチする回転数で走るのがとても心地よい。
トルキー&パワフルなエンジン特性のおかげで、追い越しなどもアクセルワークだけで完結できる。ストレスなく走ることができるので、長時間のライディングでも肉体的な疲労のみならず、精神的な負担も軽減される。

そしてせっかくなのでハーレーダビッドソンジャパンが用意してくれたオフロードにも突入してみた。
といってもそれほど威勢がよいものではなく「雨の日のダートをこんな大きなバイクで走るなんて…」と少々ビビリ気味に、ソロソロと入っていったというのが真相だ。

ところが不安は杞憂だった。
V型エンジンによる蹴り出し感がリヤタイヤを通してしっかりと路面を捉え、車体をグイグイと押し出す。スムーズに動くサスペンションがギャップをうまく処理し、ハンドリングをライダーのコントロール下から外さない。そのためちょっと大きめにアクセルを開けてリヤをスライドさせてみようか、なんて遊び心まで湧いてくるほど。腕に覚えがある人ならばライドモードの変更でかなりアグレッシブに走れるだろう。“あらゆるシチュエーションの路面を不安なく走破する”というアドベンチャーツアラーとしての性能はかなり高いと感じた。

ハーレーの新しいシステムは「アドベンチャーツアラーに乗りたい」と思う多くの人の夢をかなえるもの

小柄なライダーならずとも気になるのが自動車高調整システム<アダプティブライドハイト>だ。
走り出すと車高が上がって、減速して止まるときには低くなるのだが、その動きは実に自然。一般的なペースで走っているときはその動きに気付かないほど。もし<アダプティブライドハイト>の動きを体感したいのであれば、安全なところでフロントブレーキを強めにかけて急制動気味に停止してみるといい。するとググッと沈み込んだフロントフォークが戻るのと同時に車体がスーッと沈むのを体感することができる。その動きが面白くて思わず何度も試してしまった。本当に良くできたシステムである。


そしてオフロード走行時にも<アダプティブライドハイト>は強い味方になる。足元が不安定なダートにおいても足がつくというのは実に心強いこと。小柄なライダーはもちろん、オフロードビギナーであっても大排気量のアドベンチャーツアラーで林道に入っていってみようかなという気になる。

PanAmerica 1250 SPECIALはアドベンチャーツアラーが持っている魅力を、より幅広いライダー層に味わわせてくれるバイクだといえよう。

PanAmerica 1250 SPECIAL

全長:2,265mm
ホイールベース:1,580mm
車両重量:258kg
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型2気筒
総排気量:1252cc
最高出力:112kW (152ps)/8750 rpm
最大トルク:128 Nm/6750rpm
フューエルタンク容量:21.2リットル
フロントタイヤ:120/70 R19 60V
リアタイヤ:170/60 R17 72V

メーカー希望小売価格 ¥ 2,680,700(ビビットブラック) ¥ 2,710,400(モノトーン)



著者プロフィール

横田 和彦 近影

横田 和彦

学生時代が80年代のバイクブーム全盛期だったことから16歳で原付免許を取得。そこからバイク人生が始まり…