【12】2スト50ccスクーターはボアアップでどのくらい速くなる?|楽しいアプリオ12

2ストスクーターJOGアプリオを改造して、快速&快適の2快(ツーカイ)仕様にしちゃおう!というのが当企画。前回はボアアップキットを組み込んだわけですが、じゃあすぐに試走するのはNGです。燃調を合わせてあげないと、エンジンを焼きつく恐れがあるし、駆動系をセッティングしてあげないとパワーを生かせずイマイチな走りになってしまうことも! 

取材協力
●KN-YOKOHAMA (045-593-9402)
ボアアップ前後で外観は変わらず。のはずだが、68cc化したJOGアプリオが心なしか凛々しくみえてくる。

ボアアップキットを組み込み、キャブレターもちょっぴり大きなタイプに交換済み。今回は、ここからキャブレターと駆動系のセッティングを行い、速いマシンへと仕上げていく。なお外装類はシートボックスなど最低限取り付けた状態で行った。

1000km走行した駆動系は……

駆動系を開けるのはおよそ半年ぶり。ウエイトローラーのアウターに大きな摩耗はなくコンディションは良好。Vベルトもそれほど減ってはいなかった。
ドライブプーリーのフェイス面を見るとほぼ9割方が濃いグレーとなっていて、Vベルトがこのあたりを使ってしっかりと変速していた、良いセッティング状態ということがわかる。

まずはキャブから着手!

今回のキャブレターセッティングは、レース用途ではないので、メインなのでそれほどシビアには行わず、メインジェットとスロージェット、エアスクリューで調整することに。メイン♯90、スロー♯54から試走し始め、ジェットの番手やエアスクリューを調整。3〜4度ほど試走し、メイン♯86、スロー♯52に落ち着いた。

次は駆動系をセッティング

ボアアップキット組み込み前は、エンジンパワーが小さかった故に、駆動系キットを組むと最高速アップしようとしても結果が伴わず、加速力とバランスさせるのに一苦労でした。今回はKN-YOKOHAMA佐々木さんの経験から見繕ったパーツ群を投入。これがほぼドンピシャで、ウエイトローラーの重量を2〜3度変更する程度で済んだ。

ノーマルエンジンだった前回までの駆動系との違いは、強化センタースプリングの投入と、トルクカムをより開く(ハイギヤード化)ようにするためのオフセットワッシャーを追加したこと。トルクカム(KN企画製)の溝の角度を立ってるタイプから寝ているタイプに変えた。

Point! あえてのシム抜き。

プーリーボス部分に入れていたシムワッシャーは、0.3mm・0.5mm・1.0mmの3枚、計1.8mm。このうち1.0mmをクローワッシャーの外側に移設した。本来ならばシムを多く入れた方がダッシュ力が増すのだが、駆動系メンテをマメに行わない可能性がある筆者とあって、Vベルトが摩耗で細くなった際を想定して、プーリーボスにVベルトが接触することで、ベルトがスリップすることを防ぐ目的だ。

ウエイトローラーはちょい軽に!

KN企画製シリンダーによって狭くなったパワーバンド内でじっくり変速させる=すぐに変速が終了しないように、センタースプリングを強化タイプに変更する。ノーマルエンジン時に組んでいたウエイトローラーの重量(5.5g×6個・合計33g)は、エンジンパワーが増したこともあって5g×6個の計30gとちょい軽めの重量に落ち着いた。

ボアアップの恩恵は? いざ試乗

オーナーインプレッション

「今までは発進時も巡航時もスロットルを全開にしている場面が多かったけれど、ハーフスロットル以下でも十分に速い。信号が青になってからのグイッと加速が大幅に強化されていて、そのまま交通の流れをリードする際もスロットルを全開にする必要はまったくナシ! 今までは失速するほどの急勾配の峠道でも、車速をキープできるようになり安心感が増した。排気音はノーマルと同等の静かさをキープ。新聞配達のスーパーカブ50よりも(音質は違うけれど)静かかもしれないと感じた」(山田俊輔)

ジャーナリストインプレッション

「正直その元気の良い加速力には度肝を抜かれてしまった。ポンポンポンと歯切れの良い排気音は特に煩くはない。スロットルを開けて発進すると、ググッと腰がシートに押しつけられる程の加速力にビックリ。信号発進でクルマの流れをリードするのも容易。気持ちに大きなゆとりを生む高性能ぶりに自然と頬が緩む。流れの速い郊外のパイパス路も後続車を気にする必要のない余裕のクルージング性能を発揮。そのポテンシャルの高さは50ccとは比較にならないレベルに仕上がっていた」(近田茂)

「49ccから68ccへのボアアップだからその差はわずか19ccだが、パーセンテージにするとおよそ39%アップとなる。250ccなら350ccに拡大したのと同程度と聞けば、このボアアップの威力がよりイメージしやすいだろう。実際に試乗してみると、49cc時代とは別物のようにパワフルであり、あれだけ苦労した10%程度の勾配もグイグイと上ってしまう。また、キャブと駆動系のセッティングがほぼ完璧に行われたことで、10km/h刻みでスロットルを全開にするという意地悪なテストをしても息継ぎせずスムーズに加速する。これだけパワフルになると、フレームや足回り、そしてブレーキの弱さが露呈するが、やはり2ストならではの快活な吹け上がりと微振動の少なさは捨てがたく、まさに〝羊の皮を被った狼〟に変身したと言えるだろう」(大屋雄一)

元モトチャンプ編集長インプレッション

「ノーマルの排気量の状態でも、加速していく時の変速回転数が最適なセッティングだったため、ストレスや無駄のない加速フィーリングだったが、排気量が上がったことによってトルクが増していて、上り坂などの負荷の高いシーンでの加速力が上がっていることが感じられた。このエンジン特性に合わせた駆動系のセッティングも素晴らしく、3ポートとなっている排気ポートによる、高回転型の出力特性に合わせた変速回転数によって、どんな速度域でも全力で加速できるように仕上がっており、高回転型にもかかわらず、アクセル開度が少ない時にも唐突さのない、扱いやすい仕上がりが街乗りでも使いやすい」(千輪毅)

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著者プロフィール

山田 俊輔 近影

山田 俊輔

Motor-Fan BIKES 編集長1981年生まれ。身長180cm(モジャモジャを足すと185cm)。初めて…