最新作|公道を走れる超ミニマムバイク「仔猿」。エンジンを2基搭載のX50TTに、ちょっとだけ乗ってみた。

先日お伝えした仔猿のニューモデルであるX50TT。エンジンを縦に2基載せて繋ぎ合わせるという驚きの手法で2気筒化したツアラーなのだが、お披露目の日に乗せてもらえるという幸運に恵まれた。こんなに小さなボディと2気筒エンジンの組み合わせは、一体どのようなものなのだろう。


REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
仔猿X50TTに乗ってきたぞ!

CKデザイン・仔猿X50TT……1,089,000円(消費税込み)

先日お伝えした仔猿のニューモデル、エンジンを縦に2基積んだX50TT。2007年から開発が続き、ようやく市販できるだけ熟成された。従来型に比べて排気量の小さなホンダ製汎用エンジンを2基使うことで、合計50ccになるという離れ技を駆使した新型の仔猿。なぜエンジンを2基使ったかといえば、単気筒31ccの従来モデルよりツインの50ccにすることでツアラーとしての資質が上がると考えてのこと。また縦にエンジンが2基連なることでホイールベースも長くなることから、乗り心地や直進性でも有利になっていることだろう。とはいえ、全長860mm、全幅430mmの小さなボディであり、ホイールベースだって599mmしかない。一体どんな走りなのかは未知の領域。ところが発表会が行われたこの日、会場内という条件付きだが試乗させてもらえるという。こんなチャンスはそうそうない。喜び勇んで走らせていただいた。

仔猿X50TTのおさらい

可愛いスタイルだが2本出しマフラーで力強さも備えている。
全長わずか860mm。
全幅もわずか430mmでしかない。

仔猿はそもそもCKデザイン代表の佐々木和夫さんがホンダの汎用エンジンを見たことで、バイク用に使えないか考えたことから開発が始まる。佐々木さんが初めてバイクに触れたのは、今はなき多摩テックでモンキーに乗った時のこと。その時からモンキーは特別な存在だったそうで、汎用エンジンを使ってバイクを作るならモンキーのようなスタイルしか考えられなかった。実際のモンキーよりさらに小さなボディとすることで、世界一小さく可愛らしいバイクとして発売されたのだ。

エンジン1基ずつにマフラーがつく。
2基のエンジンはベルトにより連結されている。
なんとタイヤはCKデザインの専用設計! トレッドパターンも「CK」柄。
エキパイとの間隔は数mmしかない!
折りたたみ式ハンドルを採用。
リヤサスペンションが装備された。

2つのエンジンをベルトでつなげていると聞いて、エンジンをどう同調させているのかが気になるところだが、実は特別なことは何もしていないとのこと。しかもエンジンは汎用のため、スターターは手で紐を引っ張るスタイル。前後のエンジンにそれぞれスターターがあり、始動は1つずつ行う。ということは2基とも始動せず、1基だけエンジンを始動できる。この状態でも実は走行可能で、25cc仕様としても普通に走ることもできるのだ。

実際走るとどう感じるのか?

身長163cmのライダーでもポジションは窮屈だ。

またがった状態を見てもらえばわかるように、これだけ小さなバイクは誰しも未経験だろう。これだけ小さいと小学生でも乗ることができそうだし、実際敷地内などでバイクの練習をするにもピッタリだ。すべてが小さく作られているわけだが、大人が乗車しても問題ないだけの剛性や強度が確保されている。だからまたがっても壊れてしまいそうな不安感はゼロ。安全な設計を最優先するCKデザインならではのポイントだ。

自然と笑顔になること間違いなし。

エンジンを1基ずつかけてみると、確かにツインエンジンらしい排気音を奏でてくれる。スロットルは1本で2基とも操作できるようになっているため、回転数にズレは感じられない。それではスタートしてみよう。と、発進時から力強く加速してくれて、これは意外。もっとモッサリした加速なのかと想像していたのだが、いきなり裏切られることになった。そのままスロットルを開け続けると加速感が衰えることなく速度が乗っていく。これなら確かに公道を走っても遅くて怖い思いをすることはないはず。普通に走ってくれるのだ。

リヤショックも前後のブレーキ専用設計だ。

これだけ加速してくれると足まわりがついてくるのか心配になったが、これまたビックリで路面の荒れを程よくいなしてくれる。だからスロットルを開け続けていても不安になることはない。当然のことだが、これだけ小さなサスペンションなどないから、佐々木さんが試行錯誤して開発した専用部品。さらにはタイヤも仔猿のために作られた専用品で、サイドウォールにはCKデザインと描かれているうえに、トレッドパターンもCKのロゴマークになっている。芸が細かいのだ。さらに4インチしかないホイール、さらにはドラムブレーキも専用設計されたもの。このブレーキもしっかりとした制動性能を備えていて、左右のレバーで前後ブレーキを操作すると確実かつ思った通りのブレーキングが可能だった。

小さくても走りはしっかりバイクなのだ。

組み立て式のキット販売というユニークな存在である仔猿。このX50TTでも踏襲されるそうで、販売予定価格は99万円(消費税別)。安い買い物ではないけれど、これだけの存在感と楽しさは他のどのようなバイクでも味わえない。スタートダッシュから自然と笑顔になってしまうし、加速を続けているとどこまでも行けそうに思えてくるから不思議。そう考えていたら、楽しい理由がわかった。そうなのだ、初めてバイクで道路に出た時の感覚と同じなのだ。あの時のトキメキを再発見させてくれるのが仔猿なのかもしれない。受注窓口や詳細に関してはCKデザインのオフィシャルWEBサイトで確認していただきたい(http://www.kozaru.us)。

主要諸元

全長/全幅/全高:860mm/430mm/625mm 
シート高:450mm 
軸間距離:599mm 
車両重量:23.5kg 
エンジン形式:空冷4サイクル単気筒SOHC2バルブ 
総排気量:50cc 
最高出力:2.2ps/7,500rmin 
燃料タンク容量:0.75L(無鉛レギュラーガソリン) 
タイヤサイズ(前後):90/70-4 
制動装置形式(前後):ドラム 
懸架方式(前/後):倒立式テレスコピック/スイングアーム

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…