第一印象は穏やか。でも「非力」という意味ではありません!|スズキ・SV650 ABS試乗記

現行SV650は2016年8月に登場。2018年には同Xが追加投入されている。デビュー以後約6年の中でカラーリング変更や細部の熟成が重ねられ、今回試乗したのは2022年1月12日にデビューし同月26日に新発売された、令和2年国内排出ガス規制に適合した最新モデルである。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 スズキ

スズキSV650 ABS…….803,000円

グラススパークルブラック/ブリリアントホワイト

グラススパークルブラック
マットブラックメタリックNo.2

 先代モデルから現行モデルに刷新されてから、およそ6年が経過しようとしているが、基本的なデザインや機能と性能に大きな変更はない。
 それでも不思議なほど古さを感じさせないのはオーソドックスながら、全体的にスッキリと仕上げられたバランスの良いスタイリングが効いている。H4バルブと多面反射鏡を使用した丸型ヘッドランプの採用は、LED式が当たり前となった現在には懐かしさを感じさせてくれる。
 トラス構造のパイプワークを魅せるダイヤモンドタイプのフレームには横置きの90度V型水冷ツインエンジンを搭載。古い表現かもしれないが、和製ドゥカティのような雰囲気を漂よわせている。
 カラーバリエーションは3タイプが用意されているが、フレームもそれぞれに異なる3種が揃えられている。試乗車は白タンクに赤いフレームとホイールをマッチ。黒タンクにはゴールドのフレームと黒いホイールを。そして艶消し黒のタンクにはブルーのフレームとホイールを合わせ、なかなかオシャレである。


 搭載エンジンは前バンクが左側カムチェーン方式。後バンクは180度ツイストさせて右側カムチェーンの後方排気となっている。
 ボア・ストロークは81×62.6mmと言うショートストロークタイプで総排気量は645cc。DOHCの4バルブヘッドには、デュアルスパークテクノロジーが採用され、シリンダーヘッド中央と右側(後バンクは左側)に各気筒毎に2本のスパークプラグを設置。前後シリンダーに挟まれたVバンク内にはφ39mmのスロットルボディを備え、いずれもデュアルバタフライバルブを装備。アイドルスピードコントロールも内蔵され、スムーズな始動性とアイドリングの安定性向上が図られている。
 SCMC(Suzuki Composite Electrochemical Material) メッキシリンダーの採用や、ピストンのスカート部にレジンコートを施す等、フリクションロスの低減を始め、機密性の確保や高い放熱性と対摩耗性が徹底追求されている点も見逃せない。

各気筒それぞれにツインプラグ方式を採用。

穏やかな乗り味が楽しめる、不足ないハイパフォーマンス

 試乗車を目前にすると、ほど良いサイズ感が好印象。以前に沢山売れていた400ccクラスの雰囲気を思い出すが、例えば4気筒エンジンを搭載していたバンディット400と比較すると、SV650 の車体サイズはひとまわり大きく、それなりに立派。
 しかし足つき性チェックでもわかる通り、両足の踵は楽に地面を捉える事ができ、押し引きする取り回しも重過ぎない。200kgに満たない車両重量にも安心感を覚える。
 幅の広過ぎない黒いスチール製アップハンドルに手を添えると至って標準的なライディングポジション。ネイキッドスポーツとして、当たり前の親しみやすさが感じられる。
 右手のスタータースイッチを押すと、スズキイージースタートシステムが採用されているので、スイッチを押し続ける事なく簡単に始動する。操作は基本的にチョンとワンプッシュするだけで良いのである。
 ローギヤにシフトしてクラッチミート(発進)しようとすると、自動的にアイドリングが高まり、エンストのミスを低減。小回りUターン時でも発進しやすく、ライダーとしては安心して扱える。
 ミドルクラスのバイクとしては、ローのギヤ比が低めなのも相まって、スルッと何気なくかつパワフルな加速力を秘めているのが印象深い。
 
 90度Vツインの不等間隔爆発は、270度位相クランクの並列ツインエンジンと同様なリズム感で、後輪の蹴り出しにも逞しさがある。全体的な出力特性としては、穏やかで優しい雰囲気を覚える。ライダーをビックリさせる様なパワフルさは無いが、トルクは十分に太く、なおかつスムーズな伸びの良さもあって、出力特性はとても扱いやすい。
 価格面も含めて真っ向ライバルとなるのはヤマハ・MT-07だろうが、どちらかと言うとコンパクトでスポーティに仕上げられたMTに対してSVはサイズ感も少し大柄で、落ち着きのある大人びた雰囲気。全体的に終始穏やかな乗り味が好印象。
 スロットルレスポンスも落ち着いた雰囲気が伴う。断っておきたいのは決して非力なのではなく、加減速時の挙動に優しさが感じられる事である。
 コーナーの連続する峠道でも素直にグイグイと右手を開けて行ける。回転はレッドゾーンの10,000rpmまで心地よく伸びるが通常の実用域は4,000rpmで十分。飛ばし気味で走っても6,000rpmも回せば事足りる。
 さすがミドルクラスのパフォーマンスは侮れない。
 前述のとおり、スロットルレスポンスには穏やかな感触がある。それゆえコーナーではスロットルを開けて行きやすい。開けて行く事で後輪には十分な駆動力が掛かるので、結果的に曲がりやすいのも魅力的なのである。
 Rの異なるS字コーナーの連続でも素直に気持ちよく駆け抜ける事ができる。ミドルクラスのネイキッドスポーツとしてまさに優等生的な仕上がり。如何にも標準的な総合性能の高さに感心させられたのが印象的であった。
 ちなみにローギヤでエンジンを5,000rpm回した時のスピードはメーター読みで38km/h。6速トップ100km/hクルージング時のエンジン回転数は4,500rpmだった。

足つき性チェック(ライダー身長168cm/体重52kg)

ご覧の通り、両足はベッタリと地面を捉えることができる。バイクを支える上での不安感もない。シート高は785mm、車重は199kgで程よく馴染みやすい大きさである。

著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…