184ccってちょうどいい排気量。ツーリングに最適な軽二輪クロスオーバー、ホンダ・CB200X試乗記

2021年8月にホンダインディアが発表したクロスオーバーモデル・CB200X。これを輸入販売しているバイク館のメディア向け試乗会で短時間ながらテストすることができた。2020年末に発表されたネイキッドモデル・ホーネット2.0の派生車で、エンジンは中国の五羊ホンダが生産しているCB190Xの184.4cc空冷SOHC2バルブ単気筒と同系だ。NC750Xや400Xに通じる都会的なスタイリングのCB200X、これは期待しかない!

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●バイク館イエローハット、三共自動車教習所

ホンダ・CB200X……319,000円(インド仕様)

スタイリングのキャッチコピーは「アーバンエクスプローラー」で、ダウンマフラーも含めてNC750Xや400Xに通じる都会的なデザインだ。車体色はスポーツレッド、マットセレーネシルバーメタリック、パールナイトスターブラックの3種類だ。
フレームはスチール製ダイヤモンドタイプで、リヤサスペンションはリンクレスのモノショック。センタースタンドやアンダーカウルを標準装備する。なお、ホイールトラベル量に関する記載は本国サイトにもなし。

実用的なエンジン特性。艶っぽさはないが、どのシーンでも扱いやすい

筆者は2019年に、今もバイク館が扱っている五羊ホンダのCB190Xに試乗したことがある。トップケースとパニアケースを付属しながら当時の車両価格は何と36万9000円。これを執筆している2023年1月現在、このCB190XはメーターがフルLCDに、ヘッドライトがLEDへ進化しており、さらにフルパニアだけでなくボディガードまで標準装備して47万9000円となっている。約10万円アップしたとはいえ、昨今の円高トレンドを考慮すれば、今なおコスパは最強クラスといっても過言ではない。

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さて、今回試乗したCB200Xは、このCB190Xのモデルチェンジ版というわけではなく、搭載される同系エンジンの排気量は184.4ccで共通だ。CB200Xはホーネット2.0をベースに設計されたインド市場向けのクロスオーバーモデル、2017年に登場したCB190Xは中国市場向けという形で住み分けがされているという。

まずはエンジンから。17.3psを発揮する空冷シングルは、アイドリングのすぐ上、2,000rpm付近でクラッチミートしてもスタタタッと小気味良くスタートし、大柄に見える車体をキビキビと走らせてくれる。そのままスロットルを開けていくと、5,000~8,000rpmの間でわずかなパワーの盛り上がりを感じるが、基本的には9,000rpm付近のレッドゾーンまでフラットに伸びていく。なお、ミッションは5段なので、各ギヤ比が離れ気味というマイナス要素はあるが、それに不満を感じるのは急勾配の峠道ぐらいだろう。

試乗車は、オドメーターが2桁に満たないド新車のため、全域でやや細かい振動が伝わってきたのと、回転上昇にスムーズさが足りないように感じられたが、これは慣らし運転が進めば解消されるだろう。エンストとは無縁と思えるほどの低回転域での粘り強さや、扱いやすいスロットルレスポンスなど、実用性に徹したエンジン特性は五羊ホンダのCB190Xに通じる。なお、CB190Xでは3つのケースを装着した状態で東名高速を東京から御殿場まで移動したが、メーター読みで100km/h巡航が可能だった。ゆえに、このCB200Xにも同等のパフォーマンスを期待していいだろう。


本格的なオフ走行は苦手だが、穏やかなハンドリングはツーリング向き

続いてはハンドリングだ。完璧なクロスオーバースタイルをまとうCB200Xだが、ベースとなっているホーネット2.0の画像と見比べてみると、サスストロークはほとんど変わっていないようだ。今回、試しに教習所にある波状路を何度か通ってみたが、シッティングのままではドタドタと落ち着きがなく、サスセッティングの方向性としてはオンロードに軸足がありそうだと感じた。

さて、そのオンロードでの走りだが、一般的なネイキッドよりも舵角の付き方が穏やかで、バンク角主体で向きを変える様はフロント19インチのようでもある。フロントフォークはCB190Xの正立式に対して倒立式(フレームはどちらもダイヤモンド)なので、それもあって車体全体がしっかりしているように感じられた。

ブレーキは前後ともニッシン製のキャリパーを使用。まだアタリが付いていないというマイナス要素はあったものの、コントロールのしやすさは十分に確認できた。また、フロントのみとはいえABSが採用されているのも安心材料の一つだ。

スクリーンやシュラウドによる適度な防風効果、スタンディングにも対応する高めのハンドル位置、座面が広くて座り心地のいいシートなど、ツーリングに適した要素をほぼ全て盛り込んだCB200X。本格的にダートを走りたいのであればCRF250Lなどをお勧めするが、オンロードがメインでのロングツーリングであれば、CB200Xはいい相棒となってくれるだろう。


ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

シートは前後セパレートで、ライダー側の座面高さは810mm。ニーグリップエリアに適度なボリューム感があり、そこにワイドなハンドルと座面の広さが加わるので、ライディングポジション全体の印象は250ccクラスに迫る。

ディテール解説

184.4cc(61.0×63.096mm)空冷SOHC2バルブ単気筒は、最高出力17.3ps/8,500rpmを発生。同系かつ同排気量のエンジンを搭載する五洋ホンダのCB190Xが16.3ps/8,000rpmなので、こちらの方がわずかにパワフルだ。ミッションは5段でクラッチはワイヤー式。始動はセルのみだ。
ホイールは前後17インチのアルミ製で、デザインはホーネット2.0と共通。ショーワ製の倒立式フロントフォークはゴールドのアウターチューブを採用する。キャリパーは前後ともニッシン製で、フロントのみABSを導入。ディスクハブを省略したペタルタイプのブレーキディスクを採用する。
インド仕様なので民族衣装のサリーがリヤホイールやチェーンに巻き込まれるのを防ぐサリーガードを装備。標準装着タイヤはMRF製で、クロスオーバーモデルらしくセミブロックパターンの銘柄を選択している。
フルデジタルLCDメーターを採用。バーグラフ式のタコメーターや燃料計、ギヤポジションインジケーターなどを表示する。セミアップのハンドルバーはクランプ部が太いテーパードタイプで、右側にはハザードスイッチあり。
灯火類はオールLEDだ。スクリーンはCB190Xよりもコンパクトで、防風効果と視野の広さをうまくバランスさせている。
フロントウインカーはナックルカバーにレイアウトされる。本来、ナックルカバーはオフロード走行時に草木が手に当たるのを防いだり、転倒時にレバーが折れる可能性を軽減するためのパーツなので、ここにウインカーがあるとレンズも割れてしまうことに。オーナーになられた方はご注意を。

ホンダ CB200X(インド仕様) 主要諸元

全長(mm) 2,035
全幅(mm) 843
全高(mm) 1,248
軸距(mm) 1,355
最低地上高(mm) 167
シート高(mm) 810
車両重量(kg) 147
エンジン種類 空冷4ストローク単気筒
総排気量(cm³) 184.4
内径×行程(mm) 61.0×63.096
圧縮比 9.5:1
最高出力(kW[PS]/rpm) 12.7[17.3]/8,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 16.1[1.64]/6,000
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式 セルフ式
燃料タンク容量(L) 12
クラッチ形式 湿式多板
変速機形式 常時噛合式5段リターン
バッテリー 12V、5.0Ah
タイヤ
 前 110/70-17M/C 54S(チューブレス)
 後 140/70-17M/C 66S(チューブレス)
ブレーキ形式
 前 油圧式φ276mmディスク(ABS)
 後 油圧式φ220mmディスク
懸架方式
 前 倒立テレスコピック式
 後 スイングアーム式
フレーム形式 ダイヤモンド
生産国 インド

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…