JOG125なら163cmでも両踵べったり! クラス最小最軽量だから狭い路地裏もひらひらり。|【ヤマハ試乗記】

リーズナブルな車両価格に高い燃費性能だけじゃない。JOG125は、40年続く長いJOGシリーズの歴史から生まれた一つの理想形だった。

REPORT●MCシモ(WADA Teppei )
PHOTO●山田俊輔’(YAMADA Shunsuke)

ヤマハ・JOG125……255,200円(消費税込み)

1983年に最初のモデルが発売されて以降、国産スクーターで最も長く続くシリーズがJOGである。自分の中のイメージでいえば「軽い」「速い」など、運動性能が高いスポーツモデルとしての印象が強い。
過去をもう少し振り返るとJOGシリーズは50ccをメインに80ccや90ccが存在した。今回の125はシリーズの中で初めてラインナップされる排気量であり、正に新しい時代の1ページ目となるモデルなのだ。
JOG125と最初に対面した時の第一印象は「思っていた以上にコンパクト」今までの125クラスはそれなりに車格が大きく、その中で小ぶりに感じるモデルでも乗車しているライダーの体格次第では少し持て余してしまうようなサイズだと思うことが多々あった。実際163cmしかない筆者に置き換えてみても最近の125で足がしっかりつく車両は少ないし、シートの幅が広すぎるとか、体格に見合わないと感じることは多かった。
そんな中でJOG125は90年代の2サイクルJOGを思い出させるようなサイズなのだ。イメージとしては50ccの車格に125ccエンジンが搭載されている。50ccだと交通の流れに乗るのが難しい。125ccサイズだと少し大きい。そんな悩みを解決する、普段使いの理想的なバランスと言えよう。

JOG125に搭載されている『BLUE CORE』は燃費と環境性能、そして走る楽しさを高い次元でバランス。以前アクシスZでも好感触を得たエンジンだ。その際にも感動したSMG(スマートモータージェネレーター)はスターターモーターとジェネレーターを一体化することでスペースの削減、エンジン始動時の作動音や振動の低減に貢献している。
停止状態からアクセルをゆっくり開けると3000rpmで車体が動き出す。ゼロ発進から全開だと5000rpm。様々な走行状況を想定してスタート方法から、曲がる、停まるを色々なやり方でテスト。その中で驚いたのはどんな状況でも変わらない、安定感と安心感だった。
最初に抱いていたイメージは、50ccに近いサイズ感で軽量な車体に125エンジンが搭載されているところから『じゃじゃ馬』だった。ところが実際はそのイメージとは真反対。
125としてのトップスピードはもちろん確保されているものの、アクセルを全開にしてもバンッと飛び出ることはなく、ゆるりと加速。駆動系の変速ショックや谷もなくリニアに速度が上がっていく。アクセルオフの際もいきなり減速してサスペンションの動きにオーバーな影響をきたすこともない。表現をオブラートに包まず言うのであれば、あまりにも大人しすぎて『退屈』なのだ。
しかし考えてみてほしい。先にも触れたとおり、近年の125カテゴリーは車格が大きく運動性能が高い。アグレッシブで速いモデルが沢山ある。個人的には喜ばしいことである一方、例えばバイクを交通手段としてしか捉えていないユーザーにとってはオーバースペックな部分が負担になることもあるのではないだろうか。実際、近所のご婦人方からはよく聞く話なのだ。そう考えるとJOG125は本当の意味で、誰にでもフレンドリーでストレスなく毎日活躍する相棒となり得る存在なのだ。

足つき性チェック

シート高は現行の125スクーターで最も低い735mm。小柄な自分でもベッタリと完全に足がつく。車両重量もクラス唯一の100kgを切る95kg。どんなユーザーでも安心して毎日乗ることができる。
ポジションはかなりコンパクト。個人的にはジャストフィットなサイズではあるが一般男性には少し窮屈に感じてしまうかもしれない。ただゆったりとしたポジションを確保できるモデルは他にたくさん存在するので、JOG125にとってはコンパクトポジションも魅力の一つなのだ。

ディテール解説

リアブレーキ操作でフロントブレーキにもバランスよく効力を発生させる「UBS(ユニファイドブレーキシステム)」を装備。ブレーキング時の車体挙動を穏やかにする。

夜間走行でも安心の大型ヘッドライト。同社のスーパースポーツモデルYZF-R7と同形状のテールランプやカーボンプリントが施されたリアサイドカウルなど、リア周りはスポーティールックス

マフラーや駆動系カバーをはじめ、可能な限りブラックアウトすることで全体がぐっと引き締まった印象を持たせる。
JOGとして長年お馴染みのタイヤサイズは10インチ。コンパクトな旋回を実現。

バックミラーは視認性の良さはもちろん、大きすぎないジャストサイズで圧迫感を低減。ハンドル幅は少し狭いと感じるユーザーもいるかもしれないがコンパクトなポジションにピタリとくる。

アナログメーターと燃料計がメインのシンプルで視認性の良いデザイン。

最低限でシンプルなスイッチ類は直感的な操作を可能にする配置。意識することなく自然なスイッチ操作が出来る。

フロントに配置されるメカニカルなデザインの給油口。メインキーはシャッターキーを採用することで盗難防止に貢献。シートロックもメインキーで一括操作。コンビニフックは必要な時だけ起こして使う折り畳み式。カラビナ形状のためひっかけた荷物が落下しにくいのは嬉しいポイント。

シート下のメットインスペースはコンパクトな車体に対しては広いと感じる21.3ℓ。SHOEI Z8は収納することが出来た。取り回しやスタンドアップ、タンデムなどに便利なスタイリッシュ形状のグラブバーは標準装備。フロントボックスは600mlペットボトルが収納できるサイズ。コンビニフックは折り畳み式。

ヤマハ・JOG125/主要諸元

全幅(mm):675
全高(mm):1,090
軸距(mm):1,205
最低地上高(mm):110
シート高(mm):735
車両重量(kg):95
乗車定員(人):2
燃料消費率(km/L)国土交通省届出値:定地燃費値 (km/h) 57,7(60)〈2名乗車時〉
エンジン型式:E33VE
エンジン種類:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
総排気量(cm³):124
内径×行程(mm):52.4×57.9
圧縮比:10.2
最高出力(kW[PS]/rpm):6.1[8.3]/7,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):9.8[1.00]/5,000
始動方式:セルフ式
燃料供給装置形式:フューエルインジェクション
点火装置形式:TCI(トランジスタ式)
燃料タンク容量(L):4.0
変速機形式:Vベルト式無段変速/オートマチック
タイヤ(前/後)90/90-10 50J(チューブレス)
ブレーキ形式(前/後)機械式リーディングトレーリングドラムブレーキ
懸架方式(前/後)テレスコピック・ユニットスイング
フレーム形式:アンダーボーン

インプレライダー:MCシモ

鈴鹿8耐を始め、国内外のレースを実況。アナウンサーやイベントMCとして活動中。
喋って走れるレーシングアナウンサーの異名を持ち、160cmほどしかない小さな体でオンロード/オフロード、原チャリから大排気量まで分野を問わず何でも乗りまわす。所有台数はレーサーを中心に10台以上。街乗りメインバイクは1290SUPER DUKE Rとガンナー100と電動キックボード。メットインがない頃の旧型スクーターを見るとすぐに欲しくなる持病がある。

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