2023年版 アンダー30万円の原付二種スクーター、買うべき1台はコレだ!|Dio110、JOG125、アドレス125、アクシスZ、アヴェニス125

令和2年排出ガス規制の法規対応に伴い、原付二種スクーターはスズキのアドレス125(フラットシート仕様を含む)やアドレス110、ホンダのベンリィ110などが次々とディスコンに。その一方で、2022年10月にスズキは新型アドレス125とアヴェニス125を、ヤマハはジョグ125を日本市場に投入した。そこで、2023年に販売されるアンダー30万円の原二スクーターの国内正規ラインナップを整理し、それぞれの仕様や装備、走行性能の違いについて紹介したい。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

アンダー30万円の国内正規ラインナップは5機種。全車が空冷シングルだ

これを執筆している2023年1月現在の、日本メーカーにおける原付二種スクーターの正規ラインナップが上の表だ。車両価格を30万円以下に限定すると、現状5機種しかないことになる。全車が空冷4ストSOHC2バルブ単気筒エンジンで、ディオ110のみ125ccフルサイズではないが、最高出力はほぼ横並びであることが興味深い。また、ホイール径にもコンセプトの違いが表れていると言えるだろう。

ヤマハ・ジョグ125……255,200円(2022年11月28日発売)

2020年11月から生産国の台湾で販売されており、昨年11月28日に日本でもリリースされたのがジョグ125だ。前後10インチホイール&軸距1,205mmというコンパクトなシャシーに、アクシスZと共通の空冷ブルーコアエンジンを搭載する。ブレーキは5車で唯一の前後ともドラムで、前後連動のユニファイドブレーキシステムを採用。735mmという抜きん出たシート高の低さが特徴だ。

スズキ・アヴェニス125……284,900円(2022年10月21日発売)

2022年1月から生産国のインドで販売されており、昨年10月21日に日本でもリリースされたのがアヴェニス125だ。アドレス125をベースに、スポーティな外装に合わせてアンダーボーンフレームの一部を変更。空冷SEPエンジンは基本的にアドレス125と共通だが、加速性能にこだわったセッティングとするため、ECUはアヴェニス125専用となっているのだ。

スズキ・アドレス125……273,900円(2022年10月18日発売)

昨年で生産終了となった中国生産のアドレス125と車名こそ同じだが、新型は完全な別物だ。生産国のインドではアクセス125という名前で2019年12月から販売されており、フロントフェンダーとレッグシールドにはスチール鋼鈑を使用。ブレーキはフロントがディスク、リヤはドラムで、前後連動システムの構造はアヴェニスとは異なるが、効果は同等とされる。

ホンダ・ディオ110……242,000円~(2022年7月28日発売)

2021年2月のフルモデルチェンジで、プレス成形材を使った新型フレームや、最新の空冷eSPエンジンを導入。スマートキーやエコインジケーターも採用するなど大きく刷新された。2022年7月には新色のポセイドンブラックメタリックを追加し、マットギャラクシーブラックメタリックはディスコンに。写真のマットスターリーブルーメタリックは3,300円高だ。

ヤマハ・アクシスZ……271,700円(2022年3月18日発売)

2017年4月に「アクシスZ LTS125」というモデル名で発売された低燃費スクーター。2022年3月、空冷ブルーコアエンジンはSMGを新採用し、令和2年排出ガス規制に適合。WMTCモード値は54.6km/ℓから51.9km/ℓへと減ってしまったが、最高出力と最大トルクはともに微増している。さらに、前後連動のユニファイドブレーキシステムが追加されたのもポイントだ。

トランクの広さはアクシスZの圧勝、スズキの2台はUSB電源を標準装備

原付二種スクーターを選ぶうえで外せないのがユーティリティ面だ。各メーカーともシート下のトランクにヘルメットが入ると謳っているが、ディフューザー付きなど形状によっては収まらなかったり、シートが閉じられなかったすることもあるので購入時に確認したい。また、燃料タンク容量にも注目してほしい。例えば、ヤマハのジョグ125とアクシスZとでは1.5ℓもの開きがあり、単純計算すると1回の給油で走れる距離に約80kmもの差が生まれることに。その他、インナーボックス(フロントインナーラック)の形状や数、フタの有無も使い勝手を左右する要素だ。なお、ヘッドライトはスズキの2台がLED、他はハロゲン球を採用しており、夜間走行の多い人にとってはこれも選択基準になるだろう。

アンダー30万円の新型3機種登場で、勢力図が大きく変わる可能性大!

年間販売目標台数9,500台のアドレス125。ちなみにアヴェニス125は3,000台だ。

昨年、原付二種スクーターで最も出荷台数が多かったのはホンダのPCXだ。デビューは2010年で、通勤快速として人気を博したスズキのアドレスV125を駆逐し、トップに君臨し続けている絶対王者だ。これに次ぐのがヤマハのシグナスグリファスとホンダのリード125だが、どちらもPCXとは出荷台数に2.5倍もの開きがある。

このPCXやシグナスグリファス、リード125の3機種は、いずれも30万円以上のプレミアムスクーターだ。かつて一世を風靡したアドレスV125は「安くて速い」ことが支持された理由の一つだが、昨今の動向から察するに、原付二種スクーターを選ぶユーザーの好みや使い方が、ここ数年で大きく変わった可能性は大きい。

そんな中、スズキとヤマハが立て続けにアンダー30万円のニューモデルを投入したのは注目に値する。いずれも生産国で販売されていた機種を国内の正規ラインナップに加えたわけだが、年間販売目標台数を見ると、例えばアドレス125は9,500台とかなり高く設定されており、達成されればPCXに次いで2位の出荷台数となることは間違いない。


30万円以下でもポテンシャル高し。使い方を見極めてじっくり選ぼう

筆者が最も気に入っているのはホンダ・ディオ110だ。

さて、今回取り上げるアンダー30万円の原付二種スクーター5機種に、筆者は全て試乗している。走行フィーリングにおいて最も好みなのは、ホンダのディオ110だ。他の4機種よりも排気量は15cc小さいが、車重が96kgと軽いので動力性能の差を感じさせない。また、水冷エンジンのように静かで微振動が少なく、ジェントルなレスポンスと加速フィールも気に入っている。そして、前後14インチホイールと新型フレームによる安定性も優秀で、これでスマートキーを採用しながら一番安いのは驚きしかない。

このディオ110と対照的なのは、ヤマハのジョグ125だ。車重はディオ110よりもさらに1kg軽く、前後10インチホイールのコンパクトな車体に124ccのエンジンを搭載する。かつてのアドレスV125ほどではないが、混雑した市街地でのすばしっこさは5車の中でトップと断言できよう。また、ブレーキはこれのみフロントにもドラムを採用するが、制動力自体に不足はなく、コントロール性も及第点以上だ。そして、同じヤマハのアクシスZは、ジョグ125と同様に前後10インチホイールの車体に、共通の空冷ブルーコアエンジンを搭載するが、こちらはシャシーの安定成分が高く、原付二種スクーターとしてベーシックなハンドリングとなっている。

ユニークなのはスズキの2台だ。アドレス125とアヴェニス125、そして間もなく日本でも発売予定のバーグマンストリート125EXの3機種は、プラットフォームを共通としている。にもかかわらず、走行フィーリングがうまく差別化されているのだ。具体的には、アドレス125はエンジンレスポンスもハンドリングも穏やかで、アクシスZの乗り味をさらに大らかにしたような印象だ。これに対してアヴェニス125は、専用ECUの効果だろうかスロットル開け始めのツキがよく、ハンドリングもフロントからしっかり旋回するイメージがある。つまり、それぞれルックスに合致した走行性能が与えられているのだ。


国内正規にこだわなければ日本メーカーの輸入車という選択肢も

ヤマハ・シグナス レイZRハイブリッド。21万9000円、125cc、8.2ps/6,500rpm、98kg、シート高785mm、ホイール径フロント12/リヤ10インチ、燃料タンク容量5.2ℓ。

ジョグ125もアドレス125も安価ながら走りがいいのは分かった。でも、物価高により賃金が目減りしている昨今、もっと安い原付二種スクーターが欲しいという声もあるだろう。そこで、そんな人に選択肢の一つとして紹介したいのが、日本メーカーの輸入車だ。

全国に62店舗を展開するイエローハットグループのバイク館では、さまざまな日本メーカーの小排気量車を輸入販売しており、写真はその一例だ。インド製のヤマハ・シグナス レイZRハイブリッドという原付二種スクーターで、バイク館での車両価格は何とディオ110より安い21万9000円! エンジンはジョグ125やアクシスZと同系の125cc空冷ブルーコアで、SMGによるハイブリッドアシスト機構とアイドリングストップが付く。ヘッドライトとテールランプはLEDで、デジタルメーターはスマホとの連携機能があり、さらに車重はアクシスZよりも軽い98kgと聞けば、食指が動く人も多いことだろう。

気になるアフターケアについては、バイク館では国内新車と同様の2年保証(距離無制限)を付帯するほか、1年または2年のオリジナル延長保証も用意している。人とは違うスクーターに乗りたいという層にも魅力的な存在であり、選択肢の一つとして検討してみてはいかがだろうか。


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