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ヤマハ・トリシティ155 ABS……566,500円(2023年4月14日発売)
125の前後フェンダーには原付二種であることを示すマークがあり、さらにナンバープレートはピンク地となる。155はハンドル左側にリヤブレーキロック用のレバーがあり、さらにリヤホイール左側にブレーキロック用のアームが見える。車体寸法は共通で、車重は155の方が4kg重い。
155はABSのほか、便利なDCジャックやトランク内LED照明を採用
トリシティ155が日本で発売されたのは、125から遅れること2年と4か月後の2017年1月のことだ。当初から可変バルタイ機構VVA搭載の水冷ブルーコアエンジンや、125とは異なる新開発のフレーム、LEDヘッドライト、そしてリヤ13インチホイールなどを採用しており、これらが2018年モデルの125に引き継がれている。2019年には座面が15mm低くなるシートを新採用。そして2023年4月に発売された最新仕様では、125と同様にスマートモータージェネレーター(SMG)やアイドリングストップシステムを導入した新型ブルーコアエンジンをはじめ、トリシティ125/155では初となるLMWアッカーマン・ジオメトリの導入、ホイールベースの延長などを実施している。なお、車両価格は8万2500円アップしてついに50万円をオーバーし、56万6500円となった。
ちなみに125の方は7万1500円アップしており、値上げ率だけを見れば155と同じ約17%だ。しかし、125は2023年モデルでDCジャックやシート下トランクのLED照明が省略されており、値上げ率を約17%に抑えるための努力が見え隠れする。加えて、125はABSのタイプ設定がなくなっており、スモールトリシティの主力は155という印象すら受けるだろう。
容量約23.5ℓのシート下トランクの形状は両車共通だが、125は2023年モデルでLED照明が省略されてしまったため、相対的に155の便利さが際立つことに。付け加えると、155は自動車専用道路を走れるため、純正アクセサリーでETC車載器が用意されている。
フロントトランク内に設けられている12V DCジャック。これも125は2023年モデルで省略されてしまった。なお、両車とも純正アクセサリーでこの位置に装着できるUSBソケット(¥4,400)が用意されている。
ハンドル左側にリヤブレーキロックの操作レバーを設ける155。合わせてスイッチボックスも異なり、特にプッシュキャンセル式ウインカースイッチの操作性は155の方いい。
排気量、最高出力とも25%増だが、街乗りレベルなら両車で大差なし
今回の試乗は125と同日に行った。155との違いは主にエンジンに集約され、排気量は31ccアップ、最高出力は12psに対して15psと、それぞれ25%増となっている。だが、実際に走らせてみると、確かに発進加速や追い越し加速で力強いと感じるのは155の方だが、125もそのペースに大きく遅れることはなく、スペック的に25%も劣っているとは思えないほどだ。おそらく125は、出力特性や変速比の設定などで、街乗りで多用する領域での加速力を重視していると思われ、これが155との体感的な力量差が大きくない要因の一つだろう。
155のエンジンフィールは、125と同様にスタートからジェントルで、Uターンのような小回りでもライダーを慌てさせることがない。新設されたアイドリングストップは、停止と始動のタイミングに不満はなく、またSMGによって始動時のギヤ鳴りがないなど、エンジンの上質感向上に大きく貢献している。
リヤブレーキロック機構を持つため、155のリヤホイールはディスクブレーキとドラムブレーキの両方を備える。ブルーコアエンジンは、ボア径が125の52.0mmに対して155は58.0mmとされ、さらに155は新作シリンダーヘッドの採用により、圧縮比を10.5:1から11.6:1へと高めている。
新採用のLMWアッカーマン・ジオメトリによるハンドリングは、操舵性のイメージこそ先代から大きく変わっておらず、前後2輪の一般的なモーターサイクルから乗り換えても何ら違和感がない。ハンドルの押し引きや体重移動によって車体が傾き、視線を送った方へスムーズに旋回する。その一連の流れは完全に2輪車のそれだが、決定的な違いはフロントの接地感の高さだ。まるでアスファルトを“面”で捉えているかのようで、微速域から高速コーナーまで常に高いグリップ感を伝えてくる。そして、横風を受けたときや荒れた路面での安定性は感動するレベルで、これなら高速道路も安心して走れるはずだ。
ブレーキは125、155とも前後連動式で、3輪による絶対制動力の高さはチート級といっても過言ではない。加えて155はABSが導入されており、ウェットなど滑りやすい路面での安心感は最強だ。
155はリヤブレーキロック(パーキングブレーキ)が採用されているのも美点で、信号待ちが長いときなどに重宝した。レバーが操作しやすいことも、積極的に使いたくなる要因だ。
スマホとの連携機能「ヤマハ・モーターサイクル・コネクト(Yコネクト)」については、エンジンオイルやバッテリーの状態を確認したり、燃費や最終駐輪位置の記録、走行ログを残すなどのほか、エンジン回転数や吸気温、水温、瞬間燃費をスマホの画面にバーグラフで表示できるなど、さまざまな機能が盛り込まれている。また、メーター上に電話やメールの着信も表示できるので、使いこなせればかなり便利だろう。
小型二輪免許しかないとか、任意保険のファミリーバイク特約を使いたいなどの理由がある人は125を選ぶしかないが、装備の差を考慮するとトリシティに関しては155を選択してもいいのでは、というのが正直な感想だ。なお、トランク内のLED照明は、シートをきちんと閉じていないと中で点いてしまうようで、バッテリー上がりの原因に。取扱説明書にも注意するよう記載されているので、オーナーになられた方は気を付けてほしい。
ライディングポジション&足着き性(175cm/67kg)
トリシティ125/155 ABS(2023年モデル)主要諸元 【 】内は155
認定型式/原動機打刻型式 8BJ-SEK1J/E34AE【8BK-SG81J/G3T3E】 全長/全幅/全高 1,995mm/750mm/1,215mm シート高 770mm 軸間距離 1,410mm 最低地上高 165mm 車両重量 168kg【172kg】 燃料消費率 国土交通省届出値 定地燃費値 45.5km/L【43.6km/L】(60km/h)2名乗車時 WMTCモード値 44.9km/L(クラス1)【42.1km/L(クラス2、サブクラス2-1)】1名乗車時 原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ 気筒数配列 単気筒 総排気量 124cm3【155cm3】 内径×行程 52.0mm【58.0mm】×58.7mm 圧縮比 11.2:1【11.6:1】 最高出力 9.0kW(12ps)【11kW(15ps)】/8,000rpm 最大トルク 11N・m(1.1kgf・m)/6,000rpm【14N・m(1.4kgf・m/6,500rpm)】 始動方式 セルフ式 潤滑方式 ウェットサンプ エンジンオイル容量 1.00L 燃料タンク容量 7.2L(無鉛レギュラーガソリン指定) 吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション 点火方式 TCI(トランジスタ式) バッテリー容量/型式 12V、6.0Ah(10HR)/YTZ7V 1次減速比/2次減速比 1.000/10.208 クラッチ形式 乾式、遠心、シュー 変速装置/変速方式 Vベルト式無段変速/オートマチック 変速比 2.386~0.748【2.341~0.736】:無段変速 フレーム形式 アンダーボーン キャスター/トレール 20°00′/68mm タイヤサイズ(前/後) 90/80-14M/C 43P(チューブレス)/130/70-13M/C 57P(チューブレス) 制動装置形式(前/後) 油圧式ディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ 懸架方式(前/後) テレスコピック/ユニットスイング ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED 乗車定員 2名 製造国 タイ王国