参加台数はなんと37台のホンダCBR250RR、なぜレースで人気?|CBR250R <2023年のもて耐に参戦したマシンを解説①>

今回から4回に渡って展開する当記事では、2023年のもて耐に参戦したマシンを紹介する。第1回目で取り上げるのは、クラストップの動力性能を誇るCBR250RRと、良好な燃費で根強い人気を維持しているCBR250Rだ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

独自のクラスとルールを設定

“世界最大の草レースを目指す”というテーマを掲げ、1998年から始まったもてぎ7時間耐久レース、通称“もて耐”が、今年も7月29/30日に開催された。ちなみに最初の10年間のもて耐は、125cc以上なら何でもアリという豪快なレギュレーションだったものの、2008年からは当初の路線を継承するマスターズと、250ccの4ストツイン&シイングルがメインとなるオープンの2種が設定され、2011年以降はオープンと混走するクラスとして、改造範囲を厳しく制限したNST:ネオスタンダートを新設。なおエントラントが減少したマスターズは2011年が最後となり、以後は250ccが主役のレースとしての開催が続いている。

そんなもて耐の興味深いところは、誰もが……とまでは言わないけれど、多くのエントラントに上位進出のチャンスがあることだろう。何と言ってもこのレースは、Brave、オープン2気筒水冷、空冷、オープン単気筒水冷、空冷、NST-Ninja、NST-CBR(250R)、NST-(YZF-)R25、NST-G310R、NST-ZX(-25R)、NST-VTRと、計11種類ものクラスを設定し、それぞれで順位づけが行われるのだから。もっとも、総合順位・総合優勝は存在するし、台数が規定に満たないクラスは他に統合されるのだが、こういった豊富なクラス設定は、エントラントのヤル気や車両のバラエティ感の維持に大いに貢献しているに違いない。

また、国際ライセンスを所有するライダーの走行回数を3回・各60分以内に限定していること、過去の戦績や戦闘力に応じてピットストップ時間が異なること(Brave/オープン水冷2気筒/NST-Ninjaは4分、NST-CBR/NST-R25/オープン水冷単気筒は3分で、他のクラスは2分)、給油時に主催者が準備した容量5ℓの携行缶を使用することなども、もて耐ならではの特徴。いずれにしてもこのレースは、エントラント全員が楽しめることを念頭に置いて、独創的なクラスとレギュレーションを採用しているのである。

さて、前置きが長くなったものの、今回から4回に渡って展開する当記事では、2023年のもて耐に参戦した車両とエントラントを紹介したい。第1回目はホンダCBR編だ。

37台がエントリーしたCBR250RR

クラストップの動力性能を考えれば当然のことだが、近年のもて耐の最大勢力はホンダCBR250RRで、2023年は、初日の3耐に13台、メインイベントの7耐には24台がエントリー(全出走台数は、3耐:34台、7耐:65台)。中でも圧倒的な速さを発揮したのは♯1ベスラレーシングで、2019年と2022年に続き、3度目の総合優勝を達成した。

なお今大会でのCBR250RRは、7耐の予選で1~12位を独占したものの、決勝で12位以内に入ったのは5台のみ。やっぱり耐久は、燃費やピットストップの時間がモノを言うレースで、1周のタイムが速いだけでは上位進出は難しいのだ。

BLUE EYES&LEGEND

BLUE EYESはホンダ社内のレース好きが作ったチームで、もて耐には1998年の第1回大会から出場している。これまでに元ホンダワークスの宇川徹さんや片山敬済さん、元カワサキワークスの清原明彦さんを起用してきたこのチームには、2020年から元カワサキワークスの塚本昭一さんが参加。レジェンドの走りが間近で見られることは、彼らの現役時代を知るエントラントには感動モノに違いない。

過去のもて耐では、VTR1000FやRC30、CBR250Rなどを走らせてきたBLUE EYESは、2017年からCBR250RRを使用。フロントフォークのインナーカートリッジはテクニクス、リアショックはナイトロンで、フロントブレーキのマスターシリンダーとキャリパーはブレンボ、バックステップとマフラーはヨシムラを選択している。なおガソリンタンクは独自の加工で、容量を14→約17ℓに拡大。

CBR250RRに限った話ではないけれど、もて耐では発熱対策が重要な課題になる。この件に関して、BLUE EYESの大森和夫さんに聞いた話を紹介しよう。「もて耐の走行条件はかなり厳しいので、発熱対策はビッグラジエターくらいでは追いつきません。ウチの車両は過去にオーバーヒートでエンジンを壊したことがありますからね。それで今回は新しい発熱対策として、走行風を積極的に取り入れてオイルパンとオイルフィルターを冷却するダクトを新設しました。この装備を追加したことで、走行中の水温は約20度下がりましたから、かなりの効果があったと思いますよ」

トップブリッジの上にはラップタイマーのSOLO 2を設置。フロントフォークはテクニクスのインナーカートリッジでフルアジャスタブル化。
ブレーキマスターはブレンボラジアル。BLUE EYESのロゴが刻まれたフロントブレーキレバーガードは、チームメンバーが3Dプリンターで製作。
エンジン下部にはオイルパンとオイルフィルターを冷却するダクトを新設。なおエンジン添加剤のベルハンマーは、燃費向上に貢献すると言う。
ターコイズブルーのスプリングが目を引くリアショックは、フルアジャスタブル式のナイトロン。バックステップはヨシムラX-TREDを選択。

CBR250Rのピットストップは6回が定番

水冷並列2気筒を搭載するCBR250RRが、クラストップの動力性能を実現しているのに対して(最新型の最高出力は42ps)、その前任に当たる水冷単気筒のCBR250Rはフレンドリーさを重視したモデルで、最高出力は27/29ps。となると、レースでは不利な気がするのだが……。

もて耐では現在でも根強い人気を維持していて、今回は3耐と7耐を合わせると11台が参戦。その理由は良好な燃費によるピットストップ回数の少なさで、他の車両の7~10回前後に対して、CBR250Rは6回が定番になっているようだ。

中村エンジン研究所

2019年:16位、2020年:8位、2021年:12位、2022年:8位、2023年:8位と、中村エンジン研究所のCBR250Rは近年のもて耐でコンスタントに上位進出・クラス優勝を果たしている。その理由をチームの代表を務める加藤秀峰さんに聞いてみると、以下の答えが返ってきた。「ウチのラップタイムが1分20秒台前半~中盤ですから、トップチームと比べると10秒くらい遅いんですが、やっぱり単気筒のCBRは燃費がいいし、ピットストップ時間がRRより1分短いですからね。もちろん総合優勝は無理ですが、改造費や維持費があまりかからないCBR250Rは、オッサンが趣味で耐久を楽しむには、ちょうどいい素材だと思いますよ」

中村エンジン研究所のCBR250Rは、HRCが2014~2021年に販売したレースベース車で、前後ショックやライディングポジションパーツは変更しているものの、基本的にはノーマル状態を維持している。パワーユニットに関しては、年1回のペースでオーバーホールを行っているそうだ。

クイックリリース式のハンドルはサンセイレーシング。トップブリッジ上には、デイトナの水温計とラップタイマーのez Lap miniを設置。
リアショックはナイトロンで、フロントフォークのインナーカートリッジはテクニクスを選択。バックステップもアフターマーケット製に変更。

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…