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BMW・S 1000 RR……2,454,000円〜(消費税込み)
レーシングポテンシャルを高めた結果、ストリート性能の向上も実現
ツアラー性能においては一歩抜きんでた存在、それがBMWモトラッドのバイクに対しての認識でした。ボクサーエンジンを搭載するRシリーズで何度となくロングツーリングをしてきましたが、疲労度が少ない快適な走行が楽しめたのを記憶しています。ところが2009年、なんと新開発の並列4気筒エンジンを搭載したS1000RRを登場させたことに少なからず衝撃を受けました。レースシーン、ストリート市場のどちらにおいても、いわゆるスーパースポーツバイクは日本車とイタリア車が圧倒していました。そこへ新型モデルであるS1000RRで殴り込みをかけてきたのですからBMWモトラッドの意気込みは相当なものだったはずです。 スーパーバイク世界選手権へ参戦するためのホモロゲーションバイクとして開発されたS1000RRは、性能的にも既存の日本車やイタリア車を上回るほどで、2010年には市販モデルが国内でも販売を開始しました。当初からABS、トラクションコントロール、オートシフター、ライディングモードといった先進の電子制御システムが導入されていて、サーキットだけじゃなくストリートでの走行性にも配慮していました。それから13年、S1000RRはBMWモトラッドを代表するスーパースポーツとしてつねに最新の技術を投入し、進化してきました。そのスタンスは最新型でも変わりありません。
外観上で新しさを感じるのは、速度に応じてダウンフォースを発生させ、フロントタイヤがしっかりと路面を捉える働きに寄与するウイングレットがフロントカウルに追加装備されたことです。ウイングレットは高速域でとくに効果を発揮しますが、とあるレーシングライダーに聞いたところ、低速コーナーの旋回性向上も実現しているとのことでした。つまりこれは、ワインディング走行においても効果的だということです。さらに、ブレーキ・スライド・アシストとスライド・コントロールを備えた新しい舵角センサーを装備や、電装系の改善によるレースポテンシャルのアップ、210psへ最高出力をアップ、そしてフレーム剛性の見直しなどなど、ほぼすべての部分を刷新しているといっても過言ではありません。日本国内での販売価格は2,454,000円から。ホンダCBR1000RR-RやヤマハYZF-R1、カワサキNinja ZX-10Rなどの日本製ライバルモデルとほぼ同価格です。
さすがにスーパースポーツ、シート高が832㎜もあるので足つき性は良くありません。ステップ位置も後方にあるのでヒザの曲がりも強いです。この辺りは完全にレーシングユースを想定した設定です。しかしハンドルポジションは低すぎず、結果的に上体の前傾度は想像していたよりきつくありません。このポジションで長距離走行はさすがにつらい気はしますが、都市部の道路を走っていて窮屈に感じることはありませんでした。
足つき性(ライダー身長178cm)
今回試乗したのはアクラポビッチ製スポーツサイレンサーが装着されたモデル。なのでエキゾーストノートは迫力がありました。ライディングモードはダイナミックの状態で走りだしました。市街地中心ということでスピードもせいぜい60km/h程度しか出さなかったので低回転での走りでしたが、エンジンは不満を漏らすことなく力強くレスポンスしてくれました。また意地悪く高めのギヤを使ったりしてみたのですが、60km/h以下のスピードで4速まで問題なく使うことができました。300km/hを実現してくれるエンジンなので、本来ならばアクセル全開にできるサーキットを走ってあげるほうが楽しめるのは事実です。しかし、日常域でも扱いやすくでき上っているところに高性能ぶりを垣間見ることができます。 細かな点を探ってみると、クラッチレバーの操作性が良く、タッチも軽いので、ストップ&ゴーを繰り返す市街地でも手が疲労することはありませんでした。まあシフト・アシスタント・プロが標準装備なので、発進、停止時以外はクラッチレバー操作の必要はなく、ギヤチェンジができるんですけどね。ちなみに、シフトペダルのタッチや入りも良かったです。いずれにしても電脳化が進んだエンジンは、市街地をメインとした一般道での走りにもしっかりと応えてくれる懐の深さを見せてくれました。
途中でダイナミックからロードへとモードを切り替えたのですが、エンジンのパワフルさは相変わらずで、腰の高いレーシーなポジションということもあり、ついついアグレッシブな走り方になってしまいそうになります。S1000RRを市街地や一般道で走らせるときには、自制心がもっとも重要なのかもしれません。そんなことを考えながら交差点を曲がっていたのですが、極低速で直角に曲がる場面でも、変に倒れ込むようなこともなく自然に向きを変えられました。旋回性を高めるためにキャスターの立ったディメンションの場合、フロントタイヤが切れ込むようにバンクする傾向があって怖い思いをするのですが、このバイクにはそれがありません。自然な舵角がついて素直に向きを変えてくれます。吸収性の良い前後サスペンションがタイヤをしっかりと路面に押し付けてくれ、安定したコーナリングができるようになっているのだと思いました。 ブレーキ性能もかなり高いのですが、コントロール性が良いので恐怖を感じることなく必要な制動ができます。なのでコーナーへのアプローチで、ブレーキングによってフロント荷重を増やし、スーッと車体をバンクさせコーナリングする。そんな一連の操作が非常にスムーズに素早くできるのです。 最新の電子デバイスが安全安心の走りを支えてくれる一方、よりスポーティでスピーディな走りも実現してくれます。さらにレーシーなモデルとしてM1000RRがリリースされていますが、S1000RRのレースポテンシャルはまた一歩高められたのではないかと感じました。
ディテール解説
主要諸元
●エンジン タイプ油冷/水冷4 気筒4 ストローク並列エンジン、1 気筒あたり4 バルブ ボア x ストローク80 mm x 49.7 mm 排気量999 cc 最高出力154 kW (210 PS) / 13,750 rpm 最大トルク113 Nm / 11,000 rpm 圧縮比13.3:1 点火 / 噴射制御電子制御インジェクション、可変インテークマニホールド長 エミッション制御制御式3元触媒コンバーター 排ガス基準EURO 5 ●性能・燃費 最高速度200 km/h 以上 (300 km/h) 燃料消費率 / WMTCモード値 (クラス3)、 1名乗車時15.62km/L WMTCに準拠したCO2排出量149 g/km 燃料種類無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)(最大5%エタノール、E5) 98 ROZ/RON・93 AKI ●電装関係 オルタネータ450 W バッテリー12 V / 5 Ah、リチウムイオン、メンテナンスフリー ●パワートランスミッション クラッチ湿式多板クラッチ(アンチホッピング)、自己強化式 ミッション常時噛み合い式6 速トランスミッションをエンジンブロックに内蔵 チェーンドライブチェーン式 トラクションコントロールBMW Motorrad DTC, スライドコントロール ●車体・サスペンション フレームアルミニウムラミネートブリッジフレーム、エンジン一体 フロントサスペンション倒立式テレスコピックフォーク(45 mm 径)、スプリングプリロード、リバウンドおよびコンプレッションステージを調整可能。(Dynamic Damping Control(DDC) OE 装備:倒立式テレスコピックフォーク(45 mm 径)、DDC 電子制御、調整式スプリングプリロード、ショックアブソーバーを電子制御式で個別化可能) リアサスペンションアルミニウム製ダブルスイングアーム、コイルスプリング付きセンタースプリングストラット、調整式リバウンド/コンプレッションダンピングおよびスプリングプリロード。(Dynamic Damping Control(DDC) OE 装備:コイルスプリング付きセンタースプリングストラット、調整式リバウンド/コンプレッションダンピングおよび油圧調整式スプリングプリロード付き) サスペンションストローク(フロント/リア)120 mm / 118 mm 軸距(空車時)1,455 mm キャスター距離(トレール)101.4 mm ステアリングヘッド角度66.2° ホイールアルミニウムキャストホイール (M鍛造ホイール OE 装備:アルミニウム鍛造ホイール) (Mカーボンホイール OE 装備:カーボンホイール) リム(フロント)3.50" x 17" リム(リア)6.00" x 17" タイヤ(フロント)120/70 ZR 17 タイヤ(リア)190/55 ZR 17(M鍛造ホイール、Mカーボンホイール OE 装着:200/55 ZR 17) ブレーキ(フロント)ダブルディスクブレーキ、直径320 mm、4 ピストンブレーキキャリパー ブレーキ(リア)ディスクブレーキ、直径220 mm、1 ピストンフローティングキャリパー ABSBMW Motorrad Race ABS (パーシャリーインテグラル)、ブレーキスライドアシストABS Pro(コーナリングABS)、ライディングモードPro装着車はABS Pro Race のコーナリングABSも装備 ●寸法・重量 シート高、空車時832 mm インナーレッグ曲線、空車時1,845 mm 燃料タンク容量16.5 L リザーブ容量約4 L 全長2,075 mm 全高1,205 mm 全幅740 mm(ブレーキレバーガード装備:765 mm) 乾燥重量175 kg (Mパッケージ:173.3 kg)、バッテリーを除く 車両重量(ドイツ工業規格DIN)197 kg(Mパッケージ:193.5 kg) 1) 車両重量(日本国内国土交通省届出値)202 kg 2) 許容総重量407 kg 最大積載荷重(標準装備の場合)210 kg 1) 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90%、オプション非装備 2) 燃料100%時