ナニコレ?デュアルヘッドライトのスクランブラー。排気量は124cc!|CFMOTOパピオXO-2試乗記

エンジンやフレームを筆頭とする主要部品の多くは、カフェレーサーのパピオXO-1と共通。とはいえ、外装やライポジ関連パーツなどを専用設計したパピオXO-2は、兄弟車とは似て非なる資質を獲得しているのだ。

取材協力:KURE35茂原ベース Tel.090-4450-2821 https://www.kure35.com/

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

CFMOTO パピオXO-2……34万9800円

試乗車は中国仕様の126ccだが、日本仕様のエンジンは原付二種登録を可能にするため、排気量を124ccに縮小。

レジャーバイク路線の可能性

CFMOTOのパピオXO-2と対面して、僕の頭にふと浮かんだのは“レジャーバイク”という言葉だった。その一番の理由は愛嬌抜群のルックスだが、一般的なオンロードバイクと比べるとタイヤが小さいことも、そう感じた一因だ。もっとも1970~1980年代に大ブームとなったレジャーバイクが、実用性をあまり考慮していなかったのとは異なり、それらの後継車と言うべき近年の125cc・前後12インチ車は、コレ1台ですべてOK?と言いたくなるほどの性能を備えている。もちろん、XO-2の実用性も十二分だった。

ただし、現代の125ccマニュアルミッション車の主役は前後17インチ車で、CFMOTO以外で前後12インチ車に大きな力を注いでいるのは、グロム、モンキー、ダックスを擁するホンダくらいである。と言っても、かつてのレジャーバイク路線に通じるコンパクトな車体と小径タイヤに可能性を感じたからこそ、CFMOTOは4種類のパピオシリーズ、ストリートファイターのST、カフェレーサーのXO-1、スクランブラーのXO-2、EV仕様のNOVAを開発したのだろう。

ホンダ・モンキーへの対抗意識

当記事で紹介するXO-2はXO-1の兄弟車で、スチール製バックボーンフレームや空冷単気筒エンジン、センターアップマフラー、前後12インチのアルミキャストホイール、倒立式フォークなどを筆頭とする、主要部品の多くを共有している。逆に言うなら2台の違いは決して多くないのだが、外装やライポジ関連パーツなどを専用設計することで、XO-1とXO-2は明確な差別化を実現しているのだ。

なおパピオとは英語でヒヒ類のことで、その車名にはホンダ・モンキーへの対抗意識が伺えるし、XO-2のルックスは1990年代にホンダが販売したモンキーバハに似ている……ような気がしないでもない。まあでも、独創的なデュアルヘッドライトは兄弟車のXO-1に通じるパーツだし、パピオシリーズの第1弾としてストリートファイターのSTを手がけた後に、カフェレーサーとスクランブラーを同時開発したのは、至って自然な流れではないかと思う。

市街地や田舎道が楽しい

やっぱりバイクの印象って、ライディングポジションでガラリと変わるのだなあ……。少し前に当サイトで紹介したXO-1を念頭に置きつつ、XO-2でさまざまな状況を走った僕は、しみじみそう思った。具体的な話をするなら、セパレートハンドル+バックステップのXO-1がワインディングロードで真価を発揮するのに対して、アップハンドルとフロント寄りのステップを採用するXO-2は市街地や田舎道が楽しい。と言ってもXO-1とXO-2は、どちらも万能車としての資質を備えているのだけれど、通勤や通学に使用する、あるいは、ロングランに出かけるとなったら、ライポジが安楽で視界が広いXO-2のほうが優位だろう。

もちろん、旅先で遭遇する未舗装路に気軽に入って行けることもXO-2の魅力である。ただしXO-2の足まわりは基本的にXO-1と共通で、悪路を意識した装備はブロックパターンタイヤだけだから、限界は決して高くないのだが、小柄でフレキシブルなこのバイクに乗っていると、どこにでも行けるんじゃないか、という気分になってくるのだ。

そしてそういった印象には、各部の作りの良さも貢献している。これは兄弟車として開発されたXO-1にも通じる話で、エンジンが従順で扱いやすく、車体の包容力が十二分で、ブレーキ/クラッチのタッチや前後サスの動きが自然なこのバイクに乗っていると、CFMOTOの技術力がすでに日本のメーカーと同等に達していることが認識できるのだ。その事実をどう捉えるかは人それぞれだが、125cc・前後12インチ車の世界に新しい選択肢が加わったことは、多くのライダーにとって歓迎するべきことだと思う。

KURE35茂原ベースの紅林さんに聞く、中国製バイクの最新事情

KURE35茂原ベースの紅林健一さんは、1965年生まれの58歳。KAYOとYCF、CFMOTOの輸入を手がけつつ、自らでライダーとして、茂原ツインサーキットを中心としたミニバイクレースに積極的に参戦している。

ミニバイクレースとサーキット走行を主軸とするショップ、KURE35茂原ベースが中国製バイクの輸入を開始したのは2019年から。同店の代表を務める紅林さんは、そもそもどんな理由で中国製バイクに目を向けたのだろうか。

「きっかけは1990年代にアメリカやヨーロッパでのレース活動を手伝った友人、ロドニー・フィーから誘いを受けたことです。彼が開発に関与した中国製ミニバイクレーサー、KAYOのMR150の出来がよくて面白いから、日本で売ってみないかと。それでモノは試しという感覚で仕入れてみたら、本当に素晴らしいバイクだったので、以後は地道な布教活動を行い、現在までに160台を販売しました」

「CFMOTOもその延長線みたいなもので、やっぱりロドニー・フィーからの提案です。最初に輸入したのは250ccで、このモデルで信頼性が確認できたので、Landscape racingさんと共同という形で導入を始めたんです。なお現在のウチではその2つのメーカーに加えて、オフロード系をメインにしているYCFの輸入販売も行っています」

実際に輸入販売をしてみて、何か問題はなかったのだろうか。一昔前の中国製バイクは、耐久性に難がある、補修部品が入手しづらい、などと言われていたようだが……。

「問題はまったくないですね(笑)。耐久性はどのメーカーも予想以上に高くて、例えば僕が4年前からレースに使っているKAYOのMR150は、どんなに派手な転倒をしてもフレームやフォークにほとんどダメージが出ないですし、かなり過酷な使い方をしたエンジンはまだオーバーホールの必然性を感じていません。補修部品に関しては、まず本国の供給体制がきちんとしていますし、需要が多いモノはウチでストックしていますから、心配する必要はないと思いますよ」

MR150はスチール製ツインスパーフレームに空冷単気筒を搭載するレーサー。最高出力は8.1kw(11ps)で、乾燥重量は85kg。

CFMOTOの本国サイトには約30機種のモデルが並んでいる。今後は他機種の導入も考えているのだろうか。

「自分のキャパシティを考えると全機種は無理ですが、日本で需要がありそうなモデルは導入を検討するつもりです。ただしそれ以前の話として、現在のウチの店舗では取り扱い車種のすべてを見ていただくことは不可能なので、今後はショールームを作る予定です。なおパピオに関しては、すでにレンタルバイクを準備していますし、サーキット指向のライダー用としてレース用キットパーツも開発するつもりなので、興味のある方は気軽に問い合わせをして欲しいですね」

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

740mmというシート高は兄弟車のXO-1と同じでも、上半身が直立しているうえにシート形状が異なるからだろうか、足つき性はXO-2のほうが良好(身長が170cm前後なら余裕でカカトがベッタリ)。なおステップが前方に設置されているので、XO-2はヒザと足首の曲がりが穏やか。

ディティール解説

LEDデュアルヘッドライトは、車名のOとXを組み合わせた独創的な造形。ライトケース上部には小さなバイザーが備わる。
低めのセパハンを装備するXO-1とは異なり、XO-2はバー式のアップハンドルを採用。バックミラーの視認性は非常に良好だった。
コンパクトなメーターは、タコメーターの数字に添う形で各種警告灯を配置している。右下の液晶画面は輝度調整が可能だ。
樹脂製のタンクカバー+サイドカバーはXO-1と共通のようだが、前部左右に備わる小さなパネルとシートカウルは専用設計。
シートの座り心地は決して悪くないものの、個人的にはもう少し着座位置の自由度が欲しいと思った。後方にはグラブバーが備わる。
アップハンドルとのバランスを取るため、左右ステップはXO-1より前方に設置。ブレーキ/シフトペダルは各車専用設計。
空冷単気筒エンジンは9.5ps/8250rpm(中国仕様)を発揮。ミッションは6速で、インジェクション関連パーツはボッシュ製を選択。
フォークは倒立式で、フロントブレーキはφ210mmディスク+片押し式2ピストンキャリパー。ABSは2チャンネル式だ。
リアブレーキはφ190mmディスク+片押し式1ピストンキャリパー。スイングアーム下部にはスタンド用のボスを設置。
リアサスはカンチレバー式で、ブロックパターンタイヤはCORDIAL。アルミキャストホイールのサイズは2.75×12/3.50×12。

主要諸元<中国仕様>

車名:パピオ XO-2
全長×全幅×全高:1748mm×683mm×963mm
軸間距離:1214mm
最低地上高:150mm
シート高:740mm
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒
総排気量:126cc 
最高出力:7kw(9.5ps)/8250rpm
最大トルク:9.2N・m(0.94kg-m)/6500rpm
始動方式:セルフスターター
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式
懸架方式後:直押し式モノショック
タイヤサイズ前:120/70-12
タイヤサイズ後:130/70-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:114kg
燃料タンク容量:7L
乗車定員:2名

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…