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Renault Megane E-TECH Electric
2025年までにリリースする全4ブランドの24モデルをすべて電化
ルノーの電動化戦略を牽引するキーモデルが、2021年のIAAモビリティで発表された。その名も「メガーヌE-TECH(Eテック)エレクトリック」だ。ホットハッチの速さと楽しさを追求するR.S(ルノースポール)勢や、あるいはシンプルに機能性を突き詰めたカングーなど、特に日本では旧来の自動車ファンを満足させるイメージが強いルノーもまた、急速に電動化へ向かっている。
すでに欧州では、ルノーは30万台以上のBEVを販売するリーダー的存在でもある。今後、2025年までにルノー、アルピーヌ、ダチア、ラーダの4ブランドから登場する24の新型車のうち、BEVは少なくとも7車種になるという。その他についてもプラグインハイブリッド(PHEV)、もしくはハイブリッド(HV)になる模様だ。
新型バッテリーにより快適かつ使い勝手の優れた車内空間
その先陣を切ったメガーヌE-TECHエレクトリックは、「CMF-EV」と呼ばれる新世代のモジュラーEVプラットフォームの基に成り立つ。ルノー、三菱、日産アライアンスによるもので、サルーンから大型SUVまで、あらゆるボディタイプを構築できるという。メガーヌE-TECHエレクトリックは、全長4210×全幅1780mm×全高1500mmというCUV風ハッチバックとしてまとめられた。既存の短いオーバーハングと2700mmものロングホイールベースというパッケージが特徴だ。
高さ110mmという薄型バッテリーの搭載を可能としたこと、排気システムやトランスミッションの必要がなくなったことで、全高を抑えたサイズ感ながら車室空間にはゆとりがある。バッテリーは車体の構造としても機能し、側面衝突の際には衝撃を吸収する役割を兼ねるという。
最大で470kmの航続可能距離を実現
今回は蓄電容量40kWhと60kWhの2種類が発表され、前者は最長300km、後者は最長470kmの最大航続可能距離を持つ(WLTPサイクル)。出力7.4kWのウォールボックスタイプなら400km分の容量を満充電するのにおよそ8時間。22kWの充電器なら約1時間で最大160km分を、130kWの充電器なら約30分で最大200kmの高速走行分、もしくは最大300kmの市街地走行分を充電できる。またV2G(ヴィークル・トゥ・グリッド)という技術によって、必要に応じて電力を送電網に戻すことも可能とした。
こうした蓄電能力に対して、パワートレインは2種類が用意された。スタンダードは最高出力96kW(130ps)、最大トルク160Nm(25.5kgm)。高性能版は最高出力160kW(218ps)、最大トルク300Nm(30.6kgm)というもの。昨今のBEVでは定番となった永久磁石式モーターとは異なる「巻線界磁型同期モーター(EESM)」を採用したのがトピックだ。主に低トルク領域での効率向上、定出力特性範囲の拡大が期待できる技術で、なおかつレアアースを必要としないため、地球環境への影響を最小限に抑え、かつ生産コストを下げることにもつながるという。
欧州車の電化を最前線で進めるルノー
このように、ボディやパワートレインの隅々までブランニューなだけに、まるで新時代を切り拓くかのごとく、フロントグリルにあるダイヤモンド型のルノー・エンブレムは新しい意匠となった。新しいエンブレムは、従来のものより二次元的なのが特徴で、インテリアに拡がる「OpenR」と呼ばれるスクリーンやマルチメディアシステムに代表される、モビリティのデジタル化を象徴したものだと言える。
内燃機関時代の自動車技術を突き詰めて、欧州で主導権を握り、そして日本では熱いファンを生んできたルノーが、今度はデジタルデバイスを伴うBEVへの道を突き進む。その成功の鍵を握っているのが、メガーヌE-TECHエレクトリックであることに間違いはない。
TEXT/中三川大地(Daichi NAKAMIGAWA)
PHOTO/山本圭吾(Keigo YAMAMOTO)