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Jaguar XJ
ジャガーといえば4ドアスポーツサルーン
フル電動化を目指すジャガー。先だって発表されたデザインコンセプトは、もはや20世紀のジャガーイメージを根本から覆すもので、是非はともかく“生まれ変わろうとしている”ことは間違いない。ここまで大胆にイメージチェンジを図ろうとした、そしてそれに成功した老舗ブランドは今までなかったから、余計に衝撃は大きい。
もっとも自動車産業だって日本の家電ブランドのような行く末も考えておかねばならないから、瀕死の状態であったジャガーの賭けは、まずは“これしかなかった”のかも知れない。
というわけで、今回はガソリン車のジャガー、なかでも電動化になった後も主力と目されている4ドアサルーンに注目してみたい。先だって発表されたデザインコンセプトはチョップドルーフの2ドアクーペだったが、市販第1号は4ドアになる予定だ。ジャガーといえば4ドアスポーツサルーン、という伝統だけは守られたとも言える。
350系からいきなりモダンに
さて。ジャガーらしい4ドアサルーンで、今乗っておくべきモデルは何か。最後の「XJ」や「XF」あたりも捨てがたく、未来の電動モデルからすればそれでも十分“らしさ”の残るモデルであったとはいえそうけれど、いっそのこと雰囲気もちょっとクラシックなジャガーらしいモデルに今だから触れておきたい気もする。そうすると、歴代XJの中から選ぼう、という話になるだろう。そしてどうせなら丸4灯がいい。となれば自ずとモデルは限られてくる。1994〜2003年のX300(後期型X308)か、2003〜2009年のアルミボディX350(X358)である。
難しいのはこの2モデルを実際に乗って比べてみれば、文字通り“隔世の感”があるということだ。私は以前、JLRクラシック本部のあるコヴェントリーからパリまで歴代XJモデルに乗り継いで旅をしたことがある。XJシリーズの生誕50周年を記念するプログラムだったから2018年のことだ。初代XJ6のシリーズ1に始まり、シリーズ2、シリーズ3、XJ40、X300系、X350系、そして当時はまだ現行モデルとして生産中だったX351系まで、XJの歴史をほぼテストすることができた。その時、350系からいきなりドライブフィールがモダンになると感じたと同時に、300系のクラシックな乗り味だがモダンな機能性にも妙に惹かれたことを思い出した。現役で実用に耐える最後のクラシックテイストなジャガーだと思ったのだった。
350系は確かにモダンだ。足取りも軽やかで扱いやすいことは間違いない。けれども、そのぶんテイストが薄い。それならいっそ丸目ではないけれど最後のXJである351でもいいじゃないか、と思ってしまう。
程よい300もしくは308を探す
300系は違う。もとよりこの世代は40系のビッグマイナーチェンジであって、その乗り味に懐かしさが残っていたとて当然といえば当然なのだが、その残り方の具合が良い。決して古めかしくなく、さりとて350系のような割り切った関係でもない。適度にウェットで人情味のある乗り味、とでも言おうか。そしてそのフィールがとてもジャガーらしいと思えるあたりが嬉しい。
カーセンサーEDGEネットを1995〜2003年のジャガーXJで検索してみよう。1台だけ350なのに35万円(9万km)というびっくりバーゲンな個体が出てきて一瞬グラッときてしまったが、そこはグッと堪えてさらにスクロール、走行距離の多い個体は逆にこのモデルが信頼できることを表している。個人的には4万km以下がインテリアの程度的にも嬉しい。程よい300もしくは308を探してみれば、あったぞあった! 走行距離2.8万kmで本体価格120万円という1999年式のXJ エグゼクティヴ 3.2 V8だ。そこから数台、ほとんど同程度の個体があって、色もさまざま、眺めているうちにどんどん欲しくなっていく。やばい、そろそろ切り上げねば……。
というわけで、40の熟成極まった300もしくは308であれば比較的トラブルも少なく、それでいて丸目で背の低い猫背サルーンの雰囲気ある趣を、独特の足捌きで楽しむことができる。ジャガーがとんでもないブランドに変わろうとしている今、程よい昔を振り返ってみるのもいいと思う。