レースの活躍によりロードモデルは166から195、212へと発展 【フェラーリ名鑑:03】

【フェラーリ名鑑】黎明期を経て次なる快進撃へ(1948-1951)

フェラーリ 166MMのフロントビュー
F1GPのみならず各地のモータースポーツシーンでの活躍により、フェラーリのロードモデルは需要を高める。そして166から195、212へと進化を遂げた。
カロッツェリア トゥーリングが手掛けた美しいバルケッタボディであまりにも有名な「166MM」は、自動車メーカーとしての足場を築き始めたフェラーリを支えた重要なプロダクトの1台。さらに、GT系モデルも「195インテル」、「212インテル」と系譜を継ぎ、傑作として名高い250シリーズへと繋がる土壌を着実に成長させていった。

ミッレミリア制覇により166MMを販売

1948年のミッレミリアをクレメンテ・ビオンデッティとジュゼッペ・ナボーネで、同年のタルガ・フローリオをイゴール・トルベツコイとクレメンテ・ビオンデッティで、さらに翌1949年のタルガ・フローリオもクレメンテ・ビオンデッティとアルド・ベネデッティによって、いずれも総合優勝を果たすなど、デビュー以来多くのレースで166Sによる華々しい活躍を見せたフェラーリ。そのニューフェイスの名前は、瞬く間にイタリアからヨーロッパ、そして世界へと伝わっていった。

そしてフェラーリは、1948年のミッレミリアを制覇したことを転機に、同年末から34台の「166MM」を販売。それはやはりボディのデザインと製作をカロッツェリアに委託したものだったが、その中でも人気が高く、20台以上が製作されたのが軽量なスーパーレッジェーラ構造をもつ、カロッツェリア・ツーリングのバルケッタだった(ツーリングではスパイダーの名でプロジェクトが進められたが)。

1949年のル・マンで総合優勝を果たしたフェラーリ 166MM
フェラーリ 166MMは1949年のル・マンで総合優勝を果たし、その実力を証明した。

166MMのカスタマーの中には、実際にレースに使用した例も多く、搭載エンジンはアウレリオ・ランプレディの設計による1995cc V型12気筒を搭載し、最高出力は140psを誇る。これに5速MTを組み合わせ、同様にランプレディの手によるフレームがその基本骨格とされていたのだから、いかにプライベーターとはいえ、その戦闘力はフェラーリのワークスチームと変わることはなかった。

それが事実として実証されたのが1949年のル・マン24時間レースだ。このレースでルイジ・キネッティとピーター・ミッチェル・トムソンがワークスチームやライバルを抑えて見事に総合優勝を果たしてみせた。ちなみに166MMは、フェラーリがその歴史の中で、初めてカスタマーに販売したモデル。166では他に、グラン・ツーリズモの性格が強いインテルが発売されたことも前項で触れたとおりである。ヴィニャーレによる美しいクーペ等々、166は黎明期のフェラーリを支えた大切なプロダクトだったのだ。その生産は1953年まで続くが、この年製作されたモデルはシリーズIIと呼ばれることも多い。

166のシャシーに2350ccのV12を搭載した「195」

一方スポーツカーレースでは、166からのさらなる進化が話題となっていた。1950年にはそれまでの166のシャシーを使用し、V型12気筒エンジンを2341ccに拡大。8.5の圧縮比から170psの最高出力を得た「195S」が登場する。

そして、それに呼応するかのようにロードカーの「195インテル」がフェラーリから発売され、こちらもヴィニャーレやギア、そしてツーリング、モットなどのボディを組み合わせ、1950年から1951年にかけてトータルで27台を販売している。その内訳は、ヴィニャーレが12台、ギアが11台、ツーリングが3台、モットが1台と記録されている。

212にはコンペモデルとロードモデルを用意

1951年には「212エクスポルト」と「212インテル」の両モデルもデビューしている。エクスポルトはコンペティションモデル、インテルはロードモデルというのがフェラーリの考えた両車のキャラクターで、エンジンはいずれも2562ccのV型12気筒だが、圧縮比とキャブレターの違いから、エクスポルトは165ps、インテルは150psと最高出力には若干の差がある。

ちなみにボディは、エクスポルトではヴィニャーレが多数を占めているが、その中には1950年に166MMから212エクスポルトの仕様に改良され、加えてトゥーリング製のバルケッタから、個性的な、そして大胆な曲線デザインを特徴とするカロッツェリア・フォンターナによるデザインへとボディを改めたクーペも存在する。

フェラーリがその速さを誇り、そしてさまざまなカロッツェリアがボディの美しさと機能性を誇ったこの時代を、自動車メーカーとしての黎明期としたフェラーリ。それはエンツォ・フェラーリが胸に秘めていた野心を広く知らしめるには最高の時代であったともいえる。そして、レースの世界におけるフェラーリは、ここからさらに快進撃を続けていく。

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

【SPECIFICATIONS】
フェラーリ 166 MM
年式:1948年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:1995cc
最高出力:103kW(140hp)/6600rpm
乾燥重量:650kg
最高速度:220km/h

フェラーリ 195S
年式:1950年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:2341cc
最高出力:125kW(170hp)/7000rpm
乾燥重量:720kg

フェラーリ 195 インテル
年式:1950年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:2341cc
最高出力:96kW(130hp)/6000rpm
乾燥重量:950kg
最高速度:180km/h

フェラーリ 212 インテル
年式:1951年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:2562cc
最高出力:110kW(150hp)/6500rpm
乾燥重量:1000kg
最高速度:200km/h

フェラーリ 212 エクスポルト
年式:1951年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:2562cc
最高出力:121kW(165hp)/7000rpm
乾燥重量:850kg
最高速度:220km/h

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…