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Mercedes-Benz T-Class vs V-Class
日本市場でのニーズが見込めるTクラス
メルセデス・ベンツのミニバンといえば、日本ではVクラスが唯一の存在である。SUV全盛の時代にあっても、ボクシーでルーミー、かつ高級感あふれるVクラスは堅実な人気をキープし続けてきた。
そのVクラスに“弟”が誕生した。2022年4月26日に世界初公開された「Tクラス」だ。全長4.5mのコンパクトなワンボックスボディに、大開口の両側スライドドアを備えたミニバンは、日本でも高いニーズが見込めるはず。しかも車両価格は本国で3万ユーロ(約411万円)と比較的リーズナブル。注目必至のニューモデルは、兄貴分のVクラスとどのような違いがあるのだろうか。
ボディ寸法を比べてみると・・・
まずは両車のボディサイズをつきあわせてみよう(※Tクラスの日本導入は現時点で未定のため、同一条件で比較するべく両車とも欧州仕様の値を参照)。
【ボディディメンション】
Vクラス=全長4895×全幅1928×全高1880mm、ホイールベース3200mm
Tクラス=全長4498×全幅1811×全高1859mm、ホイールベース2716mm
Vクラスは、トヨタ アルファードやニッサン エルグランド並みの全長のボディに7つのシートをレイアウトする、いわゆる“Lクラスミニバン”。一方、Tクラスのボディはトヨタ ヴォクシーやホンダ ステップワゴンより約200mm短く、ルノー カングーより約200mm長い。都市部でも使いやすい絶妙なサイズ感のミドルクラスミニバンだ。まずは5人乗り仕様から販売をスタートするが、追って3列目にフルサイズの独立式シートを搭載するロングホイールベースモデルの投入も予定しているという。
ちなみにVクラスは、ベースモデルの他に「ロング」(全長がベース比+245mm)、「エクストラロング」(同+475mm)もラインナップしている。「エクストラロング」は、国産最高級トランスポーターの呼び声も高いトヨタ グランエース同等の大迫力サイズ。路上で相対するとかなりの威圧感を覚える。
両車ともユニークな「作り」に注目
両車とも両側スライドドア+広大なテールゲートをもつミニバンとあって、使い勝手面はいずれも優秀。
TクラスはLCV(小型商用車)の「シタン」がベースであり、ヘビーデューティな現場で鍛え上げられてきた信頼性が自慢。働くクルマとして様々な仕事人を支えてきたシタンの良さを、使い勝手の面でも継承している。
たとえば、地面から荷室床面までの高さが561mmと低く抑えられているため重い荷物の積み卸しも容易。大開口の両側スライドドアにより狭い場所でもスムーズに乗り降りできる。さらに後席を折り畳めば奥行き1.8mの広大なフラットフロアが誕生する。
そして、なんといってもユニークなのが“選べるバックドア”。標準で装備するのは跳ね上げ式のテールゲートだが、要望があれば90度/180度の2段階に開く左右両開きタイプも選択することができる。カングーやMINI クラブマンのような観音開きドアの方が自分には使いやすいというオーナーには朗報だろう。
多彩な用途に対応するユーティリティが魅力
Vクラスはファミリーユースはもちろんのこと、高級ショーファーとしてのビジネスユースも大いに見込んでいるため、室内はとりわけ豪勢だ。座席はすべて3点式シートベルトを一体化した脱着式シートであり、後席を2座のみにして広大なショーファードリブン仕様にしたり、2列目を後方に向けてセットし後席乗員5人が向かい合って座れる状態にしたりと、用途に合わせて多彩なアレンジが可能。
後席をすべて取りはらってしまえば、荷室容量はじつに4500リットルまで拡大する。参考までに、アルファードのフロントシート使用時の最大荷室容量は2691リットルである。さらに、リヤゲートにはガラスハッチを備えているので、狭い場所でモノの出し入れをすることが可能。3列目シート左右のウインドウ後端を電動で開閉できるのも、些細なようでいてミニバンユーザーにとっては魅力的なポイントといえる。
むろん、広さだけがVクラスの美点ではない。2列目シートにはオットマン&フットレストやマッサージ機能を装備することも可能だし、冷蔵庫付きセンターコンソールをつけてシャンパンを冷やしておくこともできる。メルセデスの表現を借りれば、「Vクラスは、ときにVIP用のシャトルにもなれば、ときにスパのように乗員を癒す存在にもなり得る」ということになる。
Tクラスはマニュアルトランスミッションも用意
Tクラスは7速DCTだけでなく、6速MTもラインナップしている(MTが日本市場に導入される可能性は極めて低いもかもしれないが)。エンジンには、約1.6トンの車体を運ぶのに十分なパワー&トルクを発生する1.3リッター直4ガソリンターボ(M200型)、1.5リッター直4ディーゼルターボ(OM608型)を用意した。
Vクラスは2.0リッター直4ディーゼルツインターボユニット一択。日本に導入されているのは163hp/380Nm+後輪駆動の「V220d」のみだが、本国ではさらに出力&トルクをブーストアップしたモデルや、4輪駆動仕様もラインナップしている。
ちなみに、両車ともフル電動化を見込んだモデルであり、Vクラスの電気自動車版「EQV」はすでに欧州で販売中。100%電気で走るTクラス「EQT」も現在開発を進めており、ビジネスモデルの「eCitan」と同タイミングでのリリースが想定される。
「ハイ、メルセデス」は両車に搭載
スマホでいうところのAndroidやiOSといったオペレーティングシステムは、いまや自動車のキャビンにも欠かすことのできない存在となった。Tクラス、Vクラスともに、メルセデス自慢の「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)」を搭載しており、「ハイ、メルセデス」と話しかけることで“バーチャルアシスタント”と交流できる自然対話型音声認識システムに対応している。
商用車の「Vito」をベースとしたVクラス、そして「シタン」をベースとしたTクラス。前者は700万円台から、後者は400万円台からの価格帯であり、セグメントはまったく異なるものの、納得の上質感と信頼性という点では、確かにメルセデスらしさを十分に備えた優等生ミニバンである。両車ともに両側スライドドアを開けた向こう側にワクワクのたっぷり詰まった広大な空間を求めるユーザーにおいては、選択肢のひとつとしてゆめゆめ見落とすことなきよう注視されたいモデルだ。
トレンドの車中泊に対応した仕様も用意するVクラス
もうひとつ、Vクラスは「マルコポーロ」と呼ぶ夢のある仕様も用意していることを付け加えておきたい。車体の上屋に電動でせり上がるもうひとつの空間、すなわち“ポップアップルーフ”は、日本市場においてはマツダのボンゴフレンディが装備していた“オートフリートップ”の名称で広く知られることになった。2名まで使用可能なベッドとリーディングライトを備えた“屋根の上のテント”は、アウトドアブームが押し寄せる今、改めて注目すべき装備のひとつといえるだろう。
【SPECIFICATIONS】
メルセデス・ベンツ T 180 d(欧州仕様)
ボディサイズ:全長4498 全幅1811 全高1859mm
ホイールベース:2716mm
車両重量:1678kg
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:1461cc
最高出力:85kW(116hp)/3750rpm
最大トルク:270Nm/1750rpm
トランスミッション:7速DCTもしくは6速MT
サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
駆動方式:FWD
タイヤサイズ:前後205/60R16
メルセデス・ベンツ V 220 d(欧州仕様)
ボディサイズ:全長4895 全幅1928 全高1880mm
ホイールベース:3200mm
車両重量:2127kg
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:1950cc
最高出力:120kW(163hp)/4200rpm
最大トルク:380Nm/1200-2400rpm
トランスミッション:9速AT
サスペンション:前マクファーソンストラット 後セミトレーリングアーム
駆動方式:RWD
タイヤサイズ:前後205/65R16