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Mercedes-Benz GLC Class
メルセデス史上もっとも売れたSUV
ミドルサイズSUV、GLCはいまやメルセデス・ベンツの大黒柱だ。2020年、2021年はコロナ禍や半導体不足などにより自動車業界が苦境にあえいだ2年間だったが、それでもGLCは単一車種として最多の販売台数を記録。過去10年間で(GLK時代を含めて)「メルセデス・ベンツ史上もっとも売れたSUV」という華々しい称号を手にしている。
そのGLCの最新型が2022年6月1日に発表された。メルセデスの看板を背負うトップセラーはどう変わったのか。従来型と比較しながら、進化の幅を探ってみたい。
全ラインナップにハイブリッドシステムを搭載
まず市場へ投入されるのは、SUVボディの「GLC」から。もちろん、人気のクーペSUVタイプの「GLC クーペ」も、さほど間を置かずに登場するはずだ。
今回から、すべてのパワートレインはHV化を遂げた。直列4気筒ガソリンターボ(M254型)+マイルドハイブリッドは出力違いで「GLC 200」と「GLC 300」の2種を、直列4気筒ディーゼルターボ(OM654型)+マイルドハイブリッドは「GLC 220 d」の1種を設定。さらに、直4ガソリン及び直4ディーゼルをベースにしたPHEVモデルとして「GLC 300 e」と「GLC 400 e」、「GLC 300 de」をラインナップする。全車「4マティック」を組み合わせる全輪駆動仕様である。
直4ガソリンのパワースペックを「300」同士で新旧比較すると以下の通り。
【パワートレイン:ガソリン】
新型=最高出力258ps/5800rpm、最大トルク400Nm/2000〜3000rpm
従来型=最高出力258ps/5800〜6100rpm、最大トルク370Nm/1800〜4000rpm
ピーク出力はほぼ据え置きした一方、トルクを増やして実用域での使いやすさを高めている模様。発進や加速の際、一時的にパワーアシストを行うモーターの出力も、14ps/150Nmから23ps/200Nmに高められている。
直4ディーゼルの「220 d」同士は次のようなスペックだ。
【パワートレイン:ディーゼル】
新型=最高出力194ps/3800rpm、最大トルク400Nm/1600〜2800rpm
従来型=最高出力197ps/3600rpm、最大トルク440Nm/1800〜2800rpm
PHEVは電気だけで100km超の走行が可能
なお、今回からディーゼルにもマイルドハイブリッドが搭載されているため、ガソリンモデル同様、必要に応じて23ps/200Nmの“ブースト”を得ることができる。
プラグインハイブリッドの「300 e」の数値は下記の通り。
【パワートレイン:PHEV】
新型=最高出力204ps/6100rpm(システム最高出力313ps)、最大トルク320Nm/2000〜4000rpm(システム最大トルク550Nm)
従来型=最高出力211ps/5500rpm(システム最高出力320ps)、最大トルク350Nm/1200〜4000rpm(システム最大トルク700Nm)
新型がやや控えめな数値になっているようだが、これは新たに出力違いの「400 e」と、ディーゼル+PHEVの「300 de」を追加したのが理由のようだ。「400 e」はピーク時で381ps/650Nm、「300 de」は335ps/750Nmと十分過ぎるパフォーマンスを発揮する。
また、EVモードでの走行距離も倍以上に伸びて、約100〜120kmをカバー(従来型は39〜43km)。一般的な通勤距離であれば、ビジネスデイは燃料を1滴も使うことなく運用することができそうだ。もちろん燃費性能も改善しており、「300 e」を例にとると、2.5〜2.2リッター/100kmから0.8〜0.6リッター/100kmに向上している。
未来感を増したコクピット風景
好燃費の実現には新型のエクステリアデザインも貢献している。Cd値が従来型の0.31から0.29に向上したうえ、前面投影面積も2.6平方メートルに抑え込むことで空気抵抗を抑え込んでいる。最新のシミュレーターや風洞実験により作り込んだ空力ボディは、風切り音などのノイズ低減にも繋がっている。
コクピットの風景も様変わりした。従来のカウル付きメーターディスプレイ+横型タッチスクリーンの形式に代わり、Cクラスと同じ横長メーターディスプレイ+縦型大型タッチスクリーンの最新デザインへ進化。先進的なAR(拡張現実)ナビゲーションシステムにも対応した。
“透けるボンネット”機能で悪路走破性も向上
【ボディディメンション】
新型=全長4716×全幅1890×全高1640mm、ホイールベース2888mm
従来型=全長4656×全幅1890×全高1644mm、ホイールベース2873mm
ボディサイズは全長が60mm伸びているものの、後輪を最大4.5度まで操舵するリヤアクスルステアリング機構を採用しているため、最小回転半径は5.5m(非装着車は5.9m)となっている。リヤオーバーハングが延長されたおかげで、荷室容量が+70リットルの620リットルまで広がっているのもポイントだ。
メルセデスが誇る最新のADAS(先進安全運転支援機能)はセグメントトップレベルの充実度。さらに、オフロードでの走行もより安全に楽しめるよう、新たに“transparent bonnet(透けるボンネット)”機能も用意。通常であれば視認できないボンネット下の状況や前輪のアングルを、センタースクリーン上にバーチャル表示するので、ドライバーは障害物を適切に避けながら悪路を走破することができる。
激戦区を制すポテンシャルは十分
2021年にはBMW「 X3」とポルシェ「マカン」の改良新型が登場し、2022年春にはマセラティも新型車「グレカーレ」を投入。6月にはレクサス「RX」も7年ぶりのフルモデルチェンジを敢行したばかりで、にわかに騒がしくなってきたミドルクラスSUV界隈。
その中でより効率良く、より快適に、より使いやすく、まさしく“正常進化”したGLCのポテンシャルは依然として高い。まだ販売価格についてのアナウンスはないものの、ボリュームゾーンを狙うモデルだけに、ツボをついた値付けをしてくることも想定内である。