フィアットの旧リンゴット工場に屋上テストコースを望むカフェがオープン

これは行ってみたい! 欧州最大の空中庭園にフィアット 500の最新施設オープン。旧テストコースが一望できるカフェもあるよ

フィアットの旧リンゴット工場の屋上テストコースをリノベーションした「La Pista 500」と新型500
フィアットの旧リンゴット工場の屋上テストコースをリノベーションした「La Pista 500」。新しくオープンしたフィアット 500 カフェからは、この景色が一望できる。
フィアットは2022年5月、イタリア・トリノ市街のフィアット旧リンゴット工場を再開発したミュージアム内に、「FIATCafe500(フィアットカフェ 500)」をオープンした。カフェの広大な窓越しには、屋上庭園としてリノベーションされた旧テストコースを望むことができる。

屋上にテストコースを持つ巨大自動車工場

1922年、イタリア・トリノの田園地帯に、当時ヨーロッパ最大規模の自動車工場が完成した。大きな窓が並び、屋上にテストコースを備えた巨大近代建造物は、フィアットの創業者、ジョヴァンニ・アニェッリの委託を受けて、イタリア人建築家ジャコモ・マッテ・トゥルッコが設計したものだった。

地上5階建て、全長500mの工場は、1フロアで工程を終えるごとに上の階へと車両を移動させ、最後に総延長1kmの屋上テストコースで試走を行うというユニークなコンセプトを採用していた。1982年の操業終了以後も建物は維持され、ショッピングモールやオフィス、ホテルなどを含む複合施設として生まれ変わっている。

「チンクエチェントの家」が2021年にオープン

その“旧リンゴット工場コンプレックスビル”へ、2002年に開館したのが「ピナコテカ・ジョヴァンニ・エ・マレッラ・アニェッリ絵画館」。ピカソ、マティス、ルノアール、モディリアニといった、ジョヴァンニ・アニェッリとマレッラ夫人の貴重なプライベートコレクションが収められている。

そのアニェッリ絵画館の一部に、「Casa 500(カーサ・チンクエチェント=500の家)と呼ぶ展示スペースが2021年9月にオープン。初代のモックアップから最新の500eの展示まで、3世代にわたる500の歴史が一望できるスペースとなっている。

旧テストコースを眺めながらのティータイム

フィアットの旧リンゴット工場の屋上テストコースをリノベーションした「La Pista 500」と新型500
フィアットの旧リンゴット工場の屋上テストコースを屋上庭園へとリノベーションした「ラ・ピスタ・チンクエチェント」。ここでは新型500の試乗イベントなども実施されている。

2022年5月、その“500の家”を訪れるゲストをもてなす空間も誕生した。「フィアットカフェ 500」は、絵画館でアートを、展示スペースで歴史を楽しんできた人々が、感想を語らいながらほっとひと息つくことのできるカフェスペース。なんといっても贅沢なのがその景色。広大な窓の向こうには、リンゴット工場の象徴ともいえる屋上テストコースが広がっているのだ。

この旧テストコース、現在では数万本の植樹を行ない、総延長1kmに及ぶ空中庭園としてリノベーションされている。その名を「La Pista 500(ラ・ピスタ 500=500のコース)」と呼ぶ。有名なバンクの残るオーバル状のコースに300種超、4万本以上の緑や花々が彩りを添える広大な庭園は、「ヨーロッパ最大の屋上庭園」でもある。しかも、最新の500eを試乗することができる特設のコースとしても利用されている。

全長3.6mの最新スモールEVとして

ピュアEVとなった最新500のデザインは、フィアット・スタイルセンターが手掛けたひと目で“チンクエチェント”と分かるスタイリングと、ほのぼのとした雰囲気を継承している。全長3630×全幅1685×全高1530mmという、小回りの利く小粒なボディサイズは電気自動車になっても健在だ。

コクピットの景色は潔いほどにシンプル。メーターはフルデジタルで、ダッシュボード中央には10.25インチの高解像度タッチスクリーンを備える。その下にエアコンルーバー、エアコン調整スイッチ、USBポート付き携帯電話収納スペース、さらに横長デザインのボタン式シフトセレクターが最小限のエリアに収められている。

小柄なボディで335kmの航続距離を実現

新型フィアット500のメーターディスプレイ
新型フィアット 500のメーターディスプレイ。走行モードは「ノーマル」「レンジ」「シェルパ」の3パターンから選択できる。「シェルパ」は電費を最大限向上して走行するモード。

パワートレインは、全車に最高出力87kW(118ps)/最大トルク220Nmの電気モーターと、容量42kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。航続可能距離は335km(WLTPモード)が公称値となっている。なお、充電は200Vの普通充電、及びCHAdeMO規格急速充電に対応。

走行モードは「ノーマル」「レンジ」「シェルパ」の3パターンから選択できる。「シェルパ」とはヒマラヤ登山を支える強力(ごうりき)のこと。スタミナ溢れる頼もしいサポーターになぞらえた名称が示すとおり、“電費”を最大限まで向上して走行するモードだ。条件に応じて最高速度を80km/hに制限し、エアコンやシートヒーターを制御して航続距離を稼ぎ出すこともある。その場合、ドライバーは任意でエアコンもしくはヒーターを作動させることも可能だ。

接近通知音にはフェリーニ映画の名曲を

ADAS(先進安全運転支援機能)系のメニューも充実している。自動車/歩行者/自転車を検知する自動緊急ブレーキをはじめ、レーンデパーチャーワーニング、リヤパーキングカメラ、自動ハイビームを全車に標準装備。ACCやレーンキープアシスト、アクティブブラインドスポットアシストなどもモデルにより搭載している。

もうひとつ、500eにはいかにもイタリアらしいアイデアが採用されている。「アコースティック・ビークル・アラート・システム(AVAS)」は歩行者に警告音で自車の存在を通知するシステムであり、音もなく走る電気自動車には欠かすことのできない安全機能。500eでは、最高20km/hまで作動するこのAVASに無機質なアラートではなく、ニーノ・ロータがフェリーニの映画のために作曲した『アマルコルド』を使っている。街に機械的な警告音より、メロディを。こんな発想も、チンクエチェントがもつ楽しげなムードに繋がっているのかもしれない。

「サブスクで最新EVに乗る」という今どきな提案

新型フィアット500のリヤビュー
新型フィアット 500は、2022年6月25日より国内販売をスタートする。当面は、月額利用のサブスク型カーリースとしての取り扱いとなる。

最新型の500は、2022年6月25日より国内販売をスタートする。エントリーモデルの「Pop」、上級装備の「Icon」、カブリオレの「Open」の3モデルをラインナップし、車両価格は450万〜495万円。なお、当面は新たなサブスクリプション型カーリース「FIAT ECO PLAN」と、すでに開始している「パケット FIAT」を通じての販売となる。月額利用料金は「FIAT ECO PLAN」が5万3900円(Pop:ボーナス払い10回・11万円)から、「パケット FIAT」では3万4000円(Pop:ボーナス払い10回・11万円)からとなっている。

「サブスクでEVに乗る」という新しいスタイルも、いつの時代も市井の人々の“ザ・ベーシック”として生活に寄り添ってきたチンクエチェントらしい現代的提案といえるかもしれない。

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著者プロフィール

三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…