コンパクトSUV市場にアルファロメオがやってきた! 国際試乗会でトナーレを検証

1.5リッターのアルファロメオ製コンパクトSUV、トナーレの実力をコモ湖でチェック

アルファロメオ トナーレハイブリッドの走行シーン
アルファロメオの新型コンパクトSUV、トナーレ。早くも国際試乗会が行われ、ハイブリッドモデルのインプレッションが届いた。
アルファロメオのコンパクトSUV、トナーレについに試乗するチャンスが訪れた。1.5リッターターボにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを持つトナーレは、アルファロメオらしく官能的なハンドリング性能を披露してくれた。

Alfa Romeo Tonale

電動化に突き進むアルファロメオの決意

新型コンパクトSUVトナーレは、2027年に全モデル電動化を謳うアルファロメオにとって、新時代の嚆矢となる存在だ。
新型コンパクトSUVトナーレは、2027年に全モデル電動化を謳うアルファロメオにとって、新時代の嚆矢となる存在だ。

ついにアルファロメオが電動化への道を歩み始めた。いや歩み始めたどころではなく突進だ。なにしろ今回登場したトナーレハイブリッドで48V電源を用いたMHEV(マイルドハイブリッド)を導入し、翌年にはPHV(プラグインハイブリッド)を追加する。

そして2024年に登場するトナーレよりもコンパクトな新型SUVにEV(電気自動車)を設定し、25年にはEV専用車を発売。そして27年にはすべてのラインナップをEV化するという野心的な計画を明らかにしているのだ。

アルファロメオといえば、第二次世界大戦の前からレーシングスポーツカーを手掛けて名だたる実績を残し、戦後は数々のロードゴーイングスポーツカーを生み出すとともモータースポーツにも力を注ぎ、現在もトップカテゴリーのF1に参戦するなど、長年、内燃機関で人々を熱くさせてきたブランドの代表格だ。

現在はステランティスという一大勢力のメンバーとなったのを機に、グループの電動化を牽引する立場となった。あのアルファがわずか5年先にはEVメーカーとなると思うとやや戸惑いも覚えるが、それくらいスピーディかつ大胆に変化していかないと生き残れないという危機感の現れだろう。

内も外もわかりやすいカッコ良さ

クイックなステアリング特性が魅力のひとつ。12.3インチのセンターパネル、10.25インチのタッチスクリーンは使い勝手も良い。
クイックなステアリング特性が魅力のひとつ。12.3インチのセンターパネル、10.25インチのタッチスクリーンは使い勝手も良い。

トナーレハイブリッドはステルヴィオよりひと回り小さい。いわゆるクーペSUVではなく標準的なSUVのシルエットだが、盾形のフロントグリル、LEDで縁取られた3連ヘッドランプ、5つの円を配置したデザインのアルミホイールなど、アルファロメオではおなじみのディテールが散りばめられた結果、グッドルッキングSUVに仕上がっている。

おなじみの要素を盛り込むだけでカッコよくなるのが老舗ブランドの特権だが、それはアルファロメオが100年以上続けた努力の賜物。仮に新興ブランドが同じことをしても響かないはずだ。

ステルヴィオ、ジープ グランドチェロキー、マセラティ グレカーレが用いるエンジン縦置きのジョルジオ・プラットフォームではなく、エンジン横置き。いわゆるCセグメントのSUVであり、メルセデス・ベンツGLA/GLB、BMW X1/X2、アウディ Q3/Q3 スポーツバック、それにMINIクロスオーバーあたりがライバルとなる。

いかにもアルファな気持ちよさは健在

新型コンパクトSUVトナーレは、2027年に全モデル電動化を謳うアルファロメオにとって、新時代の嚆矢となる存在だ。
MHEVとはいえトナーレハイブリッドは、エコよりもサウンドを重視してドライバーをその気にさせる仕立てだ。

1.5リッター直4ターボエンジン、7速DCT、オルタネーター代わりのBSG(ベルテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせたパワーユニットが搭載される。このエンジンは直噴で可変ジオメトリーターボを採用したハイチューンユニットで、最高出力160psと最大トルク240Nmを発揮する。

モーターも同20ps、同55‌Nmというスペックを持っているが、あくまでマイルドハイブリッドであり、このモーターはピークパワーを上げるためではなく、発進時の加速アシストや減速時のエネルギー回収が目的。なのでモーターがあることで“速さ”に貢献するわけではない。追って登場するPHVが速い方を担うのだろう。

とはいえモーターが発進を担うことで、中〜高回転域を優先させたエンジン特性とすることができる。トナーレハイブリッドは単なるエコカーでは決してなく、踏み込めば心地よいエンジンサウンドを響かせながらトップエンドまで気持ちよく吹け上がる(トップエンドが5500rpmというのがいかにも現代的だが)。ともあれせっかく電動化で効率を上げても、用もないのに走らせたくなるという意味ではエコカー失格なのかもしれない。

アルファロメオが手掛けたSUVは抜群のハンドリング性能を披露

新型コンパクトSUVトナーレは、2027年に全モデル電動化を謳うアルファロメオにとって、新時代の嚆矢となる存在だ。
SUVながらアルファロメオらしいハンドリングでコーナーをクリアしていくトナーレハイブリッド。コンパクトな車体は日本の環境でも威力を発揮するだろう。

ハンドリングは僕らが知るいつものアルファロメオだ。入念にチューニングされたサスペンションと13.6対1のクイックなステアリングのおかげで、操舵フィーリングは痛快だ。コモ湖畔の連続するコーナーをクリアし続けるのは実に気持ちよいドライブだった。山梨の西湖を周回するワインディングルートあたりで真価を発揮するだろう。アルファロメオは前輪駆動車として気持ちよいハンドリングをつくりだすのが本当にうまい。

日本仕様として設定されるグレードはヴェローチェとTI。パワースペックは共通だが、ヴェローチェのみにステアリングパドルが用意されるのと減衰力可変ダンパーが備わる。トナーレはトルク盛り盛りというタイプではないので、トルクを効率よくトラクションに変えるにはパドルは有効だ。また減衰力固定ダンパーのTIは荒れた舗装路でややバタつきを見せるが、可変ダンパーでソフトを選んだヴェローチェではバタつきがかなり抑えられ、快適性が向上する。日本仕様の詳細は未定だが、このままならヴェローチェをオススメしたい。

安全・快適装備は充実している。メーターの12.3インチフル液晶やセンターパネルの10.25インチタッチスクリーンは情報量が豊かで、表示が大きいので見やすく、タッチ操作もしやすい。カーナビは備わり、カープレイ、アンドロイドオートも使える。またトナーレハイブリッドはNFT(ノン・ファンジブル・トークン)認証が採用された最初の乗用車だ。NFTはデジタルデータ改ざん防止のテクノロジーで、これによって、車両の管理記録がデジタルデータとして車両に蓄積できるようになり、中古車となったときに正確で詳細な車両の各種履歴が残り、残存価格が正しく維持される。今後の業界標準となるのは必至だ。トナーレハイブリッドは年内の導入が予定されている。

REPORT/塩見 智(Satoshi SHIOMI)
PHOTO/Stellantis
MAGAZINE/GENROQ 2022年 7月号

【SPECIFICATIONS】
アルファロメオ トナーレ ヴェローチェ 1.5 ハイブリッド VGT
ボディサイズ:全長4528 全幅1841 全高1601mm
ホイールベース:2636mm
車両重量:1525kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1469cc
最高出力:118kW(160ps)/5750rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1500rpm
モーター最高出力:15kW(20ps)
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前後マクファーソンストラット
0-100km/h加速:8.8秒
最高速度:210km/h
燃料消費率:6.3L/100km

アルファロメオの新型コンパクトSUV「トナーレ」のエクステリア。

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著者プロフィール

塩見 智 近影

塩見 智

1972年岡山県生まれ。1995年に山陽新聞社入社、2000年に『ベストカー』編集部へ。2004年に二玄社『NAVI』…