年末にアウディA4がパンクした時の顛末まとめ

「イチ大事になりやすい輸入車のパンク」その原因とそれに対する心構えとは?

輸入車がパンクした場合、どのようなことが起きるのか? ジャーナリストが実体験をもとに報告する。
輸入車がパンクした場合、どのようなことが起きるのか? ジャーナリストが実体験をもとに報告する。
昔からクルマまわりのトラブルで定番なのがパンクだ。もちろん一部メーカーではランフラットタイヤを積極的に採用して、その心配が大いに提言している場合もあるが、多くは未だにパンクの不安はつきまとう。師走にパンクした百戦錬磨のモータージャーナリストが、その背景や実情を思い出と共に綴った。

「タイヤ空気圧の低下」の警告

数ヶ月前に(中古で)購入したばかりの2021年式アウディA4アバントにはスペアタイヤが積まれていない。あるのは簡易式のパンク修理キットのみ。
数ヶ月前に(中古で)購入したばかりの2021年式アウディA4アバントにはスペアタイヤが積まれていない。あるのは簡易式のパンク修理キットのみ。

悲劇は突然起きた。暮れも押し迫った12月24日の夕刻、用事を済ませて自宅に帰ろうとすると、「タイヤ空気圧の低下」を報せる警告メッセージがメーターパネルに表示された。次に信号で停まった際に確認すると、右フロントタイヤのサイドウォールが明らかにたわんでいる。道路が渋滞していたせいで感じにくかったのかもしれないが、メッセージが出てすぐタイヤをチェックしてここまで空気が減っているということは、スローパンクチャーというよりは急速に空気が抜けていると考えたほうがよさそうだ。

ここまで呑み込んだとき、自分を襲った不幸が思いのほか深刻なことに気づいてぞっとした。まず、自宅までは2〜3kmの距離だったが、それだけ走れば途中で空気が抜けきってサイドウォールを痛めてしまうのは明らか。サイドウォールが痛んだタイヤは危なくてもう使えないし、ヘタすればホイールを痛めることになる。ここは、無理は禁物だ。

しかも、数ヶ月前に(中古で)購入したばかりの2021年式アウディA4アバントにはスペアタイヤが積まれていない。あるのは簡易式のパンク修理キットだが、かりにパンクの穴が大きいとすれば、これを使っても効果がなく、最悪の場合は改めてのパンク修理ができなくなる恐れがある。つまり、自分ひとりでは手も足も出ないということ。

修理できるかできないかの瀬戸際

では、JAFを呼んでディーラーまでクルマを運ぼうとしても、間もなく冬休みに入ってしまうだろうし、そもそも補修用のタイヤがなければ年末年始の間は身動きが取れなくなる。

最後の望みは、近くのタイヤショップを見つけてそこでパンク修理をしてもらうことだが、穴の大きさによっては修理ができないし、そもそも年末のこの時期はスタッドレスタイヤへの交換で店はてんてこ舞いのはず。どうにも八方塞がりな状況だった。

半ば途方に暮れかけていた私だが、そのときはっと、100〜200mほど進んだところにタイヤショップがあることを思い出した。ワラをも掴む思いでそのショップを訪れてみると「いますぐには対応できませんが、閉店までには様子を見ておきます」との答え。しかも、振り返ってみれば、通りの反対側にはハンバーガーショップまである。「捨てる神あれば拾う神あり」とは、まさにこのこと。私はタイヤショップにクルマを預けると、ハンバーガーショップに入って善後策を考え始めた。

最初に連絡したのは、クルマを購入した販売店だった。ただし、新車時に装着されていたのと同じタイヤ(サイズは225/50R17)は、1本5万円以上もする。新車装着時タイヤのこの価格、どうにかならないものだろうか? しかも、このとき私のA4は2万km以上走行していたので、少なくとも前輪2本だけでも換えたくなるが、そうなると出費は10万円以上に跳ね上がる。225/50R17サイズであれば、リプレイス用の立派なタイヤに交換してもおそらく総額で10万円程度だろう。ここまでわかった時点で、私は新車装着時タイヤへの交換をあきらめ、4本とも新品タイヤに履き替える道を探り始めていた。

いっぽう、タイヤショップでは一時「穴が大きすぎて補修できないかもしれません」と脅されていたが、結果的にパンク修理は完成。ただし「気をつけてくださいね」の声に見送られながら、ショップを後にした。

タイヤ選びとショップ選び

ここから私のタイヤ探しが始まるのだが、心のなかではメーカーを決めていた。このA4購入直前まで乗っていたクルマのオドメーターが7万kmを越えたあたりでオールシーズンタイヤのミシュラン・クロスクライメイトに履き替えたところ、乗り心地が劇的に改善されて大いに驚いたことがあったのだ。しかも、タイヤが乗り心地に貢献しそうな微小ストローク域だけでなく、もっと大きなストローク領域でもしなやかさが増し、経年変化で少しくたびれはじめていた当時の愛車の乗り心地を新車同様か、ひょっとするとそれ以上に快適な状態まで押し上げてくれたのである。

いっぽう、私が買ったA4は35TDI ADVANCEという、本来であれば乗り心地志向のグレードだったにもかかわらず、アウディらしからぬぎこちなさを感じさせる乗り心地に軽い失望を覚えていた。まあ、この辺は2万km走ってタイヤがすり減っていたことも影響していたのだろうが、それにしても、快適性重視の私にはつらい乗り心地だった。そこで、今回もミシュランに交換して、乗り心地をいくぶんでも救いたいと、そんな風に考えたのだ。

そして最終的に装着することにしたのが省燃費タイヤのeプライマシーだった。このタイヤ、「ミシュラン史上最高の低燃費性能」というだけあって、転がり抵抗性能は最高ランクのAAAを達成。ウェット性能もCを確保している(225/50R17の場合)。

ちなみに交換作業をお願いしたのは東京・辰巳にあるシノハラタイヤ。3名のスタッフが手際よく、しかもていねいに作業してくれる様はタイヤ専門店ならではの光景。しかも、待合室はまるでプレミアムブランドのショールームのようにオシャレなうえに清潔感に溢れていて、好感度満点。それなのに、工賃は「え?」と驚くほど、お手軽だった。

一大事になりやすい輸入車のパンク

さて、肝心のタイヤだが、乗り心地は格段にマイルドになって、段差を乗り上げたときのガツンという突き上げ感は完全に解消。「ああ、これだったら長く付き合っていけそう」と感慨も新たにした次第である。しかも、ただソフトでブワブワなわけではなく、タイヤに強いショックが加わったときにも素早く振動を収束させてくれるダンピングのよさも持ち合わせている。

ハンドリングの正確さがまったく損なわれていないのも感心したポイントのひとつ。さらには、ロードノイズの音質が「ゴーッ」という重苦しいものから「サーッ」と軽いタイプに変わったのも嬉しかった。省燃費性にはもちろん不満がなく、高速道路だけでなく、空いている一般道でも簡単に20km/Lを上回る。それと心なしか、タイヤがスムーズに、自分からコロコロと転がっていってくれるように思えるのも気持ちのいいものだ。

こうして「やっぱり新しいタイヤはいいなあ」と思ういっぽうで、「近ごろの輸入車はパンクするだけで大変な目に遭うなあ」という思いを新たにしたのも事実。ただし、誰しもがタイヤをパンクさせようとして走っているわけではないし、いくら防ごうと思っても防ぎきれないのがパンクというもの。せめてタイヤの摩耗と空気圧の点検くらいは、こまめにしたいものである。

コロナ禍になってから始めたAE86筑波サーキット・トレーニング(講師は山田弘樹さん)。お陰でメディア対抗ロードスター4時間耐久レースでは結果が着いてきて……。

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…