あの頃のグループA最強ラリーカーを公道で楽しめる「マトゥロ ストラダーレ」

「グループAのランチア デルタで公道へ?」夢のようなレストモッド「マトゥロ ストラダーレ」【動画】

マトゥロ・コンペティション・カーズが開発した、「マトゥロ ストラダーレ」のエクステリア。
マトゥロ・コンペティション・カーズは、グループAスペックを持ちながら公道走行可能なデルタHF インテグラーレ「マトゥロ ストラダーレ」を完成させた。
マトゥロ・コンペティション・カーズ(Maturo Competition Cars)は、ランチア デルタ HF インテグラーレをベースにしたレストモッド「マトゥロ ストラダーレ(Maturo Stradale)」を開発。その詳細なスペックが公開された。

Maturo Stradale

仕様の異なる3種類のデルタをリリース

マトゥロ・コンペティション・カーズは、様々なタイプのデルタ HF インテグラーレをベースとしたレストモッドを展開。3番目のモデルとして、公道走行可能なグループA「ストラダーレ」が完成した。左から、ラリー、ストラダーレ、クラシック。
マトゥロ・コンペティション・カーズは、様々なタイプのデルタHF インテグラーレをベースとしたレストモッドを展開。3番目のモデルとして、公道走行可能なグループA「ストラダーレ」が完成した。左から、ラリー、ストラダーレ、クラシック。

フランク・ファン・ガンセウィンケルとマルコ・ギーラッツにより設立された「マトゥロ・コンペティション・カーズ」。共同経営社のギーラッツは、25年にわたり競技ラリーにおいてランチア デルタのメンテナンス、サービス、チーム運営をおこなってきた経歴を持つ。

マトゥロ・コンペティション・カーズは、ラリーのアイコン「デルタ HF インテグラーレ」3種類のレストモッドを発表。通常のレストア仕様である「クラシック(Classic)」、実際にラリーで使用されたグループAコンペティション仕様をレストアした「ラリー(Rally)」、そして公道走行可能なグループAとして開発されたのが「ストラダーレ(Stradale)」だ。

2023年1月、ストラダーレは、マトゥロ・コンペティション・カーズが持つラリーに関するすべてのノウハウと経験を投入し、3年の月日を経て開発が完了。ラリーカーが持つ最高レベルのパフォーマンスを発揮しながら、デイリーユースに使用できる世界唯一のグループAデルタが発表された。

ストラダーレは10台のみが限定製造される予定。初期オーダーはすでに確定しており、2023年の第3四半期に最初の2台がオーナーへとデリバリーされる。価格は装備により変化するが、ドナーカーを含めて40万ユーロ前後とされている。

実戦で洗い出されたデルタの美点と弱点

マトゥロ・コンペティション・カーズは、ヒストリックラリーに参戦しながら、グループAデルタの美点と弱点を洗い出し、ストラダーレの開発に挑んだ。
マトゥロ・コンペティション・カーズは、ヒストリックラリーに参戦しながら、グループAデルタの美点と弱点を洗い出し、ストラダーレの開発に挑んだ。

2023年1月12日から15日までオランダのマーストリヒトで開催された「インタークラシック・クラシックカー・ショー(Interclassics Classic Car Show)」において、マトゥロ・コンペティション・カーズは、「ラリー」や「クラシック」と共に「ストラダーレ」を展示。多くのヒストリックカーファンからの注目を集めることになった。

そもそもストラダーレ開発の起点となったのは、ヒストリックラリー用にレストアされたグループA仕様のデルタHF インテグラーレだったという。マトゥロ・コンペティション・カーズは、このグループAデルタを実際の競技に走らせることで、その美点と欠点を洗い出すことに集中。その結果、競技用にアバルトで開発されたグループAデルタによってもたらされる、驚くべきドライビングプレジャーに改めて気づかされたという。

このグループAラリーカーの走りを、スタイリッシュかつ、信頼性の高いロードカーで再現することが、開発ターゲットに掲げられた。

ユハ・カンクネンも太鼓判を押した完成度

マトゥロ・コンペティション・カーズが開発した、「マトゥロ ストラダーレ」のエクステリア。
2000もの新規パーツが投入され完成したストラダーレ。かつてデルタで2度のWRC王座を獲得したユハ・カンクネンは、その完成度に太鼓判を押す。

2020年に開発作業がスタートしたストラダーレは、マトゥロ・コンペティション・カーズが考える、ランチア デルタHF インテグラーレ グループA公道仕様のあるべき姿を具現した。市販モデルのデルタHF インテグラーレをアップグレードするのではなく、パフォーマンスベースとなったのは、あくまでもWRCで6連覇を達成したグループAデルタだった。

今回、2000点以上の新規設計パーツが採用された。2020年代の最新マテリアルと生産技術を導入したことで、パフォーマンスと信頼性、耐久性を高い次元で実現。この結果、グループAスペックを確保しながら、公道へ送り出すことが可能になった。

マトゥロのアンバサダーを務めるのは、グループAデルタをドライブし、1987年と1991年にWRCドライバーズ王座を獲得したユハ・カンクネン。「マトゥロ ストラダーレであれば、美しく精巧に作られたロードゴーイング・デルタに見せかけた、本物のグループAラリーカーを手に入れることができます」と、ストラダーレの仕上がりを絶賛する。

最高出力400PSを発揮する2.0リッター直4ターボ

マトゥロ・コンペティション・カーズが開発した、「マトゥロ ストラダーレ」の走行シーン。
搭載されるパワーユニットは、グループAデルタに由来する2.0リッター直列4気筒ガソリンターボエンジン。最高出力は、当時のグループAを大きく上回る、最高出力400PSが与えられている。

軽量カーボンファイバー製ボディにより、総重量はわずか1220kg。グループAラリーカー由来の2.0リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンは、最高出力400PS、最大トルク540Nmを発揮する。強化型シャシー、一部ボディシェル一体型専用ロールケージ、強化型5速ギヤボックス、再設計されたモータースポーツ用サスペンション、アバルト製グループA仕様ブレーキシステムなどが贅沢に導入された。

マトゥロ・コンペティション・カーズは、ストラダーレの完成後、ドイツ・デュッセルドルフ近郊のヴェーゼ旧空軍基地へと持ち込みシェイクダウンを敢行。WRC参戦経験を持つオランダ出身のラリードライバー、ケビン・アブリングがステアリングを握り、様々なセットアップを行った。アブリングからのフィードバックは非常にポジティブだったという。

デルタ S4のエッセンスが加えられたインテリア

マトゥロ・コンペティション・カーズが開発した、「マトゥロ ストラダーレ」のインテリア。
カーボンファイバーやチタン製パーツが贅沢に奢られたストラダーレのコクピット。デルタ HF インテグラーレをベースに、デルタ S4のエッセンスが加えられている。

コクピットは、アバルト製グループAラリーカーと市販仕様をベースに、グループBモンスターマシンのランチア デルタ S4のテイストを加え、完全に再設計された。

カーボンファイバーやチタンといったラグジュアリーな素材と、高機能なモータースポーツデザインが融合したユニークなデザインを実現。さらに、当時のラリーカーでは考えられなかったエアコンディショナーを装備するだけでなく、リヤシートやアルカンターラ&レザーによる美しいインテリアトリムが導入されている。

「ストラダーレ」は、グループAラリーカーのパフォーマンスを手にしながらも、デルタのデビューから30年を経た2020年代の最新テクノロジーがふんだんに投入された。ただ、開発を主導したファン・ガンセウィンケルは「モナリザに手を加えることはできない」と説明するように、あくまでもオリジナルデザインとセッティングを尊重した仕上がりとなっている。

マトゥロ ストラダーレを動画でチェック!

ターボ レーシング ホワイトをベースに、グリーンのダブル ストライプでカラーリングされたボディは、すべてカーボンファイバー製。フロントフード中央にはフューエルフィラーが象徴的に取り付けられている。

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