【マクラーレン クロニクル】初の量産ハイブリッドスポーツ「アルトゥーラ」

全モデルハイブリッド化を目指すマクラーレンの嚆矢「アルトゥーラ」【マクラーレン クロニクル】

新シャシー「MCLA」(マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャー)を採用した、ハイパフォーマンスハイブリッド(HPH)スーパーカー「アルトゥーラ」。
新シャシー「MCLA」(マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャー)を採用した、ハイパフォーマンスハイブリッド(HPH)スーパーカー「アルトゥーラ」。
「Track25」と呼ばれる中期新型車計画で、全量産車ハイブリッド化することを謳ったマクラーレン。その嚆矢が新開発の120度のバンク角を持つ3.0リッターV型6気筒ツインターボエンジンにモーターを組み合わせた「アルトゥーラ」である。

McLaren Artura

中期新型車計画「Track25」

全長4539mm、全幅1913mm、全高1193mmというボディサイズ。
全長4539mm、全幅1913mm、全高1193mmというボディサイズ。

マクラーレンに新しい時代が訪れた。2021年2月に彼らが発表した「アルトゥーラ」を見た時、そしてそのメカニズムの詳細が明らかになるにつれて、誰もがそのような印象を抱いたのではないだろうか。ちなみにアルトゥーラという車名は、Art(芸術)とFuture(未来)を組み合わせた造語であり、ここにもマクラーレンがいかに美しく、先進的なモデルを開発したのかという自信が表れている。

実際にマクラーレンは、このアルトゥーラの発表以前から、将来に向けての新たな戦略を発表していた、「Track25」と呼ばれる中期新型車計画がそれで、2018年に明らかにされたその計画の中には、2025年までに当時スーパーシリーズとスポーツシリーズと呼ばれていたモデルのすべてをハイブリッド化することが含まれていた。

そして2020年にはMCLA(マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャー)とネーミングされた新たなCFRP製シャシーを公開。4種類の新たなCFRP素材とともに、新しい樹脂系とコア材を使用して精密に構築された結果、その強度と剛性はクラスをリードするレベルに到達。同年10月にはそれを基本構造体として用いた、プロトタイプのハイパフォーマンスハイブリッド(HPH)スーパーカーが最終テストを完了し、それがアルトゥーラとして正式に発表されたというのが大まかな流れである。

1395kgの乾燥重量

ボディはCFRPとアルミニウムで成型されており、1395kgの乾燥重量を実現するために大きく貢献している。
ボディはCFRPとアルミニウムで成型されており、1395kgの乾燥重量を実現するために大きく貢献している。

全長4539mm、全幅1913mm、全高1193mmというボディサイズは、こちらも最新モデルの750Sと比較するとわずかにコンパクトな数字となるが、マクラーレンのロバート・メルヴィルによるシャープで彫刻的なデザインは、見るからに優秀なエアロダイナミクスを想像させるとともに、スーパーカーに必要不可欠な存在感の強さをも演出するフィニッシュとなっている。

リヤスポイラーとディフューザーは、それだけで最大50kgのダウンフォースを生成し、高速走行中にも圧倒的な安定感を演出してくれる。ボディはCFRPとアルミニウムで成型されており、1395kgの乾燥重量を実現するために大きく貢献している。

7.4kWhの容量を持つバッテリーパック

システム全体で680PS、720Nmの最高出力と最大トルクが発揮される。最大トルクがV型6気筒エンジンとエレクトリックモーターの合計値に満たないのは、パワートレインのドライバビリティ特性を最適化するためという。
システム全体で680PS、720Nmの最高出力と最大トルクが発揮される。最大トルクがV型6気筒エンジンとエレクトリックモーターの合計値に満たないのは、パワートレインのドライバビリティ特性を最適化するためという。

ミッドに搭載されるパワーユニットは、このアルトゥーラにとって最大のトピックスだ。まずその核となるのは、アルトゥーラのために新開発された、「M630」型と呼ばれる120度のバンク角を持つ3.0リッターV型6気筒ツインターボエンジン。単体で585PSの最高出力と584Nmの最大トルクを発揮するこのエンジンはオールアルミニウム製で、排気システムやツインで装備されるターボは、エンジンの内側にレイアウトされる、すなわちホットインサイドV形式が採用されている。

これに組み合わされるエレクトリックモーターは、同じく95PSと225Nmのスペックを持つもの。システム全体では680PS、720Nmの最高出力と最大トルクが発揮されるが、最大トルクがV型6気筒エンジンとエレクトリックモーターの合計値に満たないのは、パワートレインのドライバビリティ特性を最適化するためであると、マクラーレンは説明している。

パッセンジャーコンパートメントの後方下にレイアウトされるバッテリーパックは、7.4kWhの容量を持つもので、その重量は88kg。標準装備されるEVSEケーブルを使用した場合には、80%の充電に2.5時間を必要とするが、そのほかにも走行中にエンジンから優先してバッテリーを充電するモードも備わっている。ちなみに満充電からのゼロエミッション走行、つまりEV走行の可能距離は最大で31km。燃費性能は4.6L/100km、CO2エミッションは104g/kmと、いずれもEU値では発表されている。

0-100km/h加速は3秒フラット

それではスーパーカーとしてのアルトゥーラの運動性能はどうか。こちらも非常に魅力的な数字が並ぶのは当然だ。アルトゥーラには8速DCT(SSG=シームレス・シフト・ギアボックス)が組み合わされるが(後退はエレクトリックモーターで駆動するためリバースギアは備わらない)、その進化ももちろん理由のひとつにあるのだろう。

0-100km/h加速は3秒フラット、0-200km/h加速でも8.3秒というデータが公表されている。最高速は330km/h。一方でラグジュアリーなクルージングを楽しみたければ、このアルトゥーラには最新のADASシステムも搭載されているのだから、その機能に身を委ねればよい。新世代マクラーレンの象徴たるアルトゥーラ。その魅力はまだまだ多くのパートに隠されている。

「765LT」はロングテールの名を掲げるモデルとしては、スーパーシリーズでは675LTの後継となる。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…