「マクラーレン アルトゥーラ スパイダー」に試乗「20‌PSアップで最高出力700PS」

20‌PSアップで最高出力700PSとなった「マクラーレン アルトゥーラ」のスパイダー版

アルトゥーラ スパイダーはオープンになるだけでなくパワートレイン系の進化を実現した。
アルトゥーラ スパイダーはオープンになるだけでなくパワートレイン系の進化を実現した。
環境性能を両立した新時代のスーパースポーツとして人気の「マクラーレン アルトゥーラ」に新たにスパイダーが加わった。ただオープンボディになるというだけでなく、もはやマイナーチェンジと言っても良いくらいの進化を実現しているのだ。(GENROQ 2024年5月号より転載・再構成)

McLaren Artura Spider

スパイダーデビュー前にマイナーチェンジを実施

環境性能を両立した新時代のスーパースポーツとして人気のアルトゥーラに新たにスパイダーが加わった。ただオープンボディになるというだけでなくもはやマイナーチェンジと言っても良いくらいの進化を実現しているのだ。
カーボン製の軽量なルーフは車速が50km/h以下ならばわずか11秒でその開閉ができる。

マクラーレン・オートモーティブは、アルトゥーラのラインナップにオープントップ仕様となるスパイダーを追加設定。2025年モデルとして24年半ばからそのデリバリーを開始する予定だ。このように書き出せば、それだけで今回のニュースはその最も大切な話題は伝わるだろう。実際にそれが発表される以前、漫然とそう考えていたことを思い出す。だがマクラーレンは、このスパイダーのデビューに先立って、クーペのアルトゥーラをマイナーチェンジ。したがってスパイダーも新型「アルトゥーラ・スパイダー」へと進化を遂げたことで、一気にその伝えるべき内容は豊富なものになった。新旧アルトゥーラ間にある進化、そしてスパイダーの追加。この2つの話題を、ここではできる限り整理して解説していくことにしたい。

まずはMY25(2025年モデル)として誕生した新型アルトゥーラの基本構成について紹介しておこう。そのコア、すなわち核となっているのはMCLA(マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャー)と呼ばれる構造体で、これは軽量で高剛性のカーボンファイバー製モノコックをセンターパートに使用しており、オープン化に際しても補強部材などは一切必要としないというのは従来のオープンモデルと同様だ。さらに革新的なイーサネット・エレクトリカル・アーキテクチャーも採用され、それによってケーブル量は25%減少。それによる重量低減も決して少ない量ではなかったという。データ容量と転送速度が増加している点も見逃せないところだ。

ミッドに搭載されるエンジンは、120度バンク角のアルミニウム製ブロックを持3.0リッターのV型6気筒ツインターボ。最高出力はこれまでの仕様と比較して、さらに20‌PSのエクストラを得て700PSに向上したが、最大トルクの720Nmは従来のスペックから変化はなかった。

クーペとの比較で重量増はわずか62kg

エンジンサウンドもより魅力的なものに仕上げられている。これはレゾネーターのチューニングや、エキゾーストのテールパイプを上向きの円錐型とするなど、さまざまな手法を試した結果得られたものだという。

このV型6気筒エンジンには極めてコンパクトな設計のエレクトリックモーターが組み合わされている。それは8速SSG(DCT)のベルハウジング内に収められ、最高出力と最大トルクは従来通り95‌PS/225Nmを発揮。バッテリーパックは5個のリチウムイオン・モジュールで構成され、実効容量は7.4kWhでこれも従来と変わりないが、効率の向上によりEV走行距離は2km延びて最大33kmを可能とした。このバッテリーパックの重量は88kg。エレクトリックモーターも15.4kgとその軽量性は大いに注目できる数字だ。マクラーレンではさらに、パワートレイン・マウントの改良など、ドライビング・ダイナミクスを高めるための細かな改良も施している。

さて、それでは新たにアルトゥーラのラインナップに追加されたスパイダーのフィニッシュはどうなのか。こちらもそのスペックには魅力的な数字が並ぶ。RHT(リトラクタブル・ハードトップ)の重量はこちらも実に軽量に抑えられており、クーペとの比較ではその数字はわずかにプラス62kg。またマクラーレンはそのブランドを明かさないが、ライバル他車と比較しても83kgのアドバンテージを持っているという。実際の車重は1457kgと発表された。

カーボン製の軽量なルーフは車速が50km/h以下ならばわずか11秒でその開閉ができる。さらにオプションではスイッチ操作で太陽光の透過率を変更(最大99%カット)することが可能なエレクトロニック・ルーフパネルを選ぶこともできるから、そのラグジュアリー性も高められた。Cピラーは上側が透明になっているので、斜め後方視界に優れるのも特徴だ。

デリバリーは2024年半ば

環境性能を両立した新時代のスーパースポーツとして人気のアルトゥーラに新たにスパイダーが加わった。ただオープンボディになるというだけでなくもはやマイナーチェンジと言っても良いくらいの進化を実現しているのだ。
美しいシルエットはまったく損なわれていない。ルーフはカーボン製だが、調光式ガラスルーフのエレクトロクロミック・ガラスパネルも選択できる。

さらにスパイダー、クーペともに足まわりなどを見直したという。具体的にはエンジンマウントを改良してパワートレインの無駄な動きを抑制、ダンパーバルブの改良とドメイン・コントロール・ユニット(DCU)の性能アップ、ABSとトランスミッションのキャリブレーション変更などだ。その結果ステアリングの動きに対するダンパー減衰の反応は最大90%アップし、変速スピードは25%向上、200km/hからの停止距離を124mに短縮するなどの効果を得ている。

はたして彼らが新たにセッティングしたフットワークは、我々にどのような感動を与えてくれるだろうか。新型アルトゥーラ、すなわちMY25のアルトゥーラは前でも触れたとおり2024年半ばにはデリバリーが開始される。その進化を自分自身の身体で体験できる日が訪れるのが楽しみだ。

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
PHOTO/McLaren Automotive
MAGAZINE/GENROQ 2024年 5月号

SPECIFICATIONS

マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダー

ボディサイズ:全長4539 全幅1913 全高1193mm
ホイールベース:2640mm
車両重量:1457kg
エンジン:V6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2993cc
最高出力:445kW(605PS)/7500rpm
最大トルク:585Nm(58.1kgm)/2250-7000rpm
モーター最高出力:70kW(95PS)
モーター最大トルク:225Nm(22.9kgm)
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前235/35ZR19(8J) 後295/35ZR20(11J)

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爽快なオープンエアドライブが楽しめるアルトゥーラ・スパイダー。オープンに要する時間はわずか11秒。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…