新型タイカンの最強グレード「ターボGTウィズ・ヴァイザッハパッケージ」初試乗

「ポルシェ タイカン」の最強グレード「タイカン ターボGT ヴァイザッハパッケージ」をサーキットで試す

2019年に登場して以来、ハイパフォーマンスEVの先駆者となったタイカンがビッグマイナーチェンジ。新型タイカンは航続距離の伸長はもちろん、充電速度、システム出力などあらゆる面が大幅にアップデートされた。最強グレード「タイカンターボGTウィズ・ヴァイザッハパッケージ」の試乗記を中心に、新型タイカンの魅力をお伝えする。
マイナーチェンジしたタイカンは航続距離、充電速度などあらゆる項目が進化している。GENROQは新たに設定されたスーパーグレードに注目したい。
2019年に登場して以来、ハイパフォーマンスEVの先駆者となったタイカンがビッグマイナーチェンジ。 新型タイカンは航続距離の伸長はもちろん、充電速度、システム出力などあらゆる面が大幅にアップデートされた。 最強グレード「タイカンターボGTウィズ・ヴァイザッハパッケージ」の試乗記を中心に、新型タイカンの魅力をお伝えする。(GENROQ 2024年6月号より転載・再構成)

Porsche Taycan Turbo GT Weissach package

意識が軽く遠のくほどの加速

タイカンターボGTウィズ・ヴァイザッハパッケージの驚くべきポテンシャルに舌を巻いた筆者である。
タイカンターボGTウィズ・ヴァイザッハパッケージの驚くべきポテンシャルに舌を巻いた筆者である。

2019年にデビューした当時の「タイカンターボS」も、一部で「首が折れそうになる加速感」と評されたが、正直、私はそれほどとは思わなかった。ちなみに、当時の0-100km/h加速データは2.8秒。いまになってみれば、スーパースポーツカーなら内燃エンジン車でもさほど珍しくなくなってきた数値である。

そんな油断というか慢心が心のどこかにあったのかもしれないが、今回、私が体験した加速感は、既存のどんなスポーツカーともまったく異なるものだった。なにしろ、フルスロットルを保ったままブレーキをリリースした瞬間、全身の血が背中側に吸い寄せられて、意識が軽く遠のくような感覚を味わったのだから。それは、快感であると同時に、むしろ恐怖に近いほどの速さだった。

先ごろマイナーチェンジを受けたタイカンには「より高く、より速く、より遠くへ」のキャッチフレーズが添えられている。この言葉から想像できるように、新型はBEVとして全方位的に性能を高めたモデル。例えば、前述のターボSでいえば、最高出力は761PSから952PSへと飛躍的に向上。0-100km/h加速は2.8秒から2.4秒へと短縮された。

しかもバッテリー容量は93.4kWhから105kWhへと増加。走行抵抗の低減や回生ブレーキの強化など地道な効率の改善と相まって、航続距離は467kmから630kmへと伸びている。さらに最大充電容量が270kWから320kWへと拡大したことで充電スピードも速くなり、バッテリー充電量を10%から80%まで充電するのに必要な時間は最短で21分30秒から18分まで縮まった。もっとも、我が国の急速充電器はパワフルなものでもせいぜい150kWだから、ここまで素早い充電を国内で体験するのが難しいことはあらかじめお断りしておくべきだろう。

限界域が大幅に掴みやすくなった

注目すべきは、これまでタイカンのフラッグシップを担ってきたターボSのさらに上にターボGTならびにターボGTウィズ・ヴァイザッハパッケージ(以下、単にヴァイザッハパッケージと表記)が追加されたことにある。こちらはピーク時に最高1034PSを絞り出すほか、最大トルクは1340Nmへと増強。0-100km/h加速はターボGTで2.2秒、そこからさらに軽量化とエアロダイナミクスを強化したヴァイザッハパッケージは静止状態からわずか2.2秒で100km/hに達する。ちなみに、その際の平均加速度は12.6m/s2で、重力加速度の9.8m/s2を上回る。つまり、モノが自由落下する以上の勢いで、ヴァイザッハパッケージは猛然と加速していくのだ。冒頭で紹介した「全身の血が背中側に吸い寄せられた」のは、このヴァイザッハパッケージで体験したことだった。

しかもこのターボGTとヴァイザッハパッケージは、911でいえばGT3とGT3 RSに相当するモデルで、サーキット走行を強く意識した設定。だからこそモンテブロンコを訪れたわけだが、そこでの印象もまた、デビュー当時のタイカンとはまったく異なるものだった。

これは個人的な意見かもしれないが、初期のタイカンは足まわりがやや突っ張っているような感触で、それゆえフラット感が強く、コーナリング性能もすさまじく高かったけれど、ピッチやロールが極端に小さい分、車体にのしかかっているGが掴みにくく、結果としてタイヤのグリップ限界がわかりにくいと感じていた。おかげで、どこまで攻めるとタイヤが滑り出すかを予想しにくく、全力でコーナーにアタックするのを躊躇させる傾向があったのだ。

こうした足まわりの設定は、およそ2年前に実施された年次改良で見直され、限界域が大幅に掴みやすくなったが、今回のマイナーチェンジでもこの方針が維持されたことが、ヴァイザッハパッケージでのサーキット走行ではっきりと体感できた。

抜群のブレーキコントロール性

とにかくロールやピッチといった姿勢変化が自然なうえ、タイヤのグリップ状態を伝えるロードインフォメーションも適切。さらに専用開発されたピレリPゼロRは滑り出し始める直前の特性変化が穏やかで、実際に限界を迎えるかなり手前からスキール音などでドライバーに警告を与えてくれる。もちろん、ポルシェらしくブレーキのコントロール性はバツグンで、ドライバーが望めばABSはタイヤが軽くスキッドしながらのブレーキングさえ許してくれる。おかげで、常にタイヤ限界を駆使しながらモンテブロンコを駆け抜けることができた。こんな経験ができたのは、BEVではタイカンが初めてのことだ。

動き出しがスムーズな足まわりの設定が、一般道でのハンドリングや乗り心地の改善にも効果的なことはいうまでもない。同様のことは、前述した年次改良の際にも感じていたが、新型はアクティブ・ライドという名のアクティブサスペンションをオプション設定。ハンドリングと快適性をさらに高い次元で両立させていることも印象的だった。

意のままに操るポルシェの哲学

素晴らしい走行性能を披露してくれたタイカンターボGTウィズヴァイザッハパッケージ。大谷達也氏も大満足の試乗となった。
素晴らしい走行性能を披露してくれたタイカンターボGTウィズヴァイザッハパッケージ。大谷達也氏も大満足の試乗となった。

サーキット試乗を終えたとき、ポルシェの開発ドライバーであるラース・カーンに「このクルマは限界域の特性が掴みやすい」と伝えると、彼は誇らしげにこう語った。「そう、私たちはコンピューターのためではなく、人間が操るためのクルマを造っているのだから……」 この言葉は、そのままポルシェのクルマ造りの真髄を捉えていると私には思えた。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/Porsche AG
MAGAZINE/GENROQ 2024年 6月号

SPECIFICATIONS

ポルシェ・タイカンターボGTヴァイザッハパッケージ

ボディサイズ:全長4968 全幅1998 全高1378mm
ホイールベース:2900mm
車両重量:2470kg
モーター最高出力:760kW(1034PS)※オーバーブースト時
モーター最大トルク:1340Nm(136.6kgm)
駆動方式:AWD
EV航続距離:538-555km
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/35RZ21 後305/30ZR21
最高速度:305km/h
0-100km/h加速:2.2秒

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

5月11〜12日に開催されるフォーミュラE第9戦/第10戦ベルリンE-Prixから、2台の「ポルシェ タイカン ターボ GT セーフティカー」が登場する。

フォーミュラE公式セーフティカーに「ポルシェ タイカン ターボ GT」を採用「ベルリンE-Prixから」

ABB FIAフォーミュラE世界選手権は、2024年シーズン第9戦/第10戦ベルリンE-Prixから、フル電動スポーツ「ポルシェ タイカン ターボ GT」をセーフティカーとして導入する。2024年2月に発表されたタイカン改良新型は、2019年からフォーミュラEで使用されてきた「タイカン ターボ S」からバトンを引き継ぐ。

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…