1954 Porsche 550 / 1500RS Spyder 【ポルシェ図鑑:06】

【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 550 / 1500RS スパイダー(1954)」ポルシェ初の純レーシングマシン。

1954 Porsche 550 / 1500RS Spyder
ポルシェ 500 / 1500 RSのスタイリング。
リヤアクスル後方にエンジンを搭載し後輪を駆動する「RR」レイアウトは現代のポルシェ911も踏襲し、時が移りボクスター/ケイマンがミッドシップ・レイアウトを採用するまで長らくポルシェというブランドを語る際の代名詞にされてきた。ただし、ボクスター/ケイマンの登場までポルシェにミッドシップが存在しなかったわけではない。今に続く718ボクスター/ケイマンの祖と言える550及び1500RS スパイダーを紐解く。

1954  Porsche 550 / 1500RS Spyder

新たな高性能エンジンの開発に着手

1954 Porsche 550 / 1500RS Spyder
新型フラット4エンジンをミッドシップし、レース用に開発されたのが550及び1500RS スパイダー。

550 スパイダーは、1953年に登場したミッドシップ・レイアウトをもつポルシェ初の純レーシング・マシンである。

356が誕生し、グミュントで少量ながら量産が開始されると、ほどなくレースで使用する人々が現れるようになる。フランクフルトに住むヴァルター・グロックラーもその一人で、独自のスペースフレームにフラット4をミッドシップ・マウントし、アルミ製のオープンボディを被せた「グロックラー・ポルシェ」を1950年に製作。ドイツ国内のヒルクライムでチャンピオンを獲得するなどの活躍をみせていた。

一方、1951年のル・マンでワークス活動をスタートし、356/2SLよりも本格的な純レーシングスポーツを欲していたポルシェは、エルンスト・フールマン博士を中心に新たな高性能エンジンの開発に着手。1498cc 空冷水平対向DOHC(4カム)のタイプ547ユニットを完成させている。

参考にしたのは「グロックラー ポルシェ」

1954 Porsche 550 / 1500RS Spyder
アルミ製ボディをスチール製シャシーに被せ、ヴァルター・グロックラーの「グロックラー ポルシェ」に倣って開発された550 スパイダー。

並行して、それに見合う車体の開発も同時に進められたのだが、ここでポルシェが参考にしたのが、グロックラー ポルシェだった。

シャシーはスチール製のラダーフレームで、356-001以来となるミッドシップ・レイアウトを採用。サスペンションはフロント・トレーリングアーム、リヤ・スウィングアクスルとされ、ホイールベースは356と同じ2100mmとなっていた。そこに被せられたアルミ製のバルケッタ・ボディは、グロックラー ポルシェと同じフランクフルトのコーチビルダー、ヴァイトハウゼン社が製作したものだ。

1954 Porsche 550 / 1500RS Spyder
現在、ポルシェ・ミュージアムに展示されている550 スパイダーは、カレラ・パナメリカーナで総合3位に入ったヒストリックカーだ。

残念ながらデビューとなった1953年のドイツGPのプラクティスで547ユニットの熟成が必要なことが発覚し、同年のル・マン24時間には1498ccフラット4 OHVを積んでの出場となったが、見事にリチャード・フォン・フランケンベルク/ポール・フレール組が総合15位で完走し、1500ccクラスで優勝を果たしている。

高性能モデルに「カレラ」と名付けたきっかけに

1954 Porsche 550 / 1500RS Spyder
1954年のカレラ・パナメリカーナで活躍した550 スパイダー。このレースにちなみ、後のポルシェ製高性能モデルには「カレラ」のペットネームがつけられることになる。

そして1954年になると待望の4カム547ユニットを搭載した550スパイダーが完成。ル・マンで総合12位、1500ccクラスで優勝したほか、11月にメキシコで行われたカレラ・パナメリカーナでは、現在もポルシェ・ミュージアムに展示されているハンス・ヘルマンの550スパイダーが2台のフェラーリに次ぐ総合3位でフィニッシュ。この活躍から後のポルシェの高性能モデルに「カレラ」というペットネームがつけられることになったのは有名な話である。

【SPECIFICATIONS】
ポルシェ 550 / 1500RS スパイダー
年式:1954年
エンジン形式:空冷水平対向4気筒DOHC
排気量:1498cc
最高出力:115hp
最高速度:220km/h

TEXT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)

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