初代「Cクラス」に導入されたカラフルなカラーバリエーションの裏話

グリーンメタリックのちょっと古い1996年製「メルセデス・ベンツ C280」が貴重なコレクションである理由

メルセデス・ベンツ・ミュージアムに展示されている「メルセデス・ベンツ C 280」は、一見普通の1台にも見えるが、その鮮やかなボディカラーは、メルセデスにとって大きな意味を持つ。
メルセデス・ベンツ・ミュージアムに展示されている「メルセデス・ベンツ C 280」は、一見普通の1台にも見えるが、その鮮やかなボディカラーは、メルセデスにとって大きな意味を持つ。
ドイツ・シュトゥットガルトの「メルセデス・ベンツ・ミュージアム(Mercedes-Benz Museum)」のコレクションルーム5「Gallery of Everyday Heroes」には、美しいグリーンメタリックの「メルセデス・ベンツ Cクラス」が展示されている。この一見普通のセダンのように思われる、W202型Cクラスが展示されている理由は、そのボディカラーにある。

Mercedes-Benz C 280

初代Cクラス登場時のトップグレード

メルセデス・ベンツ C 280は、最高出力193PSを発揮する2.8リッター直列6気筒エンジンを搭載。内外装は鮮やかなグリーンで仕上げられた。
メルセデス・ベンツ C280は、最高出力193PSを発揮する2.8リッター直列6気筒エンジンを搭載。内外装は鮮やかなグリーンで仕上げられた。

シュトゥットガルトのメルセデス・ベンツ・ミュージアムでは、様々なトピックの企画を展開している。今回、取り上げるのは、1996年製「メルセデス・ベンツ C280」。一見、普通のサルーンであるW202型Cクラスが、なぜコレクションとしてミュージアムに展示されているのか?

初代Cクラス、W202型のデビューは1993年5月。デビュー当時、C280はW202型のトップグレードだった。2.8リッター直列6気筒エンジンは最高出力193PSを発揮し、ATを介してリヤを駆動した。1993年9月には「C 36 AMG」がデビューを飾り、Cクラスのハイエンドとなった。

このC280のボディ、フロントとリヤエプロン、トリムストリップ、そしてエクステリアミラーは、強烈なインパクトを持つカラーコード「252」つまり「デジーノ・グリーンメタリック(designo green metallic)」でペイントされている。これこそ、このクルマがミュージアムに展示されている理由である。

テーマカラーの「グリーン」は、インテリアにも採り入れられている。シートとドアパネルは、センターに鮮やかなグリーンを配置。メインカラーのブラックに鮮やかなコントラストを加えている。特にリヤシートは、シート、バックレスト、ヘッドレストのさまざまな長方形のグリーンのパーツが、まるでモダンアート作品のキャンバスに筆でダイナミックに描かれたような縦模様を形成している。

「MANUFAKTUR」につながる「designo」

自分の愛車を自由にコーディネートするメルセデス・ベンツのカスタマイズマイズプログラム「MANUFAKTUR」。その原点となったのが、1995年にジンデルフィンゲン工場に導入された「designo」コンサルティングセンターだった。
自分の愛車を自由にコーディネートするメルセデス・ベンツのカスタマイズマイズプログラム「MANUFAKTUR」。その原点となったのが、1995年にジンデルフィンゲン工場に導入された「designo」コンサルティングセンターだった。

メルセデス・ベンツ・ミュージアムに展示されているC280のエクステリアカラーは、貴重な時代の移り変わりを証人とも言えるだろう。

その1年前の1995年、ジンデルフィンゲン工場のカスタマーセンターにメルセデス・ベンツ初の「designo」コンサルティングセンターが開設。「designo」では、メルセデス・ベンツのエキスパートがカスタマーと話し合い、それぞれの夢のクルマをプランニングすることができた。

現在では、すべてのモデルシリーズにおいて「MANUFAKTUR」ペイント仕上げを含むエクステリアとインテリアの専用装備を提供する「MANUFAKTUR」が展開されている。2024年12月、メルセデス・ベンツはジンデルフィンゲン工場の中心部に「MANUFAKTUR Studio」を新設した。

カラーの拡大を続けてきたメルセデス・ベンツ

メルセデス・ベンツがボディカラーの選択拡大に舵を切ったのは、1950年代。それまではわずか5色というラインナップから、56年にはモノトーン26色、ツートーン23色にまで選択肢が広がっている。写真は1996年に投入された初代「SLK」の鮮やかなイエロー。
メルセデス・ベンツがボディカラーの選択拡大に舵を切ったのは、1950年代。それまではわずか5色というラインナップから、56年にはモノトーン26色、ツートーン23色にまで選択肢が広がっている。写真は1996年に投入された初代「SLK」の鮮やかなイエロー。

クルマを高品質に個性化するためのカラフルな塗装仕上げは、メルセデス・ベンツの歴史において重要な役割を果たしている。メルセデス・ベンツは1950年代後半にカラーバリエーションを大幅に拡大。1953年時点で、メルセデス・ベンツの乗用車の標準塗装は5種類のみだったが、1956年にはモノトーン26色、ツートーン23色という、豪華なカラーバリエーションが用意されるようになった。

1990年代のニューモデル攻勢において、メルセデス・ベンツは個性をアピールすべく、街中で目立つボディカラーに焦点を当てた。その例としては、1996年に投入された「SLK(R170型)」の強烈なイエローや、1997年の「CLKクーペ(C208型)」の鮮やかなブルーメタリックが挙げられるだろう。

現在、メルセデス・ベンツ ミュージアムでは、色覚に障がいのある来場者にも、今回の「C280」のようなカラフルなペイント仕上げの美しさを存分に楽しめるよう、「EnChroma」ゴーグルを導入し、希望する来場者に無料で貸し出している。EnChromaゴーグルは、可視光線から色スペクトルのごく一部をフィルタリングすることで、色覚異常の方でもクリアで鮮やかな色を楽しむことができるという。

ほぼ10年ぶりに2世代目にモデルチェンジした新型メルセデスAMG「GT」。

武闘派は変わらない? 2代目「メルセデスAMG GT 63 4マティック+」をワインディングで試乗

メルセデスAMGの代表的スポーツクーペ「GT」の2代目が登場した。先代とは打って変わってオプションながらもリヤに+2シートを備え、駆動方式もAWDとして快適性が向上させた。冬の峠を走ってその素性を確かめた。

キーワードで検索する

著者プロフィール

ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…