ランボルギーニにとって特別な“J“を冠する「アヴェンタドールSVJ」に試乗

空力でV12ランボルギーニに革命をもたらした「アヴェンタドールSVJ」にあらためて試乗し再考する

いかにもランボルギーニのフラッグシップのそのまた棟梁らしい華々しさを持つアヴェンタドールSVJ。
いかにもランボルギーニのフラッグシップのそのまた棟梁らしい華々しさを持つアヴェンタドールSVJ。
ムルシエラゴからフラッグシップの座を受け継いで2011年に登場したアヴェンタドール。Sへの進化やいくつかの限定モデルをリリースし、最近では電動化を果たしたスペシャルバージョンも生み出している。その限定モデルと派生電動モデルに改めて試乗し、間も無くその歴史を閉じるアヴェンタドールというクルマの魅力と楽しさ、そして意義を検証してみよう。(本記事は『GENROQ』2022年12月号より抜粋、再編集したものです)

Lamborghini Aventador SVJ

スーパーカー史に名を残す出来

ランボルギーニにとって伝説の“J”の車名を与えられたアヴェンタドールSVJ。770PSのパワーに加え、カーボンを多用してSよりも車重は50kg軽い。ウラカン・ペルフォルマンテで採用された可変空力システムALAも搭載し、超高速域でも抜群の安定感を誇る。
ウラカン・ペルフォルマンテで採用された可変空力システムALAも搭載し、超高速域でも抜群の安定感を誇る。

今からちょうど12年前。ムルシエラゴの生産を終えたランボルギーニはすぐさま次世代モデルへの“自信”を発信し始める。手始めに世界中のメディアをサンタアガタへ招くと、新開発パワートレインや新設したカーボンファイバー工場を披露し、スーパーカーファンの度肝を抜いたものだった。

2011年3月、アヴェンタドール正式デビュー。その2ヵ月前に日本でも開催されたスニークプレビューで筆者はそのオールヌード・スタイルを初めてみた。それは確かにレヴェントン路線ではあったけれど、専用車体を得て一層低く鋭くマッシブに私の目には映った。そのサイドシルエットにはカウンタックはもちろんのことミウラの面影さえ発見した。要するに、カッコいい。

デザイナーは当時チェントロスティーレのチーフを務めた、フィリッポ・ペリーニ。アルファロメオではウォルフガング・エッガーらと8Cコンペティツィオーネを生み出し、ランボルギーニではウラカン、ウルスを手掛けたのちVW傘下となったイタルデザインへと“異動”した。現在は現代自動車のジェネシスでデザインダイレクターを務めている。

アヴェンタドールはそんな彼の最高傑作と言っていい。否、1万2000台という生産台数を思い出せば、スーパーカー(=マルチシリンダーエンジン・リヤミドシップ・2シーター)史上、最高の成功作と言っていいだろう。

白眉は磁性流体ダンパーの採用

ランボルギーニにとって伝説の“J”の車名を与えられたアヴェンタドールSVJ。770PSのパワーに加え、カーボンを多用してSよりも車重は50kg軽い。ウラカン・ペルフォルマンテで採用された可変空力システムALAも搭載し、超高速域でも抜群の安定感を誇る。
ランボルギーニにとって伝説の“J”の車名を与えられたアヴェンタドールSVJのインテリア。

年産千台にリミットされたサンタアガタのフラッグシップモデルは、最後の最後、その名もウルティマエというモデルまで旺盛な需要に支えられ続けた。それゆえのこの生産台数である。そして生産が終わったとアナウンスされた途端、一部の限定モデルの中古車相場が跳ね上がっている。SVJなどはその際たるモデルだ。

前期モデルをSVで締めくくったサンタアガタは当然ながら後期モデル(Sシリーズ)の最後もその発展系を大尾とすべく開発を続けていた。後期最大の魅力は磁性流体ダンパーを使ったことだったと筆者は思う。これにより前期モデルのハードコアな乗り心地が幾ばくか緩和されたからだ。後輪操舵を追加したことと相まって、要するにとても運転しやすくなった。そんな標準モデルの高性能仕様がSVJとして姿を表す。パワートレインスペックの向上はもちろん、シャシー&サスペンションもSベースにグレードアップされたため、SVよりも街乗りに耐えうるセッティングとなっていた。

SVJを間近にすると今でも自然に心が湧き立つ。その容姿はいかにもランボルギーニのフラッグシップのそのまた棟梁らしい華々しさで見るものを奮い立たせて止まない。そしていざ乗り込んでみればその見た目のイメージそのまま。乗り味はSVより洗練されているとはいえ、今となってはかなりスパルタンな部類に入るからだ。

湧き立つエンジンの生命感

ランボルギーニにとって伝説の“J”の車名を与えられたアヴェンタドールSVJ。770PSのパワーに加え、カーボンを多用してSよりも車重は50kg軽い。ウラカン・ペルフォルマンテで採用された可変空力システムALAも搭載し、超高速域でも抜群の安定感を誇る。
6.5リッターV12「L539」自然吸気ユニットによる770PSのパワーに加え、カーボンを多用してSよりも車重は50kg軽いことも魅力だ。

アヴェンタドールの魅力とは、フィリッポの秀逸なデザインとL539ユニットの濃密で官能的なエンジンフィールに尽きる。SVJであれば街乗りであってもそのエンジンの生命感をよりダイレクトに感じることでき、そして回せば回すほどに息遣いの激しさを身体で知ることになる。パフォーマンスがドライバーの背中に集中する感覚はシリーズ随一であろう。

そして開発陣が最もこだわったポイントがエアロダイナミクスだ。何度かサーキットで試す機会にも恵まれたが、SVが腕力でねじ伏せるタイプだったのに対して、SVJでは腕力の足りない部分を空気の流れがサポートする。コーナリング中の、神の手によって望みのボディパートを押さえつけてもらうようなフィールは他のアヴェンタドールでは味わえない。

SVJをしてアヴェンタドールの完成形というのは躊躇われる。なぜならこのクルマの真価は数周のサーキットドライブによって初めて得ることのできるものだからだ。そういう意味でアヴェンタドールの真の最終形は次章のウルティマエに譲りたい。逆に言うとSVJというモデルはアヴェンタドール史上で傑出した存在であったともいえるだろう。

REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年12月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJ

ボディサイズ:全長4943 全幅2098 全高1136mm
ホイールベース:2700mm
車両乾燥重量:1525kg
エンジン:V型12気筒DOHC
排気量:6498cc
最高出力:566kW(770PS)/8500rpm
最大トルク:720Nm(73.4kgm)/6750rpm
トランスミッション:7速SCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前255/30ZR20(9J) 後355/25ZR21(13J)
最高速度:351km/h
0-100km/h加速:2.8秒
車両本体価格:5154万8373円
※数値は2018年当時のもの

エアサスから金属スプリングとなり、車高も20mmダウンしたウルス ペルフォルマンテ。リヤのダウンフォースは38%向上している。

ランボルギーニの最新SUV「ウルス ペルフォルマンテ」の走行モードが減った理由を解説

ウルスには実に6種類もの走行モードが用意されていた。それは新型ウルスSにも引き継がれている。しかし、もっともパフォーマンスを重視したウルス ペルフォルマンテのANIMAは新たRALLYモードが設定されたものの、結果としてウルスSよりも少ない4モードとなってしまった。その理由とは……?

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