伝説的存在の名前を与えられた「カウンタックLP800-4」を都内で試す

伝説の名を冠する「カウンタックLPI800-4」の乗り味はやはり究極のV12フラッグシップらしく感動ものだった

カウンタック登場50周年である2021年に突如発表された新型カウンタック。
カウンタック登場50周年である2021年に突如発表された新型カウンタック。
間も無くその歴史を閉じる「アヴェンタドール」。いくつかの限定モデルをリリースし、最近では電動化を果たしたスペシャルバージョンも生み出している。その限定モデルと派生電動モデルに改めて試乗し、その魅力と楽しさ、そして意義を検証する本企画。今回はスーパーカーの象徴的存在「カウンタック」の名を受け継いだ最新モデル「カウンタックLP800-4」だ。(本記事は『GENROQ』2022年12月号より抜粋、再編集したものです)

Lamborghini Countach LPI800-4

伝説の名前の復活

カウンタック登場50周年である2021年に突如発表された新型カウンタック。シアンをベースに、伝説のフォルムやディテールを実にうまく再現している。大きなウイング等は持たないが、リヤ後端のパネルは必要に応じてせり上がってダウンフォースを生み出す。世界限定112台で、今のところロードスターはない。
新型カウンタックはシアンをベースに、伝説のフォルムやディテールを実にうまく再現している。

シアンはアヴェンタドールのひとつの理想形にして完成形。蘇ったカウンタックを知る前に下したその結論はしかし、いささか早急に過ぎたようだ。もう一歩進化したアヴェンタドール系が後から登場するなんて思いもよらぬことだった。カウンタックLPI800-4、である。

シアンFKP37およびロードスターがアヴェンタドール系の最終進化形であり、さらには次世代へのヒントというべきモデルだと思っていた筆者にとって、“カウンタック”という伝説のネーミングを復活させてまでランボルギーニはいったい何をファンやマニアにアピールしたかったのか、それが気になって仕方なかった。まさか50周年の単なる祝祭の道具ではあるまい。

シアンとまるで同じパフォーマンスシステムを有するがゆえ、それがカタチだけのものであったなら、“カウンタック”という大事なネーミングを復活させたこと自体に対する批判は免れない。それこそ古いカウンタックを愛し続けるファンやマニアへの裏切りでしかない。カウンタック以降のランボルギーニ社フラッグシップモデル、ディアブロやムルシエラゴ、アヴェンタドールをすべて“カウンタック”であったと評価する筆者は、もちろんアヴェンタドールの進化形(マイルドハイブリッド)であるシアンと同じメカニズムを持つという事実をもって新型カウンタックを“カウンタック”であると援護した。けれども内心では、形と名前を似せただけで中身(=ドライビングテイスト)が同じようなクルマを造られたんじゃたまらないとも思っていたのだ。

シアンと異なる乗り味

カウンタック登場50周年である2021年に突如発表された新型カウンタック。シアンをベースに、伝説のフォルムやディテールを実にうまく再現している。大きなウイング等は持たないが、リヤ後端のパネルは必要に応じてせり上がってダウンフォースを生み出す。世界限定112台で、今のところロードスターはない。
大きなウイング等は持たないが、リヤ後端のパネルは必要に応じてせり上がってダウンフォースを生み出す。世界限定112台で、今のところロードスターはラインナップされない。

とはいえ国内に試乗車は用意されず、新しいカウンタックを試すには本社の白い個体しかない。さもなければ実際に納車されたオーナーに頼み込むほかない。幸いにも筆者の周りには何名か新型を手に入れた幸運な友人がいた。ナンバーが付いたらぜひ試させて欲しい。オーダーが終わった時点から、そうお願いしてあった。

今回、撮影に協力いただいたシルバーのカウンタックLPI800-4はコンフィグレーションから付き合わせていただいた思い入れのある個体だ(実は前項のシアンロードスターもそうだった)。派手なクルマだからできるだけシックにしたいというオーナーのセンスが光る。派手な色合いのオーダーが多く、またそれがよく似合う“カウンタック”とはいえ、これくらい落ち着いたトーンになってもかえって目立つ。ラインの美しさが際立つコーディネーションだ。

ブラウン系でまとまったインテリアも落ち着く。もうこの時点でシアンやアヴェンタドールSVJとは心の平静さという点でまるで違う。闘争心など湧かない。あるのはひたすら慈しみの感情だけだ。そして気分はひたすらラグジュアリィ=贅沢。

走り出してすぐさまシアンとは違うと感じた。なぜ?どこが?何が違う? まず、交差点での動きが異なる。シアンの方がフロントにマスを感じるのだ。少しだけ大きな弧を描いて曲がっていく感覚とでも言えばいいだろうか。対するカウンタックはトレッドの広さもあまり感じさせず、ノーズの動きもステアリング操作により忠実に思う。要するに扱いやすい。シアンの方が少々一体感に欠ける。

これぞアヴェンタドールの最終形

カウンタック登場50周年である2021年に突如発表された新型カウンタック。シアンをベースに、伝説のフォルムやディテールを実にうまく再現している。大きなウイング等は持たないが、リヤ後端のパネルは必要に応じてせり上がってダウンフォースを生み出す。世界限定112台で、今のところロードスターはない。
搭載される6.5リッターV型12気筒自然吸気エンジン。モーターアシストによるシステム最高出力は814PSに達する。

ああ、これは乗りやすい。そう思い始めると電気モーターの出力制御もシアンに比べて上等な気がした。よりスムーズに加速する。乗り心地もベター。段々といたって普通のクルマのように思えてくる。

そういう意味ではシアンを感じるというより、いっそう成熟し洗練されたアヴェンタドールだと思う。これなら毎日乗ってもいい。カウンタックという名前からは、ひょっとするとふさわしくない評価かもしれないが、昔のカウンタックもまた扱いにくいミウラの反省から生まれたクルマだった。

高回転域まで回すとアヴェンタドールである。シアンよりもアヴェンタドールを感じる。ということはつまり、カウンタックLPI800-4こそアヴェンタドールの完成形だったというわけか。ではやはりシアンは・・・。いよいよ面白いことになってきた。

REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年12月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・カウンタックLPI800-4

ボディサイズ:全長4870 全幅2099 全高1139mm
ホイールベース:2700mm
車両乾燥重量:1595kg
エンジン:V型12気筒DOHC
排気量:6498cc
最高出力:574kW(785PS)/8500rpm
最大トルク:720Nm(73.4kgm)/6750rpm
モーター最高出力:34PS
システム最高出力:599kW(814PS)
トランスミッション:7速SCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前255/30ZR20(9J) 後355/25ZR21(13J)
最高速度:355km/h
0-100km/h加速:2.8秒

カリフォルニア御用達というべきトップレス・ロードスター、シアン・ロードスター。日本で乗りこなすのは至難の業だ。

非公開: 時代に翻弄された電動化ランボルギーニの嚆矢「シアン ロードスター」がその希少性を誇る理由

フラッグシップの座をムルシエラゴから受け継いで2011年に登場したアヴェンタドール。Sへの進化やいくつかの限定モデルをリリースし、最近では電動化を果たしたスペシャルバージョンも生み出している。今回はその限定モデルであり、電動モデルでもある「シアン」に改めて試乗し、間も無くその歴史を閉じるアヴェンタドールというクルマの魅力と楽しさ、そして意義を検証する。(本記事は『GENROQ』2022年12月号より抜粋、再編集したものです)

キーワードで検索する

著者プロフィール

西川 淳 近影

西川 淳