マクラーレンのスーパースポーツPHV「アルトゥーラ」でサーキットを走る

「肝はEデフの制御にある」富士スピードウェイでマクラーレン アルトゥーラを全開走行

ダンロップコーナーを立ち上がるアルトゥーラ。サスペンションセッティングとEデフの効き方が素晴らしくマッチしていた。
S字コーナーを駆け抜けるアルトゥーラ。サスペンションセッティングとEデフの効き方が素晴らしくマッチしていた。
マクラーレンの新時代を切り拓くPHV、それがアルトゥーラだ。先月日本に上陸したばかりだが、早くもサーキットテストの機会を得た。富士スピードウェイで本誌おなじみの田中哲也が実力を測る。

McLaren Artura

まずはEVモードでスタート

今まで多くのマクラーレンでサーキットを走ってきた。すべてのマシンが本当に楽しく、特に720Sや765LTは強烈に速くて素晴らしかった。今回ついにマクラーレン初の量産PHVであるアルトゥーラを富士で試乗した。その新しいテクノロジー満載のマシンの挙動がどのようなものか? 私が感じたことをレポートしよう。

まずシートに座って最初に感じたのが、シートポジションの調整がとてもやりやすくなったこと。走行しながらも簡単に行える。シートやペダルポジションはとても自然で、ドライビングに集中できる。それとドライブモードなどのスイッチがとても分かりやすく、扱いやすくなった。見やすくなったメーターも含め、すべてにおいてポジティブな印象だ。

まずはモーターのみで走る「エレクトリック」モードでスタートする。とてもスムーズだ。コースインしてすぐに「トラック」モードに変更する。サーキットではすぐにトラックで走りたくなるものだ。もちろん各モード毎にしっかり変化があり、走りたいシチュエーションを自分でセットできる。

Eデフとパワー特性、 ESPの介入

シンプルで機能的アルカンターラの室内。ビナクルと呼ばれるメーターナセルのスイッチでパワートレインとハンドリングのモードを切り替える。
マクラーレンの代名詞とも言えるディヘドラルウイングドアを跳ね上げて乗り込む。

徐々にペースを上げて行く。マクラーレンらしい軽くて低重心の挙動は健在で、新しいカーボンモノコック技術によりPHVになってもその挙動は素晴らしい。コーナリングはとにかく良く曲がる。アンダーステアがとても少なくて気持ちいい。特にコカ・コーラコーナーや100Rなどの高速コーナーでは車重の軽さと低重心によって高い安定感を示し、グリップも素晴らしい。

低速コーナーでのブレーキングからコーナーのクリップ付近までの、フルブレーキでの進入は制動力が高くリヤの安定感が高い。曲がるためのブレーキングではブレーキをリリースしながらステアリングを切り込んでいく時にリヤが適度に軽くなり、ターンインの向きを変える部分の挙動がとてもスムーズでインフォメーションが優れていた。

1コーナーやヘアピン、セクター3ではこのようなブレーキングからのターンインを繰り返し、サスペンションセッティングとEデフの効き方が素晴らしくマッチしていると実感できた。電動油圧パワーステアリングもドライバーへのインフォメーションを重視しているマクラーレンのこだわりが感じられた。

どれをとっても一流レベルの制御

だが、このクルマでもっとも感動的だったのがコーナー出口である。パワーとEデフのマッチングにより、理想的なコーナー立ち上がりが実現した。コーナーのクリップ付近からスロットルをコントロールしていくと、足の動きに対してまったく反応の遅れがなく、思い通りにコントロールができるのだ。

モーターとエンジンの連動が素晴らしい。踏み始めでエンジンが少し反応が遅れるところを、モーターが完璧にカバーしてくれる。なおかつ、そのトルクの出方も素晴らしいので今まで経験したことがない挙動が体感できた。全開時にはレブリミッターまでパワフルでスムーズ、唐突感のない特性を実現している。

リヤの高いスタビリティと共に感動したのがコーナー出口のEデフのコントロールである。アクセルを踏み込んでいくとリヤ荷重になり、その時にEデフの働きでリヤが旋回していくが、このEデフは「グイグイ」とリヤが旋回してくれる。そのイメージはアクセルを踏んでいくとリヤが滑る寸前の部分がコーナー出口で継続され、よく曲がってくれる。それによりコーナー出口のアンダーステアはほぼ皆無と感じられる。

この「ギリギリ」部分を使ってコーナリングを行ってくれるマシンはほとんど記憶にない。試しにわざと大げさにアクセルを踏みこんでみるとリヤが流れ出すが、この時リヤがスライドする寸前か同時くらいにESPがわずかに介入し、スピンしなかった。

フォーミュラのように走る

新開発のV6ツインターボの真上にレイアウトされるチムニー。ホットVレイアウトの排熱を900度から240度にまで下げる効果があるという。
新開発のV6ツインターボの真上にレイアウトされるチムニー。ホットVレイアウトの排熱を900度から240度にまで下げる効果があるという。

アルトゥーラのEデフの特徴とパワー特性、そしてESPの介入のどれをとっても、プロのドライバーが限界ギリギリを使って走る部分を、逆にプロよりうまいレベルの曲げかたで、マシンが勝手にコントロールを行ってくれることを開発やセッティングした技術力や開発ドライバーのレベルの高さに感激した。

ただ慣れていないとトラックモードで走っていると、リヤがスライドしているような錯覚に陥って少し慎重になる人がいるかもしれない。そう思えるくらい「リヤ旋回」を使ったマシンだと感じた。

アルトゥーラのリヤで曲げていくイメージは若いころ人生をかけて走っていたフォーミュラカーに似ている。フォーミュラはカートと同じようなアクセルワークを使ってリヤを旋回させていくイメージで走るのだが、アルトゥーラはフォーミュラの印象が強かった。

「軽さ」「高剛性」「レスポンス」「ナチュラルなインフォメーション」など理想となるフォーミュラをベースに、どうロードカーにしていくかというイメージがしっかり浮かぶ。それでいてモードを変えれば乗り心地も素晴らしい。乗り心地重視とサーキット重視を両方カバーできるところは720Sでも感動したが、アルトゥーラもまた同じレベルで素晴らしい。

エンジンとモーターがマッチ

富士スピードウェイを全開で走ってみた印象は良く曲がり、よく止まり、トラクションがとても良いということ。試乗当日はストレートエンドまでの全開が許されず、コントロールラインでのメーターを確認したが、それでも260km/h付近に到達していた。パワーだけではなく空力もあるので、最高速は予測できないがかなり伸びそうな予感がした。

これだけ高性能なパワーユニットを「扱いやすい」「フラットな特性」と言うと誤解を生むかもしれないが、モーターとエンジンのマッチングが最適で、凄く速いが唐突感や違和感そして急にリヤがスライドしそうな「怖さ」をまったく感じなかった。怖いのは、100%マシンを理解していないが、あまりに気持ちが良いのでEデフの挙動とESPを信じてマシン任せでアクセルを踏んでいく時の自分だけであった。そんな気持ち良さと速さをドライバーが体感できる。スポーツカーが新たな世界に突入したのと思えるクルマであった。

REPORT/田中哲也(Tetsuya TANAKA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2023年1月号

SPECIFICATIONS

マクラーレン・アルトゥーラ

ボディサイズ:全長4539 全幅1976 全高1193mm
ホイールベース:2640mm
車両乾燥重量:1410kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
排気量:2993cc
トータル最高出力:500kW(680PS)/7500rpm[モーター最高出力:95PS]
トータル最大トルク:720Nm(73.4kgm)/2250rpm[モーター最大トルク:225Nm]
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前 235/35R19(8.5J)後295/35R20(10.5J)
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.0秒
車両本体価格:3070万円

【問い合わせ】
マクラーレン東京 TEL 03-6438-1963
マクラーレン麻布 TEL 03-3446-0555
マクラーレン大阪 TEL 06-6121-8821
マクラーレン名古屋 TEL 052-528-5855
マクラーレン福岡 TEL 092-611-8899

エンジン単体でも凄まじい性能を発揮するが、やはりモーターによる225Nmのアシストは、マクラーレンが単に電動化のための電動化をしたわけではないと思わせてくれる。

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田中哲也