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BMW M3 CS
重点市場の日本での販売も決定
BMW M社として2023年最初のニューモデルとなった「M3 CS」。搭載される3.0リッター直列6気筒Mツインパワーターボ・エンジンは、最高出力557PS(405kW)までパワーアップされ、8速Mステップトロニック・トランスミッションと「M xDrive」4WDシステムを介して4輪を駆動する。最大トルクはベースのM3から変わらず650Nmに留められた。
0-100km/h加速は3.4秒、0-200km/h加速は11.1秒を実現し、最高速度は電子リミッターで302km/hに制限される。M3 CSは2023年3月からBMWグループ・ミュンヘン工場において限定生産され、世界市場に向けて段階的に投入される。このスペシャル仕様の販売地域は米国、ドイツ、英国、日本とされており、日本における販売時期、販売価格、販売台数などの詳細は今後発表される見込みだ。
過給圧を2.1barに引き上げ、パワーアップを実現
搭載される3.0リッター直列6気筒Mツインパワーターボは、2022年シーズンにドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)を制したM4 GT4に搭載されたパワーユニットのベースとなっており、今回のエンジン改良にもモータースポーツからの様々なフォードバックが投入されている。
クランクケースはスリーブなしのクローズドデッキ構造となり、高い燃焼圧力に対応するよう剛性がアップが図られた。また、ワイヤーアーク溶射を施した軽量シリンダーにより、摩擦損失を低減。軽量鍛造クランクシャフトは非常に高いねじれ抵抗を持ち、パワーの立ち上がりをサポート。エンジンの高回転化にも貢献している。
シリンダーヘッドは3Dプリンタでコアを製作し、従来の金属鋳造では不可能だった、冷却水ダクトの最適な配置を実現。これによりサーキット走行など、熱負荷の高い状況にも対応した。また、冷却システムと同様にオイル供給システムも、サーキット走行に対応できるよう最適化されている。
ベースから約40PSの出力向上は、主にターボチャージャーの改良によって達成された。今回、2基のモノスクロール・ターボチャージャーの過給圧が1.7barから2.1barに引き上げられ、エンジンマネジメントシステムにチューニングが加えられた。専用設計されたエンジンマウントにより、パワーユニットとシャシーの剛性も向上。これにより、エンジンのレスポンスがさらに鋭くなったという。
排気系は、電動フラップ、軽量チタン製リヤサイレンサー、マットブラックにペイントされた左右2本出しテールパイプを備えた「デュアルブランチ・エキゾーストシステム」を採用。そのサウンドは、誰もが感動すべきレベルにあると、BMW M社は胸を張る。また、Mセットアップ・メニューのエンジンセッティングで「SPORT」か「SPORT+」モードを選択すると、レーシングカー並みのサウンドも楽しむことができる。
「2WD」モードでドリフトも楽しむことが可能に
パワーユニットから供給される強大なトルクは、ドリフトロジック付8速Mステップトロニック・トランスミッションを介して4輪を駆動する。ドライバーはセンターコンソールに配置されたMセレクターレバーか、ステアリングホイールのカーボンファイバー製シフトパドルで操作を行う。
Mセットアップ・メニューでは、デフォルトの「4WD」モードから、より多くのトルクを後輪に配分する「4WDスポーツ」モードへ切り替えることができる。DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)を完全にオフにすることで、「2WD」モードによるドリフトを楽しむことも可能だ。
足回りやブレーキシステムには、エンジン特性や重量配分に合わせた専用チューニングが施された。各サスペンションの運動特性を個別に調整し、ダンパー/スプリング/アンチロールバーなどにCS専用パーツを導入。これにより、ステアリング精度やコーナリング時のスタビリティ、ダンピングレベルなどが最適化された。
CFRP製パーツの採用で20kgもの軽量化
今回、内外装にカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)製コンポーネントを積極的に導入。カーボンファイバー製ルーフのほか、ボンネット、フロントスプリッター、フロントエアインテーク、エクステリアミラー・キャップ、リヤディフューザー、リヤスポイラーにCFRP製パーツが採用されている。
コクピットも、センターコンソール、ステアリング・シフトパドル、インテリアトリムなどをCFRP製に統一。標準装備のMカーボン製バケットシートも、軽量化にも大きく貢献している。さらに、チタン製リヤサイレンサーの搭載により、エキゾーストシステムだけで、4kg以上の軽量化が可能になった。
エンジンルームには、軽量化された高精度ストラットブレースを装着することで、軽量化と同時にボディ剛性も向上。このストラットタワーとフロントセクションをつなぐアルミ鋳造パーツは、様々な走行状況下に最適化された専用ジオメトリを採用。これらの軽量化により、M3 コンペティションと比較して、約20kgもの軽量化が達成されている。
軽量化されたBMWキドニー・グリル
フロントセクションには、軽量化されたフレームレスのBMWキドニー・グリルを採用。このデザインはレーシングマシンのストリップバックエアーを表現しているという。さらに専用デザインとしてレッドの縁取りがグリルに入れられ、グリルバー上部には専用の「M3 CS」バッジも配置された。
また、BMWレーザー・ライト・ヘッドライトを標準搭載。ロック解除時のウェルカム・シークエンスやロービーム/ハイビーム時には、ホワイトではなくイエローが点灯する。これもGT3レーシングマシンをイメージしているという。
専用デザインのカーボン・バケットシート
コクピットは、M3 CS専用デザインの「Mカーボン・バケットシート」を標準装備。フル電動&ヒーターに加えて、ヘッドレストにはイルミネーション付きのモデルバッジが装着される。シートクッションとバックレスト構造体にはCFRPが採用され、サイドボルスターとヘッドレスト下は、軽量化を目的に大胆なカットアウトが施された。
シート表面はメリノレザーで覆われ、ブラック/レッドのカラースキームに、独自のコントラストステッチが組み合わせられた。このバイカラー仕上げはリヤコンパートメントに設置された2基のシートにも導入されている。
ドアパネルはフロント/リヤともにブラックレザーで統一され、軽量仕様のセンターコンソールにはレッドの「CS」レタリングが施された。さらに、BMW M社のカラーストライプを織り込んだMシートベルト」、「M3 CS」が入れられたドアシルプレート、アンスラサイトカラーのヘッドライナー、カーボンファイバー仕上げのインテリアトリム、Mアルカンターラ・ステアリングホイール(CFRP製シフトパドル、レッドセンターマーカー付き)も標準装備となっている。
コクピットには、BMWオペレーティング・システム8をベースにした最新世代「BMW iDrive」を搭載。すでにお馴染みとなったカーブドディスプレイは、12.3インチ・インフォメーション・ディスプレイと、14.9インチ・コントロール・ディスプレイで構成。人間工学に基づいたドライバー中心の配置により、抜群の視認性と操作性が確保されている。