「最新ランボルギーニ ウルス」のペルフォルマンテとウルスSを比較

「ペルフォルマンテとウルスSはどこが違う?」最新ランボルギーニ ウルスの比較試乗

ウルスがマイナーチェンジでウルス・ペルフォルマンテとウルスSに生まれ変わった。2台ともエンジンは4.0リッターV8ツインターボの最高出力が16‌PS引き上げられ666PSとなった。
ウルスがマイナーチェンジでウルス・ペルフォルマンテとウルスSに生まれ変わった。2台ともエンジンは4.0リッターV8ツインターボの最高出力が16‌PS引き上げられ666PSとなった。
スーパースポーツ系SUVの先駆けであるランボルギーニ・ウルスが、プロサングエの登場に合わせるかのようにマイナーチェンジを行った。ペルフォルマンテの称号を与えられた初のウルス、その進化の狙いと実力をSとの比較から読み解いてみよう。

Lamborghini Urus Performante
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Lamborghini Urus S

最大の違いは足まわり

スポーツドライブ派にはウルス・ペルフォルマンテ、クルージング派にはウルスSがマッチするだろう。
スポーツドライブ派にはウルス・ペルフォルマンテ、クルージング派にはウルスSがマッチするだろう。

ランボルギーニ・ウルスのハイパフォーマンス版、ウルス・ペルフォルマンテがついに日本の路上を走り始めた。今回は、ほぼ同時期に誕生したウルスSとウルス・ペルフォルマンテをテストし、2台の位置づけと狙いを解き明かすことにした。

端的にいえば、ウルス・ペルフォルマンテとウルスSは、2017年にデビューしたオリジナル・ウルスのマイナーチェンジ版だ。2台のエンジンは、ともに4.0リッターV8ツインターボの最高出力をオリジナルから16‌PS引き上げて666PSを発生する。一方、最大トルクは850Nmで不変。車重は、カーボンパーツを多用したペルフォルマンテが従来型より50kg近く軽い2150kgまで絞り込んだが、ウルスSは2197kgで従来と同等とされた。ちなみに、新たにエアアウトレット付きとなったボンネットがカーボン製となるのは2台に共通しているので、それ以外の部分で軽量化に差がついたのだろう。

もっとも、2台の最大の違いは、その足まわりにある。ウルスSがオリジナルと同じ「アクティブ・ロール・スタビライザー付きアダプティブエアサスペンション」を用いるのに対して、ウルス・ペルフォルマンテは「アクティブ・ロール・スタビライザー」こそ残すものの、エアサスペンションをメカニカルなスチール製コイルスプリングに置き換えたのだ。エアロダイナミクス面でも、ペルフォルマンテはルーフ後端にリヤウイングを追加するなどしてダイナミックな印象を強調している。

よりスパルタンなペルフォルマンテ

先にお断りしておくと、ウルスは2017年にデビューして以降、おそらく2020年前後のどこかで足まわりの設定の大幅な見直しが行われている。というのも、かなりスポーティで明確な硬さが感じられた“初期型”に対し、その後の“改良型”は快適志向に大きく舵を切っていたからだ。この点を念頭に置きながら、以下のレポートを読み進んでいただければ幸いである。

まずはウルス・ペルフォルマンテに試乗する。試乗する前は、正直、かなり身構えていた。スイートスポットが広いエアサスペンションを敢えてメカニカル・スプリングに置き換えたということは、かなりターゲットを絞った、それもスパルタンな設定だと想像できたからだ。

しかし、走り始めてみると、低速域でさえ実にしなやかな足まわりであることがわかって拍子抜けした。率直に言って、初期型ウルスよりもハーシュネスは軽く、路面からガツガツと突き上げられる感じは一切しない。さすがに、直前の“改良型”に比べればタイヤの当たりは明確だが、それにしても路面からのショックは、そのひとつ一つから不快なカドが見事に取り払われているので、いわゆる「イヤな硬さ」には思えない。むしろ、“改良型”で認められた「サスペンションの動きが反転するときなどにダンパーの減衰力がかすかに抜ける」現象が消え去って、しっとりとして質感の高い乗り味が楽しめるようになった。率直に言って、引き締まった印象と当たりの柔らかさのバランスでいえば、“初期型”と“改良型”を上回ってトップに位置させたくなるくらい、良質な乗り心地である。

ウルスSもやはり安定したコーナリングを見せる

しかし、ペルフォルマンテの足まわりがなんといっても輝き始めるのは、ワインディングロードである。“初期型”や“改良型”との違いは明確で、重心が低い安定したコーナリングが堪能できるのだ。その、屈強なラグビー選手がぐっと腰を下ろした姿勢を連想させるようなスタンスのおかげで、タイヤに対して荷重が垂直にのしかかり、しっかりとしたグリップを生み出してくれる。タイヤの外側だけに荷重が集中してつま先立ちだった姿勢になりがちな既存のSUVとは、まるで異なる安心感だ。

これと連動する形で、ボディの動き自体が俊敏で、ドライバーの操作が素早く反応してくれるのもウルス・ペルフォルマンテの美点。おかげで、コーナーの進入で待つ時間が格段に減るうえ、コーナリング中に不測の事態に陥っても余裕を持って修正できる。このため、走行中のマージンをギリギリまで削ってでも、タイヤの限界を見極めたいという気にさせてくれる。これもほかのSUVでは体験しにくい、ペルフォルマンテならではの特徴といえる。

では、これに比べてウルスSのコーナリングがなまくらで仕方がないかといえば、決してそんなことはない。さすがにウルス・ペルフォルマンテと比較すれば、やや腰高かもしれないし、ターンインでの待ち時間が微妙に長くなっている傾向は否めない。とはいえ、コーナリングの安定性と俊敏性にかけていえば、数あるハイパフォーマンスSUVのなかでもトップクラスに位置する。また、現実のコーナリングスピードは、心理的な安心感の違いからペルフォルマンテのほうがやや高めだったものの、定常的なコーナリング性能でいえばペルフォルマンテと大差はないはず。ウルスSも、そのくらいのパフォーマンスを備えていると思っていただいて間違いないだろう。

キャラは異なるが性能アップに間違いはない

さらにウルスSが輝くのが高速走行で、熟成されたエアサスペンションのおかげでフラットかつ流れるようなクルージングを味わえる。一方のウルス・ペルフォルマンテも基本的には快適だが、路面のうねりでボディが浮き上がってからボトミングするような状況では、それまでとは異なる硬質なショックが伝わってくることがまれにあった。とはいえ、個人的には“初期型”よりもペルフォルマンテのほうが、良質で洗練された乗り心地のように感じられた。

したがってスポーツ派にはウルス・ペルフォルマンテ、クルージング派にはウルスSがお勧めというありきたりな結論になるけれど、ウルスSの守備範囲は思いのほか広い。したがってスポーツ派を自認する方も、まずはウルスSを味わったうえで、どちらを選ぶかを決めたほうがいいだろう。個人的には、悩んだ末にウルスSを選びそうな気がしている。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年5月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・ウルス・ペルフォルマンテ

ボディサイズ:全長5137 全幅2026 全高1618mm
ホイールベース:3006mm
乾燥重量:2150kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3996cc
最高出力:490kW(666PS)/6000rpm
最大トルク:850Nm(86.7kgm)/2250-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前285/40ZR22 後325/35ZR22
0-100km/h加速:3.3秒
最高速度:306km/h
車両本体価格:3181万6785円

ランボルギーニ・ウルスS

ボディサイズ:全長5112 全幅2018 全高1638mm
ホイールベース:3003mm
乾燥重量:2197kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3996cc
最高出力:490kW(666PS)/6000rpm
最大トルク:850Nm(86.7kgm)/2250-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前285/45ZR21 後315/40ZR21
0-100km/h加速:3.5秒
最高速度:305km/h
車両本体価格:2852万801円

【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889
https://www.lamborghini.com/jp-en

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…