目次
セーターおじさんが健在なら……
2006年、「8C」発表。2013年、「4C」発表。以来、10年にもわたって、「6C」はいつ出るのか? とアルファロメオファンは心待ちにしてきた。メーカー側もその開発を決して否定はしなかったし、一時期などは(つまりセーターおじさんが健在の頃は)、ブランドの新アイコンとして6Cが出ると社内資料で明言されていたのだ。
けれども、出なかった。そもそもこの手の高性能スポーツカーは象徴的な存在であり、商売の状況と表裏一体である。ブランドの販売台数がイケイケ、否、せめて一定のボリュームさえあれば、いっそうの認知を獲得すべく誰もが見上げて惚れ込む“花火”を打ち上げようとする。8Cも、そして4Cもそうだった。
最大の目的はアメリカ市場での成功を導くことであって、この2モデルはその橋頭堡として生まれたものだ。実際、筆者も数字を見て驚いたのだけれど、4Cの最大市場はEU全体を除くとアメリカで、アルファ好きの多い日本のざっと4倍売れた。総生産代数は9000台程度と言われているが、うちなんと2000台がアメリカだ。
全ては月末に明らかになるが
それでも後が続かなかった。アルファロメオにとって、セダンのジュリアはともかく、SUVのステルヴィオが大誤算だったに違いない(いいクルマなのに!)。世界中で不振を極めた。トナーレで一息ついたとはいえ未だブランドの年間生産台数は5万台。これではスーパーカーどころの騒ぎではない。
けれどもステランティスは諦めない。トナーレでなんとか上潮になりつつある今だからこそ、加えて将来のフル電動化をも見据え、今のうちにもう一度、アルファロメオの名前を、イメージを引き上げておきたいということだろう。もとよりネームバリューだけは強いブランドだ。新型スーパーカー、おそらくジュリア クワドリフォリオ用V6ツインターボをミドに積むマセラティMC20クラスのスーパーカーを8月末にアルファロメオ博物館において発表し、その名をもう一度世界に轟かせようという魂胆だ。
アルファロメオ戦前史において、6気筒エンジンを積んだスポーツカーは最大の成功作である。6Cによってアルファロメオのイメージは高みに引き上げられた。おそらく、その成功をもう一度……。全ては月末に明らかになる。そこで、だ。アルファロメオが三度、世界のスポーツカーファンを驚かせることになる(とする)。歴史がクローズアップされる。新作の解説と同時に、8Cや4Cといった特別なモデルが過去の成功作と紐づけられながら語られることになるのだ。つまり、注目度が上がる。
相場が下がる要因はほとんどない
絶版モデルの価値は台数と人気で決まる。8Cは生産台数が極めて少ないため、すでに高い評価を得ている。4Cは前述したように少し多いけれども、アメリカ市場で人気だ。比較的、買いやすい価格でもある。これからビジネスチャンスにしようと思うディーラーが増えることは想像に難くない。
日本はEU、USに次いで三番目の4Cマーケットで、流通台数も多い。日本で販売された500台中、常に一割程度の台数がマーケットで売買されている。それゆえ今のところ中古車相場は新車価格と同じくらい(700万〜1000万円)で推移しており、値上がりも値下がりもしていない状況にある。つまりマーケットも様子を見ている。新型スーパーカーの発表からしばらくの経過次第とはいえ、今のところ、4Cの相場が下がる要因はほとんどない。左ハンドルオンリーというあたりもまた好感が持てる。
それに4Cってやっぱりカッコいいのよ。296とよく似ているというか、丸ワンテールの後ろ姿なんて250LMを思い出す。そしてカーボンモノコックボディ。マクラーレンやランボの量販モデルとは違って、プリプレグ成型ボディよ(ロードカーに限っていえば、どっちが偉いってわけじゃないけれど)。八つ目のクーペがオススメだけど、将来性はスパイダー。前から思っていたんだよね、スパイダーを買って八つ目にしたいって!