高い取り回し性能を実現した「メルセデス・ベンツEQE SUV」

大柄なフル電動高級SUV「メルセデス・ベンツEQE SUV」がスズキ・スイフト並みの取り回し性能を手に入れた秘密

メルセデス・ベンツ日本が7車種目の電動モデルとして8月25日に導入した「EQE SUV」。EQE、EQS、EQS SUVと同様に電気自動車専用プラットフォーム「EVA2」を採用するミドルサイズSUVだ。
メルセデス・ベンツ日本が7車種目の電動モデルとして8月25日に導入した「EQE SUV」。EQE、EQS、EQS SUVと同様に電気自動車専用プラットフォーム「EVA2」を採用するミドルサイズSUVだ。
メルセデスのBEVであるEQシリーズ7番目のモデルとなるEQE SUVが上陸した。大容量バッテリーゆえの528kmという航続距離と圧倒的な居住性、メルセデスならではの上質な室内空間を満喫できるラグジュアリーSUVだ。(GENROQ 2023年11月号より転載・再構成)

Mercedes-Benz EQE 350 4Matic SUV

大柄なボディだが最小回転半径は4.8m

EQE SUVのエアロダイナミクスと堅牢なボディが効いているのか、走り出してすぐにその静粛性に感心した。

2030年までに全新車販売の電動化を目指すメルセデス・ベンツ。2019年にコンパクト電動SUVのEQCを投入したのを皮切りに、今では6車種のBEVをラインナップしている。メルセデスならではのラグジュアリー性とテクノロジーが市場でも高く評価され、2023年第2四半期のBEV販売台数は前年比123%増と実に好調に推移しているという。今やメルセデスの戦略上、BEVは最重要モデルに位置づけられているといってもいいだろう。

そんなBEV界の先駆者が、7車種目の電動モデルとして8月25日に国内導入したのがEQE SUVだ。EQE、EQS、EQS SUVと同様に電気自動車専用プラットフォーム「EVA2」を採用するミドルサイズSUVである。

ボディサイズは全長4880mm、全幅2030mm、全高1670mmと、日本の交通事情でも使いやすいサイズとメルセデスは謳う。「いや、ちょっと待てよ、十分大柄なボディサイズじゃないか」とツッコミを入れたくなった貴方、心配は無用である。EQE SUVはEQS SUVと同様、最大10度まで切れるリヤアクスルステアリングを標準装備することで、最小回転半径4.8mを実現しているのだ。この数値はコンパクトカーのトヨタ・アクア、スズキ・スイフトと同様の数値であり、EQE SUVの取り回し性がいかに優れているかがよくわかる。

最新の空力とヒートポンプで伸びた航続距離

今回、試乗できたのはEQE SUVのラインナップでも売れ筋となるであろうEQE 350 4マティックSUV(以下EQE 350)だ。EQE 350は89‌kWhの大容量駆動用バッテリーを搭載し、前後アクスルに電動パワートレイン(eATS)を採用した4WDモデルである。システム出力は必要にして十分な最高出力292PS、最大トルク765Nm、航続可能距離528km(WLTCモード)の実力を誇る。

528kmという足の長さを実現できたのは、EQE SUVの卓越したエアロダイナミクス性能や新たに採用された新技術が背景にある。最新の空力力学によって設計された丸みを帯びた柔らかなボディデザインやボディ下面のフラット化によりCd値0.25を実現。また、EVA2採用のBEVとして、初めてヒートポンプを装備したことで、最大10%航続距離を伸長したという。

モダンな格納式ドアハンドルを引き出しEQE 350に乗り込んでみる。まず目に飛び込んできたのは、最新メルセデスではお馴染みとなったMBUXハイパースクリーンだ(EQE 350はオプション設定)。3枚の高精細パネルを組み合わせ、ダッシュボード全体を1枚のガラスで覆うこのワイドスクリーンは、いつ見てもモダンで美しい。モニターが巨大なこともあり、操作性は非常に優れたものだ。FMラジオをつけたり、ナビ操作してみたが、その使いやすさに改めて惚れ込んだ。

静謐に満ちた車内に感動

シフトパドルを引き、Dオートモードで走り出す。EQE SUVは回生ブレーキの強さを3段階から任意で選択できるが、Dオートは走行状況に応じて減速の強弱を調整してくれるモードだ。例えば、先行車を検知すると車間を調整しつつ、回生ブレーキの強弱を自動的にコントロールするといった具合に。実際に混み合った都内をDオートで走行してみたが、ドライバーの意を汲んだかのように自動的に回生ブレーキの強弱を使い分けてくれるので、日常使いでは本モードのみで使用でまったく問題ないと感じた。

走り出してすぐに感心したのがその静粛性だ。EQE SUVのエアロダイナミクスと堅牢なボディが効いているのだろう。時折、轍や凹凸をいなすタイヤの走行音が聞こえる以外、車内は静謐に満ちている。システム出力292PS、同トルク765Nmの電動パワートレインは、流れに乗って走行する限りジェントルな振る舞いだが、例えば首都高の合流時など加速が必要な場面ではシートバックに身体が張り付くほどの驚異的な加速を味わえる。EQE 350で標準装備となるスポーツシートは硬さも程よく、腰全体をサポートしてくれる。これは秀逸なシートだ。

やや気になったのはBEVの宿命とも言える車両重量だろう。EQE 350も2630kgという車重には抗えず、コーナリング時など時折その重さを感じる場面があった。まあ、これは致し方がないのだが……。

メルセデス印の上質なラグジュアリー性を備えつつ、車外へ電力を供給できるV2H/V2Lにも対応したEQE SUV。お値段は約1370万円とけして安くはないが、ヒットモデルとなるのは間違いないだろう。

REPORT/石川亮平(Ryohei ISHIKAWA)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年11月号

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツ EQE 350 4マティックSUV

ボディサイズ:全長4880 全幅2030 全高1670mm
ホイールベース:3030mm
車両重量:2630kg
モーター システム最高出力:215kW(292PS)
モーター システム最大トルク:765Nm(78.0kgm)
駆動方式:AWD
EV航続距離(WLTC):528km
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後255/45R20
車両本体価格:1369万7000円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

今回試乗したEQS 450 4Matic SUVの総電力量は107.8kWh、航続距離593km(WLTCモード)を謳う。

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