「アストンマーティン DBX707」で1000kmロングツーリング

アストンマーティンの傑作SUV「DBX707」で琵琶湖までの1000kmロングツーリングを敢行

琵琶湖湖畔のフェリー乗り場に佇む「DBX707」。ツーリング初日はあいにくの雨に降られる時間が長かった。
琵琶湖湖畔のフェリー乗り場に佇む「DBX707」。ツーリング初日はあいにくの雨に降られる時間が長かった。
世界に名だたるグランドツアラー作りの名門「アストンマーティン」。アストンマーティンのラインナップでも傑作といって差し支えのない完成度を誇るSUV「DBX」。そのDBXをベースにハイパフォーマンス化を図った「DBX707」で滋賀までのロングツーリングに出発した。

Aston Martin DBX707

ツーリングはアドベンチャーであり娯楽

放浪癖は生来のものらしく、小さい頃から、誰にも言わずにふらっと出かけては家族や親戚を心配させていた。ただし、電車やバスに乗ることはなく、徒歩か自転車に乗ってどこかに行ってしまうのが常。もちろん目的地などなく、当てもなくただただ彷徨うのが好きだった。

そうした傾向はいまも変わらず、どこかに出かけるなら公共交通機関に頼るより、クルマやバイクを運転するなり、自転車に乗るか、最後は徒歩でもいいから、とにかく自分の力で動きたいという思いが強い。だから、編集部のYと一緒に滋賀まで出張することになった時にも、「クルマを運転していこう」と言い出したのは私のほうだった。

「片道400kmもあるのに、なんと物好きなことか」とアナタは思われるかもしれない。でも、私には私なりの理屈があって、新幹線に乗っていったら、それは業務上の移動になってしまう。でも、自分の力で移動している限り、それは私にとってのアドベンチャーであり、いわば娯楽に等しくなる。だからクルマで行きたいとYに申し出たのである。ただし、旅程やどのクルマで行くかは、すべてYに任せた。彼がどんな提案をしてくれるかを、私は楽しみにしていたのだ。

世界屈指のグランドツアラーメーカー

果たしてYは素晴らしい旅の準備をしてくれた。出発当日、アストンマーティンDBX707で迎えに行くから、それで滋賀までドライブしようというのである。もちろん、私に異論があるはずもなかった。

いうまでもなく、アストンマーティンは世界に名だたるグランドツアラー作りの名門。そんな彼らがSUVを作ったことには様々な意見もあるだろうが、名手マット・ベッカーがゼロから手がけたDBXは、モダン・アストンマーティンのなかでも傑作といって差し支えのない完成度を誇る。このDBXをベースに、日常的な快適性を損なわないようにしつつハイパフォーマンス化を図ったのが、このDBX707で、その名のとおり、エンジン出力はなんと707PSにも達する。滋賀までのロングツーリングに、これほど頼もしいクルマもないだろう。

というわけで指折り待っていたロングツーリング当日、朝から曇りがちだった空は西に向かうにつれて重く立ちこめるようになり、ついにはポツリポツリと降り始めてしまう。それが静岡県西部から愛知県に入る頃には完全に豪雨といって構わないほど雨脚が強まった。

ワイパーを高速で動かしても間に合わないくらい大きな雨粒が、ウインドウスクリーンを強く打ち付けていた。そんな時でも、DBX707は力強く走り続けた。ステアリングをまっすぐ保持していれば、雨水に足下をすくわれることもない。まさに頼もしいばかりの直進性である。

ほぼノンストップで滋賀まで走りきってしまった

あまりの雨脚の強さに、私たちはクルマを停めて休憩するのを躊躇していた。なにしろ、2、3歩歩いただけでもずぶ濡れになりそうな降り方だったのだ。それで、様子を見ながらDBX707を走らせているうちに、気がつけば愛知県を越え、岐阜県に入っていた。取材先に着くまでには昼食を済ませておく必要があったが、気がつけば滋賀県は目と鼻の先。結局、途中、ごく短時間のトイレ休憩で停まったのを別にすれば、ほぼノンストップで目的地まで走りきってしまったのだから、われながら呆れるしかない。

しかも、土地勘のまるでない米原で、たまたま立ち寄った食事処でいただいたランチがまた驚くほどうまかった。しかも、値段もお手頃。こういうことがあるから、ロングツーリングはやめられない。

そんな順調な(?)滑り出しだったから、取材はことのほか実り多いものになり、なんともいえない達成感に包まれて、当日の投宿先を訪れた。琵琶湖湖畔に建つその宿は実に風光明媚で、思わず仕事であることを忘れてしまいそうなほどの安らぎを得た。

1000km弱のロングツーリングを終えて

翌日は、彦根城付近を散策してから、早々と帰途についた。幸い、この日は雨に降られることもなかったから、前日にも増して快適なドライブとなった。DBX707のちょっと硬めな足まわりはハイウェイクルージングでもフラットな姿勢を保ち続けてくれるので、疲労を感じることはほとんどない。

車内が静かなことも、長距離ドライブの疲労を軽減するうえで大いに役立つ。ぜいたくな作りのインテリアに囲まれながら、私とYは、いま進行中の企画のこと、そして今後の仕事について、いつ果てるともなく語り合った。

というわけで、2日間にわたる1000km弱のロングツーリングはつつがなく終わった。サーキット走行も軽々とこなすほど優れたコーナリング性能を誇るDBX707が、クルージングでこれほど高い快適性を示したことは驚き以外のなにものでもなかった。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

SPECIFICATIONS

アストンマーティンDBX707

ボディサイズ:全長5039 全幅1998 全高1680mm
ホイールベース:3060mm
車両重量:2245kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:520kW(707PS)/4500rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/6000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後カーボンセラミック・ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前285/40YR22 後325/35YR22
最高速度:312km/h
0-100km/h加速:3.3秒
車両本体価格:3290万円

DBXをさらに強化した史上最強のSUVを謳うDBX707。多少全高が高くてもアストンマーティンが持つスポーツカーの血統は揺るがない。

アストンマーティンの誇るハイパフォーマンスSUV「DBX 707」で最高速300km/h超に挑戦

SUVでありながら最高速300km/hを超えるDBX707。アストンマーティン初のSUVだが、圧倒的な707PSを発揮する。そんなモンスターをフルに試せるのはサーキットだけだろう。スーパーSUVを真夏の富士スピードウェイで堪能した。(GENROQ 2023年10月号より転載・再構成)

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…