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7˚Historic Minardi Day
日本にもゆかりの深いF1チーム
ミナルディF1チームは、ジャンカルロ・ミナルディの情熱により、1985年から2005年までF1に参戦を続けた愛すべきプライベート・チームだ。また片山右京、中野信治が在籍したほか、現在活躍中の角田裕毅が所属するスクーデリア・アルファタウリの前身であるなど、何かと日本にもゆかりの深いチームとして知られている。
そのミナルディをフィーチャーして2016年からスタートしたヒストリック・ミナルディ・デイは、今やイタリアのヒストリック・モータースポーツ・イベントのひとつのアイコンと呼べる存在となり、毎年ヨーロッパ各国からミナルディ、そしてレーシングマシンをこよなく愛するカーガイたちがやってくるイベントへと成長した。
往時のミナルディ・チームのように
さる8月最後の週末に開催された第7回大会のトピックは、初めて日本からの参加者がいたことだ。
「遠い日本から、しかもミナルディのF1をここまで運んでくれてとっても嬉しいわ。1990年のM190でしょ。同じ年生まれの私にとって最高のプレゼントだわ!」とオーナー氏に嬉しい言葉を投げかけたのは、オーガナイザーのひとりであるエレナ・ミナルディ。聞けばオーナー氏は、イタリア車が大好きで、いつかイタリアのイベントに出場したいという願いを抱き、今回ついに実現できたのだという。
往時のミナルディ・チームのように、イベントはまずモータースポーツ界の重鎮、往年のドライバー、ジャーナリスト、オーナー、メカニックをはじめとする参加者、招待客を集めた、和気藹々としたイタリアらしさが感じられるリラックスした金曜の前夜祭からスタートした。
33年ぶりのイモラへの帰還
そして翌土曜日には、GT、プロトタイプ、フォーミュラ・イタリア、F3など各カテゴリーに分けられ、約400台ものマシンが出走。イベントの華というべきF1+F2+F3000+GP2のカテゴリーには、ミナルディはもちろん、フェラーリ、ティレル、アルファロメオ、アロウズなど20台のF1マシンがエントリーしたのだ!
その中にはもちろん、日本から2ヵ月間船に揺られて、生まれ故郷に到着したミナルディM190の姿もあった。実に33年ぶりのイモラへの帰還である。
しかし、アクセルワイヤーが動かなかったり、ガソリン漏れなど予期せぬトラブルが発生。メンテナンスを担当しているトランジットエンジニアリングジャパンの渡邊博人氏は、なんとかM190を走らせるために足りない工具や部品などを現地調達するために走り回った。渡邊氏によると、右も左もわからない日本から来たメカニックに同業者も街ゆく人も皆親切に対応してくれたという。そのおかげでM190は、多くのファンの前に生まれ故郷で走る姿を披露することができた!
クルマを愛する仲間が集まり、会話し、走るイベント
そんなヒストリック・ミナルディ・デイは、スピードを競うレースではなく、クルマを愛する仲間が集まり、会話をし、走るイベントだ。タイムを気にすることもなく、過度の緊張もない。
また、参加しているドライバーは、根っからのクルマ好きが多く、自分のクルマを放って他のパドックを歩き回り、クルマ探検をしている人も多い。ゆえにオーナーやドライバーなど様々な人々が直接知り合うことができるので、思いもよらないネットワーク、ビジネスが生まれるチャンスも潜んでいる。
加えて今回目についたのは、モータースポーツの歴史に目を向けている若者が多いことだった。その中から、この先も歴史を語り継いでくれる人たちが出ることを願わずにはいられなかった。
人と人との心が通い合うオールドスタイル
昨今、モータースポーツの世界でもグローバリゼーションが謳われているが、ヒストリック・ミナルディ・デイは、まだまだイタリア色が強い、緩くて楽しい、人と人との心が通い合うオールドスタイルのイベントだ。
来年は是非、超猛暑の日本を飛び出して、イタリアン・エンスージアストの熱気に溢れた熱いイモラへ出かけてみてはいかがだろうか。
REPORT/野口祐子(Yuko NOGUCHI)
PHOTO/Marco Isola、Matteo Grazia、Luca Martini、Mirco Lazzari、Damiano Fiorantini、Yuko Noguchi
COOPERATION/Historic Minardi Day(https://minardiday.it)、TRANSIT engineering JAPAN
MAGAZINE/GENROQ 2023年11月号