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トレーラーでフォーミュラカーを引っ張りたい!
本来であれば、10年近く連れ添った204型のメルセデス・ベンツC200ステーションワゴンに別れを告げ、新しい愛車を迎え入れる……予定だった。ところが10万kmを迎えてもなお、まったくCクラスに不具合が起こる気配はなく……というよりも絶好調で、愛着があることもあり、買い換えるという気分にならなかった。
確かに全長4.5m前後のワゴンで、ちゃんと走って安全性も信頼性も高く、トルコンATで、できれば後輪駆動かAWDという条件を並べていくと、結局のところCクラスか、BMWの3シリーズに落ち着いてしまう。ならば、このまま暫く乗り続けてもいいかと思い直したというのが正直なところだ。
しかしながらなぜ今時トルコンAT、後輪駆動/AWDに拘るのか? というと、未だトレーラーでフォーミュラカーを引っ張るという夢をあきらめていないから。現実問題としてトレーラーの保管場所を考えると、限りなく実現不能に近い夢ではあるものの、人生何が起きるかはわからない。ということで、レース用具一式を積め、人が乗り、トレーラーを引っ張れ、かつあまり大きすぎないクルマがベスト、というわけだ。
ワンオフのエキゾーストパイプ
前置きが長くなってしまったが、こうした理由で2023年にクルマを買うことはできなかった。仕事道具のパソコンやカメラ、レンズも新調していないし、ずっと欲しいと思っている新しいヘルメットやレーシングスーツも買っていない。では2023年に買った一番大きな買い物は何か? それはワンオフのエキゾーストパイプだ。
実は我が家のガレージには、この10年ほどロータス69という1971年製のフォーミュラカーが棲みついている。100馬力に満たないノーマルの1600cc直4OHVフォード・ケント・エンジンを積んだ、フォーミュラ・フォード1600というカテゴリーに属するクルマで、国内で開催されるヒストリックカー・レースに出場するのが、ささやかな僕の趣味であり、楽しみでもあるのだ。
この10年、テールエンダーをうろうろしたり、クラッシュしたりと苦労もあったけど、前回の年末年始コラムでも書いたように、2022年に鈴鹿で行われたスーパー耐久開幕戦の前座レースで優勝したり、ここ最近は乗れるようになって調子も上向いてきた。
ところがである。エンジンを回すようになったのと老朽化の相乗効果で、レースウィークのたびにエキパイのどこかが割れ、サーキットの周りを駆けずり回って溶接をお願いするという状態が続くようになったのだ。当初は騙し騙しなんとかなっていたものの、昨年末にガレージでチェックしていたら2番と3番の間の入り組んだ部分に結構な大きさのクラックを発見。さすがにこれは、と覚悟を決め、エキパイを新調することに決めた。
今年のお小遣いがすべて吹っ飛んだが……
とはいえ52年も前のレーシングカーのエキパイなど売っているわけでもなく、ワンオフで作ってもらう以外に方法はない。もちろん安いに越したことはないけれど、ちゃんと良いものを作って欲しい……と逡巡した挙句、老舗の東名スポーツにお願いすることに。
クルマと共に預け、しばらくして出来上がってきたエキパイは、仕上げ、フィッティングともに見事なもの。早速7月の筑波のテストデイに持ち込んでみたところ、エンジンの吹けもツキも格段によくなって俄然乗りやすい。しかも「また割れるかも?」とビクビクせず、思いっきり乗れるのも精神衛生的にいい。
結果、35℃近い気温の中でも1分4秒5のトップタイムを記録して、改めて排気効率は大事だなと身をもって知ることができた。ちなみにお値段は……というと、今年のお小遣いがすべて吹っ飛ぶほどの立派なもの。よし、これで来シーズンは……と思っていた年の瀬に、Cクラスが全電源喪失の突然死で緊急入院。ロータスのタイヤも替えたいし、ローバー・ミニの車検もあるし、しばらく大きな買い物はしたくないのだけれど……。