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■インドとタイ市場を念頭に開発されたブリオ
2011(平成23)年3月17日、ホンダはアジア市場向けに開発した新型コンパクトカー「BRIO(ブリオ)」を発表、同年5月下旬にタイ国内で発売することも付け加えた。ブリオは、アジア戦略車としてタイやインドなどのエントリーカー市場に向けて新開発したコンパクトカーである。

ホンダのアジア進出の歴史
2000年を迎える頃にはクルマをめぐる国際環境は大きく変化して、日本の自動車メーカーは飽和状態の先進国以上に販売の伸びが著しい中国やアジア新興国に力を注ぎ始めていた。中国を除くと2010年当時、タイやインドはモータリゼーションの爆発期であり、安価なエントリーモデルのコンパクトカーと多くの人と荷物が運べる小型ピックアップが人気を獲得していた。特にタイでは、多くの日本メーカーが現地での生産や販売を強化して熾烈な競争を繰り広げていた。
ホンダは、1983年にタイに4輪車販売合弁会社ホンダ・カーズ・タイランドを設立し、アジアにおける4輪事業を開始。1980年代半ばに「シビック」、1990年代初頭には「アコード」の現地生産を始めたが、当時はピックアップを中心とした商用車がシェアの大部分を占めていたこともあり、また現地調達率が低いことから価格は高く、生産台数も少なかった。
安価なクルマを提供するために現地調達率を上げることに取り組み、新たにアユタヤ工場を立ち上げ、1996年には新開発のファミリーセダン「シティ」を発売し好調な販売を記録した。その後、タイにR&Dアジアパシフィックを設立して本格的な開発体制も整い、アジア市場で人気のあるコンパクトカーの開発に取り組んだのだ。
アジア戦略車ブリオがタイでデビュー

新しいアジア戦略車のコンパクトカー、ブリオは、2010年11月に“タイランド・インターナショナル・モーターエキスポ2010”のプレスデーで初公開された。翌2011年3月のこの日に正式に発表され、5月にタイ、9月からはインドでそれぞれ販売が始まった。

ブリオは、ボディサイズ3610×1680×1475mm(全長×全幅×全高)のコンパクトな5ドアハッチバックで、スタイリングはフロントマスク周りにフィットの面影がみられるが、完全なオリジナルにまとめられた。リアにいくほどホップアップするキャラクターラインや前後フェンダーの膨らみでダイナミックさをアピールしている。

コンパクトなボディだが、ホンダ伝統のM・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム:人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に)思想を継承して、広く使い勝手の良い室内空間が実現された。
1.2L直4 DOHC i-VTECエンジンを搭載し、タイ政府のエコカー認定基準である5L/100km以上の燃費性能とEuro4排ガス規制値に対応した環境性能を達成。また、運転席と助手席のエアバッグを全グレードで標準装備して、車両価格を39万9900バーツ(約107万9730円)からの設定とし、タイ市場で求められる性能とリーズナブルな価格を両立した。

生産は、ホンダオートモービル(タイランド)カンパニー・リミテッドが行ない、販売台数は発売から4万台/年が計画された。
ブリオの派生車
ブリオ発売の翌2012年には、ブリオをベースにした4ドアセダンの「ブリオ・アメイズ」をタイに、2013年にはインドでも発売された。

ブリオ・アメイズは、リヤオーバーハングが延長され、400Lの十分なトランク容量を持ち、エンジンはブリオと同じ1.2L 直4 DOHC i-VTECが搭載された。価格は、約45万4000バーツ(日本円で約122万円)とブリオより高額に設定された。

またインドネシアでも、ブリオをベースにしてインドネシア仕様にアレンジした5ドアハッチバック「ブリオ・サティヤ」をインドネシアの工場で生産し、2012年から販売が開始された。
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かつて新興国向けのクルマは、日本車をグレードダウンして販売していたが、現在は国ごとの特色や嗜好に合わせて現地調達、現地生産が基本となっている。そうすることで、現地従業員のモチベーションが上がり、技術力が向上するというメリットもあるのだ。
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