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水平対向エンジンがないEVでもスバルらしい楽しい走りを!
STIの近未来モータースポーツ・スタディプロジェクト「STI E-RA CHALLENGE PROJECT」で開発を進めてきたクルマが、このSTI E-RA CONCEPTである。E-RAの意味は、Electric-Record-Attemptであるが、もちろん、時代の「era」の意味もかけてある。
STI E-RA CONCEPTは、2022年に国内サーキットを含む走行実験を重ねたのちに、2023年以降にドイツ・ニュルブルクリンクでのタイムアタックを目標にしている。最初の目標タイムは400秒=6分40秒だという。
ニュルブルクリンクは20.832kmだから、ここを400秒で走りきるとなると平均時速は188.4km/hとなるわけだ。300mの高低差、170以上のコーナーを持つ、”緑の地獄(Green Hell)の異名を持つニュルブルクリンク北コースで、VWのID.Rはすでに6分5秒をマークしているから、STIとしては、6分40秒は、まず第一段階の目標ということだろう。
オートサロンに展示されたSTI E-RA CONCEPTは、いわゆる展示用のもので走行できないが、開発はすでに進んでいる。
駆動方式は、スバルだからもちろんAWDだ。システム最高出力は800kW(1088ps)。駆動モーターは4基。車輪毎にモーターを配置する。4モーター4輪トルクベクタリング技術でクルマを制御するわけだ。
モーターはヤマハ製ハイバーEV用
モーターはヤマハ発動機製。ヤマハのハイパーEV向けギヤ、インバーター一体式大トルク高回転タイプ(永久磁石同期モーター)を採用する。バッテリーは60kWhのリチウムイオン電池を搭載する。ヤマハ側の資料では最高出力は1基350kW。電圧は800Vとある。
「独自のトルクベクタリングシステムは、走りの愉しさを最重要課題としたドライバー志向の制御で、4輪それぞれのグリップ限界までバランスを均等化させることで、グリップレベルを最大限に引き上げるとともに、車体の姿勢を安定させる技術」だという。
最大の効果を得るためには、荷重移動にともなって最適な駆動トルクを4輪に独立に与えるのが最良の手段で、車輪速、車速、舵角、G、ヨーレート、ブレーキ圧、輪荷重などの各種センサーからの信号をリアルタイムに計算し、目標のスタビリティファクターになるように各輪の駆動制動トルクを決めてインバーターに指示を出す。
4モーターは、4輪すべてにダイレクトにモーターが付いているため応答性が高く、かつ車体のヨーを直接的にコントロールできるため、車両運動性能を最大化できるシステムとして考えられる。将来のモータースポーツ車両(FIA E-GT)のレギュレーションにも盛り込まれていることから、STIが取り組む最適な方向性だという。
展示車両はモックアップだが、空力処理も含めてかなり煮詰めたものだという。今後は、実車を作って走行させて、カナードの調整などのブラッシュアップをしていくという。
バッテリー容量は60kWhだ。日産リーフ e+のバッテリーが62kWhでWLTCモードの一充電走行距離が458kmだ。
ニュルブルクリンク北コースでタイムアタックするとなると、60kWhのバッテリーを積むSTI E-RA CONCEPTは、コース1周半(30km前後か)しか走れないという。実際のタイムアタックではコース上のどこかからスタートして助走をつけてコントロールラインを通過してタイム計測することになるようだ。
タイムアタック時の電費は0.5km/kWhということになる。最高速度300km/hを超えるニュルアタックがいかに過酷か窺い知れる。