運転席からの見晴らしはもちろんいいのだが、シートの高さ自体は乗用車系プラットフォームを採用する最近のSUVとしては一般的。実際に運転席の座面前端の地上高は約720〜790mmの間に位置し、同じ日産のアリアが約710〜770mmであるのと大差ない。
筆者の身長(173cm)だと、むしろシートを高めに設定しないと長いボンネットの先を見通せない。それでも四隅が切り立ったデザインのおかげで、取り回しにおけるコーナー感覚はつかみやすかった。そもそも道が広いアメリカでは取り回しに気を遣うシーン自体がほとんどないのだが、これなら日本でも意外と運転しやすいのではないかと感じられた。
パスファインダーは、日本でもおなじみのプロパイロットを標準装備。しかも、地図情報と連携したプロパイロット・ウィズ・ナビリンクが採用されている。これは実際にハイウェイで試すと想像以上に優秀だった。アメリカのハイウェイは平均車速が高く、周囲のクルマもかなりトリッキーな動きを示す。なかなかの速度で急に割り込まれることもしばしばあるのだが、プロパイロットはそれをしっかり検知して自然な減速と車間距離調整を行ってくれた。
乗り心地もいたって良好。もっとユサユサと揺さぶられるものと覚悟していたのだが、ハイウェイのジャンクションで旋回するときもシャキッとした足回りがボディを支え、破綻なくスムーズにクリアすることができた。撮影車の足回りはオプションの20インチホイールにハンコックのDynapro HP2(255/50R20)という組み合わせ。M+S仕様ではあるものの、明らかにオンロード志向のタイヤだったこともあり、街中を走る分には十分に快適な走りを堪能することができた。
V6エンジンも、日本の環境以上に瞬時の加速が要求されるアメリカのハイウェイで、機敏に走れるトルクの立ち上がりを示す。アメリカというと、広大な一本道をのんびり走るという印象を抱く方もいるかもしれないが、少なくともロサンゼルスなどの都市部やハイウェイはまったくの逆。周囲のペースに合わせて走るにはクルマのパワーもドライバーの集中力もかなり要求されるのだ。
しかもハイウェイの路面はほとんどがアスファルトで舗装されておらず、コンクリむき出しのため、とても滑りやすい。そのためガツンとブレーキを踏んだ時の制動力の立ち上がりや挙動変化も乗り手に与える安心感に直結。パスファインダーはその点においても優秀だった。自在にブレーキコントロールが可能なため、先に述べたプロパイロットの制御ともども、初めてでも不安なく乗りこなせたところが最も印象に残っている。
シートは「SL」の場合、レザーとファブリックを使用したコンビ仕様を採用。撮影車はセカンドシートにオプションのシートヒーター付きキャプテンシートを備えていた。サードシートは膝前にぎりぎりクリアランスができる程度の広さ。あまり快適とは言えないが、ローグ(新型エクストレイル)の3列仕様車よりはだいぶましな印象だ。
荷室の幅はホイールハウス間で約1240mm、手前側の最も広い部分で約1290mm。奥行きはサードシート使用時で約450mm、サードシート格納時はセカンドシートのスライド位置によって約1110〜1310mmの間で調節できる。セカンドシートも格納した場合の奥行きは約2150mmと広大だ。高さは約800mmとなっている。
今回の試乗は撮影の移動も兼ねていたため、約1週間の日程でロサンゼルス近郊を中心に走り、片道約100マイル(160km)のサンディエゴも往復。平均燃費は20.3mpgで、日本式に換算すると約8.63km/Lとなった。ガソリン価格高騰はアメリカでも深刻で、贅沢を言えばもう少し走ってくれればなあ、というのが偽らざる感想である。
前編でも触れたが、パスファインダーは日本市場でガチンコのライバルを見出そうとすると現状ではジープのグランドチェロキーLくらいしかなく、そのほかはボディサイズや価格帯が異なるモデルばかり。間もなく登場するであろう新型エクストレイルも大いに話題となるに違いないが、現行パスファインダーももし日本に導入されれば、独自のポジションを築けるに違いない。