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Xの現在地
SKYACTIV-XエンジンがMAZDA3に搭載されたのは、2019年12月、CX-30は2020年1月。180ps/224Nmというパワースペックからスタートした。その後、24Vのマイルドハイブリッド付き(M-HYBRID)のパワートレーンは、「e-」が付く表記となり、当初からM-HYBRIDだったSKYACTIV-Xは、「e-SKYACTIV X」という表記になった。パワースペックも190ps/250Nmへアップしている。
e-SKYACTIV Xは、内燃機関に関わるエンジニアの夢を実現したエンジンだ。火花による膨張火炎球をエアピストンとして圧縮に使い、ガソリンの自己着火を促すことで高速燃焼を実現。プラグ点火を使うため、マツダはSPCCI(Spark Controlled Compression Ignition)と命名している。燃焼状態を常時モニターし、プラグの点火タイミング等を制御。状況に応じて通常の火花点火とSPCCIを切り替えながら運転する。これがスカイアクティブXエンジンの仕組みだ。
SKYACTIV-Xには、イートン製の機械式スーパーチャージャー、各種センサー、そして24V M-HYBRIDなど「高価なデバイス」が付いている。だから、どうしても車両価格が高くなる。そして、重くなる。
ちなみに4WD/6ATモデルで車両重量を比べると
e-SKYACTIV G:1500kg
SKYACTIV-D:1540kg
e-SKYACTIV X:1550kg
車両重量が嵩むから選ばないという人はいないだろう。問題は価格だ。
e-SKYACTIV Gの20S Proactive 4WD 6AT:291万1500円
SKYACTIV-D1.8のXD Proactive 4WD 6AT:319万円
なのに対して
e-SKYACTIV Xは
X L Package 4WD 6AT:391万5980円
X Black Tone Edition 4WD 6AT:364万6500円
やはり高い。今回、CX-30 e-SKYACTIV G搭載モデルに1000km乗ってから、間をおかずにe-SKYACTIV Xに試乗した。
相変わらず独特のフィーリング
e-SKYACTIV Xは、エンジンを始動した瞬間からフィールが独特だ。ガソリンエンジンでもディーゼルエンジンでもない、SKYACTIV-Xだけしかない感触だ。
自然吸気ガソリンエンジンよりグッとトルキーで
ディーゼルエンジンより断然滑らかな回転フィール
なのだ。そして何より、言い方が難しいが、回転フィールが「濃密」。濃いのだ。
世界最先端の技術をこの手にしている優越感とこの濃密な味わい、それこそがSKYACTIV-Xの価値、と言っていい。
これが難解なのだ。言い方を違えると
ターボ過給ガソリンエンジンよりトルクがなくて
ディーゼルエンジンほど燃費がよくない
となる。
それでいて、価格は高い。うーん、難しい。
今回のe-SKYACTIV X搭載のCX-30で547.2km走った。トータルの燃費は15.3km/ℓだった。
前回、e-SKYACTIV G搭載モデルは同じ4WD/6ATで1034.8km走行して14.8km/ℓだった。
たしかにXの方が燃費がいい。が、燃料はプレミアムになる。
レギュラー:160円/ℓ
ハイオク:171円/ℓ
軽油:140円/ℓ
だとすると
1km走るのにかかるコストは
e-SKYACTIV Gが10.8円/km
e-SKYACTIV Xが11.2円/km
でXの方が高いのだ。
単純に燃料代を考えれば、GでもXでもなくD=ディーゼルを選ぶだろう。車両価格ならGだ。では、Xは?
ディーゼル XD Proactive 4WD 6AT:319万円 D1.8(4WD 6AT) 燃費:WLTCモード 18.7km/ℓ 市街地モード 15.5km/ℓ 郊外モード 18.7km/ℓ 高速道路モード 20.6km/ℓ e-SKYACTIV X X L Package 4WD 6AT:391万5980円 X Black Tone Edition 4WD 6AT:364万6500円 e-SKYACTIV X(4WD 6AT) 燃費:WLTCモード 16.6km/ℓ 市街地モード 13.5km/ℓ 郊外モード 17.4km/ℓ 高速道路モード 17.8km/ℓ e-SKYACTIV G 20S Proactive 4WD 6AT:291万1500円 e-SKYACTIV G2.0(4WD 6AT) 燃費:WLTCモード 15.5km/ℓ 市街地モード 12.1km/ℓ 郊外モード 15.9km/ℓ 高速道路モード 17.3km/ℓ
筆者は、Xの先進性と「濃密な味」を高く評価する。新しい技術に投入された時間とコストと熱意をコストに積み上げた結果の価格を受け入れる。いわゆるアーリーアダプターがその役割を果たす。自動車メーカーは、そうしている間に、コストダウンを進め技術を広めていく。そうやって新しい技術が定着していく。内燃機関には、おもに欧州方面からアゲンストの風が吹いている。が、絶対に失ってはいけない技術だ。
SKYACTIV-Xは、かつてのトロイダルCVTの轍を踏ませてはならない。そう思う。
そのためには、e-SKYACTIV Xモデルの価格がもう少し手頃になるといい。そして、「濃密な味」だけでない、もう少しわかりやすい価値を提示してほしい。「圧倒的な燃費」なのか、「圧倒的なトルク感」なのか「圧倒的なパワー感」なのか。
欧州では、2023年にも直列6気筒のe-SKYACTIV XがCX-60に搭載されるはずだ。そこでXの第二章が始まるはず。どう進化するか、依然楽しみでならない。
マツダCX-30 e-SKYACTIV X L package 全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1540mm ホイールベース:2655mm 車重:1530kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式&トーションビームアクスル式 駆動方式:4WD エンジン 形式:2.0ℓ直列4気筒DOHC+SC 型式:HF-VPH型(e-SKYACTIV X) 排気量:1997cc ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm 圧縮比:15.0 最高出力:190ps(140kW)/6000pm 最大トルク:240Nm/4500rpm MK型交流同期モーター モーター最高出力4.8ps(6.5kW) モーター最大トルク61Nm 燃料:プレミアム 燃料タンク:48ℓ 燃費:WLTCモード 16.6km/ℓ 市街地モード 13.5km/ℓ 郊外モード 17.4km/ℓ 高速道路モード 17.8km/ℓ トランスミッション:6速AT 車両本体価格:391万5980円