ホンダZR-V | ホンダの現在を象徴するデキの良さ。4WDモデルがいい

ホンダZR-V e:HEV Z AWD 車両価格:411万9500円
2022年、各メーカーの多くのクルマに乗ってきたが、フルモデルチェンジ、マイナーチェンジモデルともに、ホンダの出来の良さに感心させられた。なかでもシャシー性能とハイブリッド・ユニットに関しては、まるでHEV化への抗うかのように、既存の技術を磨き込み、新ユニットさえも投入し、環境と走りの性能を進化。2022年末にデビューしたZR-Vは、そんなホンダの一年を締めくくる、期待のSUVモデルである。
TEXT:瀨在仁志(SAZAI Hitoshi)PHOTO:Motor-Fan
全長×全幅×全高:4570mm×1840mm×1620mm ホイールベース:2655mm 車重:1630kg

ZR-Vはヴェゼルと22年末に販売終了となった上級SUV・CR-Vとの間を埋めるべくモデルといった位置付けだと思っていたが、子細を見てみるとちょっと違う。
ボディサイズはCR-Vの全長×全幅×全高が4605mm×1855mm×1680mmに対して、
ZR-Vは4570mm×1840mm×1620mmと全高を除けばモールやバンパーサイズの違い程度しかない。ホイールベースに関してはCR-Vの2660mmに対して2655mmとほぼ同じ。

エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:LFC 排気量:1993cc ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm 圧縮比:13.9 最高出力:141ps(104kW)/6000rpm 最大トルク:182Nm/4500rpm 燃料供給:DI 燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク:40ℓ
モーター H4型交流同期モーター 最高出力:184ps(135kW)/5000-6000rpm 最大トルク:315Nm/0-2000rpm

パワーユニットも2.0L直4ガソリンエンジンをベースにしたHEVモデルに変わりはないが、CR-VのLFB-H4型からZR-Vは新開発の直噴ユニッLFC-H4型へ換装されている。

これを見る限り販売終了となったCR-Vの後継モデルとしてみるのが正解で、大きな違いは価格だ。

CR-Vが同じHEVモデルの上級グレードのFF392万5000円/4WD414万5800円だったのに対し、ZR-VはFF389万9000円/4WD411万9000円とほぼ同レベルながら、ベースモデルとして、FF329万8000円/4WD351万8000円とお値打ちモデルを設定。コンベの1.5ℓ直4ターボを搭載したエントリーモデルは、295万9100円(X FF)である。

CR-Vが高級路線を歩んで多くのモデルが400万円を超えてしまった反省からか、ZR-Vは低価格に抑えることで、エントリーしやすくしている。

ソフトパッドに覆われたインパネ。直線基調はシビックと同じだが、少し高級に感じる。

ホンダは走りや環境性能に関しては開発に余念がなく、大きな進化を遂げているが、価格設定や商品企画が、ハードルを高めてしまい、クルマ本来の出来の良さを伝え切れていなかった。ZR-Vはようやく商品企画「ホンダの今」を象徴するモデルとして、ユーザーに届けられることになったのだ。

もちろん350万円ちょっとで手に入れられるZR-VのHEV4WDモデルの走りは期待通りだ。新開発された2.0L直噴ガソリンエンジンは振動や騒音レベルが抑えられ、ホンダならではの気持ちの良さを持つ。ホンダならではのHEVシステムは街乗り領域や都市高速の流れレベルまでは常にモーターで走っているが、多くのシーンでは発電のためにエンジンがかかっている。

加減速時は間違いなくモーター駆動として滑らかに反応している一方で、発電しているエンジンもアクセルの動きに対して同様に反応。まるでエンジンで気持ちよく走ってるかのような錯覚を覚える。

加減速時のエンジン音やそのレスポンスはスッキリとしている上に軽い吹け上がりによって、ホンダならではのガソリンユニットを楽しんでいるかのようだ。そして、速度を上げ、高負荷になってくるとエンジンは力強さと切れ味を一層演出して、モーターとエンジンの加速力で滑らかさとパンチ力を両立。さらに速度を上げれば、エンジンだけで高回転域まで回して伸びの良い走りを見せてくれる。

速度域によって、モーター、エンジンとモーター、そして、エンジン単体として、さまざまなパワーフィールを見せつつ、充電中を含めて常にエンジンの気持ちよさを演出してくれているのが心憎い。

リヤから床下を除くと、4WDモデルはカップリングユニットが見える。
リヤサスペンションは、マルチリンク式。4WDモデルはロワーリンクがアルミ合金製だ(FFモデルはスチール)

乗り味的にはFFモデルはリヤ荷重が50kg軽くなっている分、上下に動きやすく、4WDモデルは前後のバランスが良く、上下の動きは小さい。ハンドリング的にもFFモデルは軽快さを見せつつ、旋回方向の収まりがやや遅れる印象があり、4WDモデルはリヤの追従性が良くて、常にライン上をピタリとトレース。背の高さも感じさせない。ピッチング方向の動きも少ないから、乗り心地、ハンドリング性能共に4WDモデルがいい。

室内に目を向けてみても厚みのあるパッドに覆われて、上級SUVを目指した、CR-V同様の高い質感もあり、シビックで感動した走りの良さに、SUVのパッケージングと最新の走りの性能を満たしたZR-Vはまさに、今が旬の最適モデル。シビックでは満たされなかった背の高さと4WD技術を価格を抑えることによって、多くのユーザーを納得させてくれるはず。今後ホンダの中心的存在になるに違いなく、2023年の要注目モデルの1台だ。

最小回転半径:5.5m 最低地上高:190mm 車両重量:1630kg 前軸軸重950kg 後軸軸重680kg
ホンダZR-V e:HEV Z AWD
全長×全幅×全高:4570mm×1840mm×1620mm
ホイールベース:2655mm
車重:1630kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R マルチリンク式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:LFC
排気量:1993cc
ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm
圧縮比:13.9
最高出力:141ps(104kW)/6000rpm
最大トルク:182Nm/4500rpm
燃料供給:DI
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:40ℓ

モーター
H4型交流同期モーター
最高出力:184ps(135kW)/5000-6000rpm
最大トルク:315Nm/0-2000rpm

WLTCモード燃費:21.5km/ℓ
 市街地モード 19.5km/ℓ
 郊外モード 23.9km/ℓ
 高速道路モード 21.1km/ℓ

車両価格:411万9500円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…