カーアクション映画『ベイビー・ドライバー』で激走する真っ赤なスバル・インプレッサWRXはどこかヘン?【 “いもっち”が語る! 銀幕のスバル vol.3】

Car chase from TriStar Pictures’ BABY DRIVER.
スバルマニアを自負する"いもっち"こと井元貴幸がお送りしている、映画&ドラマに登場するスバル車をチェックするこの企画もいよいよ第3回。今回は2017年に第90回アカデミー賞において3部門ノミネートの『ベイビー・ドライバー』をピックアップしよう。

スバル車が登場する映画の中でも、2017年に公開された『ベイビー・ドライバー』は、予告編にも多く使用された冒頭6分間のカーチェイスに多くの人が惹きつけられた。
派手なドリフトやスピンターンが目を惹くシーンだが、スバルファンには何より使用されているクルマに目を奪われる。

2017年に公開された『ベイビー・ドライバー』は、エドガー・ライト監督、アンセル・エルゴート主演。スタリッシュな映像とアクション、そして音楽は評論家の評価も高く、第90回アカデミー賞において音響編集賞・録音賞・編集賞の3部門でノミネートされた。
(c)2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.

劇中車は二代目インプレッサWRXの後期型「鷹目」

登場するのは2006年式のスバル インプレッサ WRX。国内では「鷹目」の愛称でお馴染みの二代目インプレッサ(GD型)の後期モデルだ。
ひと口に後期型といっても、スバルの場合、ほとんどのモデルで年次改良と呼ばれる毎年の改良が実施されており、アプライドモデルという形式も付与される。登場時のA型からはじまり、毎年B型、C型とつづき、後期と呼ばれるモデルはこのF型とG型にあたる。

インプレッサWRXの後期型「鷹目」は2005年6月マイナーチェンジから。当時、スバルが採用していたファミリーフェイス「スプレッドウインググリル」デザイン。
アプライドモデル名は2005年〜2006年が「F」、2006年〜2007年が「G」となる。最終年式は2007年だが、アプライドモデルは「G」で継続された。
二代目(GD型)のデビューである2000年〜2002年までの「丸目」。当時はファニーフェイスの評判が芳しくなかった。アプライドモデルは「A」と「B」。
2002年のマイナーチェンジでフェイスリフトを受けて「涙目」に。アプライドモデルは「C」「D」「E」で2005年までこのスタイルで生産された。

二代目インプレッサといえば、6年間のモデルライフで2回の大幅なフェイスリフトが行われ、前期の「丸目」、中期の「涙目」、後期の「鷹目」が存在する。
登場時の丸目は初代インプレッサ(GC型)のシャープな顔つきから一転してファニーな顔つきとなったことで、当時は否定的な意見も多くマイナーチェンジで涙目フェイスとなったともいわれている。
ただ、最近ではこの丸目も若い人を中心に人気が高く、特に女性オーナーからは可愛らしい顔つきと現代でも通用する高い動力性能のギャップに”萌える”ユーザーも多いようだ。

「STI」ではなく標準仕様のインプレッサWRX。

国内仕様は1.5L~2.0LのNAエンジンを搭載するカジュアルなモデルと、EJ20型水平対向4気筒DOHCターボエンジンを搭載するスポーティなWRX系に分類される。
WRX系は、標準仕様となるWRXに加え、ブレンボ製ブレーキキャリパーや6速マニュアルトランスミッションなどでさらに走行性能を高めたWRX STIが設定されているが、『ベイビー・ドライバー』に登場した劇中車は標準モデルのWRXとされている。

STIではないWRXだが、その仕様は謎が多い

劇中車では小ぶりなリヤスポイラーが装着されているが、これは国内仕様の鷹目には設定がない。厳密には中期型となる涙目のWRX(および軽量モデルのWRXスペックC)へ装備されていたものと酷似している。
また、外装で注目されるのはなんといってもそのボディカラー。国内ではインプレッサといえばWRブルーのイメージだが、『ベイビー・ドライバー』に登場するのは真っ赤なインプレッサだ。

『ベイビー・ドライバー』のインプレッサWRXのサイドビューがはっきりとわかる。
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イメージ的には逃走には向かないような派手なカラーだが、実はアメリカでは赤いクルマは意外と多いそう。劇中でもヘリから追跡されるシーンでは赤いクルマが高速道路上で並走する場面がある。とはいえ、国内のクルマ好きからしたら「赤いインプはむしろ目立つだろ!」という声も聞こえそう。それもそのはず、後期型の二代目インプレッサではWRX STIに赤いボディカラーの設定はないのだ。ターボモデルで赤を選ぶとなるとGDA型WRXか、軽量モデルのWRX STIスペックCからとなる。ちなみに、赤いボディカラー自体もF型はソリッドレッドで、G型がガーネットレッドパールと微妙に異なる。

WRXのインテリア。トランスミッションは5速MT。
WRX STIのインテリア。トランスミッションは6速MT。

こうしたことからも、劇中車はおそらくGDAに該当するWRXと推測できるわけだが、細かく映像を見ていくと「おや?」と思う部分も多い。
例えば銀行を襲撃し、仲間が乗り込んでインプレッサを発進させるときに、シフトノブのアップが写るが、ノブの下側にリバース用のリングが見える。これはSTI用の6速MT車に装備されるもので、5速MT車には存在しない。また、メーター部分もアップになるシーンがあるが、タコメーター内にSTIロゴが見える。
じつはこれらはGDAをベースに、一部のパーツをSTI用の物を組み込んでいるためで、撮影用になんと5台の赤いインプレッサが用意されていたそうだ。激しいカーチェイスシーンを撮影するためにFR化された個体まで存在したというから驚きだ。

カウンターをあてて四輪ドリフトで交差点へと突入していく”ベイビー”の真っ赤なインプレッサWRX。
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他にも気になる点では、サンルーフの装備。国内仕様のGDAは中期(涙目)まではWRXにガラスサンルーフがオプション設定されていたが、鷹目には設定がない。
実は米国仕様ではサンルーフの需要が高く、国内仕様に設定の無いモデルでもサンルーフ仕様があるのだ。国内ではSTIを冠したモデルでは、 三代目インプレッサWRX  STI A-Line登場までサンルーフの設定はなく、MTのSTIとなると、VAB型WRX STI後期モデルの途中まで設定が存在しない。こうしたお国柄事情も見ていくと面白い。

インプレッサWRXのサンルーフ装着車(北米仕様)

もう一点気になる部分といえばフロントシートだ。国内仕様のWRXではスポーティバケットシートがWRXシリーズには標準装備となっており、北米仕様でもこのタイプのシートとなっているはずだが、劇中ではヘッドレストが別体となっているNA用と同じデザインのシートとなっているのだ。一見するとレザー仕様にも見えるが、この辺りはそうした仕様があったのか、はたまた撮影用にシートを交換したものなのかは定かではない。

WRXシリーズのシートはヘッドレスト一体型のバケットタイプが標準。
WRX以外ではヘッドレストはセパレートだ、画像は2005年モデルので2.0R。

国内でも『ベイビー・ドライバー』ファンが、この劇中車を再現したレプリカを製作しているオーナーもいるようだが、ベースとするモデルが国内に存在しないため、なかなか完全なレプリカを製作するのは難しそうだ。
赤いボディカラー、サンルーフ、後期型(鷹目)という組み合わせがないとなると、最も劇中車に近い仕様を作るならば、中期型(涙目)GDAの赤、サンルーフ付きを購入し、鷹目フェイスへスワップ。NAグレードのシートにレザーのシートカバーを装着し、GDBのエンジン、ミッション、メーターを移植するのが一番酷似した仕様にできそうだ。
とはいえ、そもそも個体数が少ない上に、そこまで手間をかける人が居るのかが疑問ではあるが、これからベイビー・ドライバー仕様にしたい!という方は是非参考にしてみては?

まだ見ていないなら今スグ映像をチェック!

映像作品はソニー・ピクチャーズからリリースされており、ソフトではDVD、Blu-rayが手に入る。さらにPrime VideoやU-NEXTといったのデジタル配信サービスであればすぐに視聴可能となっている。
インプレッサWRXの活躍は冒頭6分に集約されているが、スバルファン、インプレッサ(特に鷹目)オーナーなら見て損はない。そのカーアクションとスタイリッシュな映像&音楽に惹き込まれること間違いなし!

アンセル・エルゴート演じる”ベイビー”がクルマから降りた強盗チーム, ダーリン(エリザ・ゴンザレス)、バディ (ジョン・ハム)グリフ (ジョン・バーンサル) を車内から見送る。
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■STORY
子供の頃の交通事故の耳鳴りを消すために、彼は四六時中イヤフォンを身につけ音楽を聴いている青年”ベイビー”(アンセル・エルゴート)は、天才的ドライビング・センスの持ち主。その腕を買われ組織の”逃がし屋”として、銀行や現金輸送車を襲ったメンバーを確実に逃がす”仕事”を任されてる。
組織のボスのドク(ケヴィン・スペイシー)、短気でクレイジーなバッツ(ジェイミー・フォックス)、凶暴すぎる夫婦バディ(ジョン・ハム)とダーリン(エイザ・ゴンザレス)。彼らとの仕事にスリルを感じ、才能を活かしてきたベイビーだったが、恋人デボラ(リリー・ジェームズ)の存在を嗅ぎつけられ、組織から”抜ける”決意を固める。
恋人と組織を道連れに、最後の”仕事”が今、暴走を始める!

インプレッサWRX以外にもダッジ・チャレンジャーSRTヘルキャットやメルセデス・ベンツS550などが登場する。さらに三菱ギャランやインフィニティG20(日産プリメーラ)など、日本では見られないアメリカ産日本車も見ることができる。上のシーンでは86のミニカーも。流石にミニカーではトヨタ86かサイオンFR-Sかまではわからない。
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『ベイビー・ドライバー』
・スタッフ
監督/脚本/製作総指揮:エドガー・ライト
製作:ニラ・パーク  
製作:エリック・フェルナー   
製作:ティム・ビーヴァン   
撮影:ビル・ポープ      
編集:ポール・マクリス      
音楽:スティーヴン・プライス      
衣装デザイン:コートニー・ホフマン 

・キャスト
ベイビー:アンセル・エルゴート(下川 涼) 
デボラ:リリー・ジェームズ(竹内 恵美子) 
ドク:ケヴィン・スペイシー(石塚 運昇) 
バッツ:ジェイミー・フォックス(江藤 博樹) 
バディ:ジョン・ハム(東地 宏樹) 
ダーリン:エイザ・ゴンザレス(きそ ひろこ) 

デジタル配信中
Blu-ray:2619円(税込)
DVD:2,075円(税込)
4K ULTRA HD&ブルーレイセット:7480円(税込)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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著者プロフィール

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井元 貴幸

母親いわくママと発した次の言葉はパパではなくブーブだったという生まれながらのクルマ好き。中学生の時…