ボルボXC40 フェイスリフトを受けて中身も大進化 一気に375km走って新パワートレーンの実力を試した

ボルボXC40 Ultimate B4 AWD 車両本体価格:579万円
インポートのコンパクトSUVで高い人気を誇るボルボXC40。フェイスリフトを受けて変わったのは顔だけではない。エンジンも大きく進化している。最新のボルボXC40、その最上位グレードUltimate B4 AWDを春の九州路で試した。
TEXT:鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)PHOTO:平野 陽(HIRANO Akio)

電動化一直線かと思ったら、エンジンも進化させていた

全長×全幅×全高:4440mm×1875mm×1660mm ホイールベース:2700mm 車重:1750kg(前軸軸重1010kg 後軸軸重740kg)
こちらがフェイスリフト前のXC40

福岡空港でボルボXC40を見たときに、あれっ、ちょっとシャープになったな、と思った。そうなのだ。XC40はデビュー以来初めてのフェイスリフトを受けたのだ。

XC40の2023年モデルは
Recharge Ultimate Twin motor:739万円
Recharge Plus Single motor:639万円
Ultimate B4 AWD:579万円
Plus Pro B4 AWD:539万円
Plus Pro B3:509万円
Plus B3:469万円

というラインアップだ。Rechargeが付いた2モデルはBEV、それ以外は、2.0L直4ターボ+48Vマイルドハイブリッド(MHEV)でエンジンは出力違いで2スペック、ハイパワー版が4WD、スタンダード版がFFになる。

今回、九州でロングドライブの相棒となってくれたのは、Ultimate B4 AWDである。

ボディカラーはフュージョンレッド。諫早湾の干拓地をドライブしてみた。XC40は2018年に欧州カー・オブ・ザ・イヤーと日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

ボルボといえば、熱心に電動化を進めているブランドだ。2030年に50%(日本は45%)、2035年にはグローバルですべての新車販売をBEVにすると宣言している。事実、あれほど評判の良かったディーゼルエンジンもカタログから姿を消し、ガソリンターボ+MHEV、PHEV、BEVのみをラインアップしている。つまり、現時点でも電動化率100%なのだ。やることが徹底している。

さて、乗り出してみよう。福岡市内から南へ。目的地は島原に設定した。伴走するのはV90 Recharge Ultimate T8 AWD Plug-in hybridだ。

電動化一直線のボルボだから、コンベのガソリンエンジンやトランスミッションの開発はもう止まっているのでは? と思う向きもいるだろう。ところが、だ。最新のXC40は、エンジンにもトランスミッションにも大きく手が入っている。

エンジン 形式:直列4気筒DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド 型式:B420T5(K8)-3330 排気量:1968cc ボア×ストローク:82.0mm×93.2mm 圧縮比:12.0 最高出力:197ps(145kW)/4750-5 250rpm 最大トルク:300Nm/1500-4500rpm 燃料供給:DI 燃料:プレミアム 燃料タンク:53L
モーター:3330型交流同期モーター 定格出力:8kW 定格電圧:48V 最高出力:13.6ps(10kW)/3000rpm 最大トルク:40Nm/2250rpm
これが新採用されたVNT(バリアブルノズルターボ)。ガソリンエンジンでは採用例が少ない高価なターボチャージャーだ。エンジンは後方排気のレイアウトを採る。

まずはエンジンだ。ターボチャージャーがVNT(バリアブルノズルターボ)になった。ディーゼルエンジンではお馴染みのタイプなのだが、排気温度の高いガソリンターボではまだ採用は少ない。これを載せてきた。さらに、インテーク側の電動VVT(可変バルブタイミング)を新しくし、それを使ってミラーサイクルを実現した。ピストンのデザインも変更している。オイルポンプの新型になったという。おそらく電動のオンデマンドタイプになったのだろう。圧縮比は10.5から12.0まで上がった。

狙いはもちろん燃費(とドライバビリティ)の改善だ。

最新のUltimate B4 AWDの燃費(WLTC)は14.2km/L、21年モデルのB4 AWDインスクリプションの燃費は12.2km/Lだった。16%の燃費の向上は、なかなかすごい。

お馴染みのオレフォス製クリスタルのシフトレバー

トランスミッションも進化した。以前のB4はアイシン製8速ATを採用していた。このトランスミッションの完成度は非常に高かったから、ずっとこれでいくのだろうと思っていたら、なんと新開発の7速DCTに変更になっていたのだ。湿式のデュアルクラッチに電子制御の機械式ギヤシフトアクチュエーターを使ったこのトランスミッションは、48Vで駆動するモーターを上手に協調制御することで、シフトショックを見事に抑えている。市街地のストップ&ゴーでもDCTにありがちなギクシャク感はない。また、アイドルストップからの再始動も非常にスムーズだ。燃費も良くなってドライバビリティも上がったのだから良いことずくめである。

「OK Google!」が想像以上に便利

「OK Google! 島原城について教えて」と話しかけると
こんな表示を返してくれる。センターディスプレイは9インチ。

最新のXC40は全車Google Apps and Servicesを搭載している。つまり、日頃使い慣れたGoogleマップが使える。また「OK Google!」と呼びかければたいていのことは用が済むのだ。

試しに「OK Google! 島原城のことを教えて」とか「島原名物ってなに?」とか「ここから福岡空港まで何時間かかるかな?」とかを呟いてみた。これが存外便利だった。マイカーにしたらもっとうまく使いこなせるだろう。

島原城の前を走るXC40。
諫早湾干拓堤防道路をV90 Recharge Ultimate T8 AWD Plug-in hybridとともに走る。

さて、左に有明海を眺めながら、気持ちのよいワインディングを流す。積極的にシフト操作をしようと思うと、ステアリングホイールには変速パドルがない。どうするかといえば、ボルボお馴染みのオレフォス製の美しいシフトレバーを左右に(右が+、左が-)動かすことで変速をするのだ。これにはちょっと違和感を覚えた。とはいえ、7速DCTは上手に変速してくれるから、あえてマニュアルモードにする必要がないかもしれない。

今回の九州ドライブでは375km走って、トータル14.7km/Lの燃費だった(平均時速52km/h)。WTLCモード燃費が14.2km/Lだから、それ以上の燃費をマークできたわけだ。ほぼ渋滞はなかっとはいえ、撮影をしながらのドライブは、燃費走行には向いていない。この燃費は、エンジン&トランスミッションの改良のたまものだろう。

白いシートも相まって明るいインテリアがいい。
Ultimateは従来のInscription相当の装備をもつ
リヤサスペンションはマルチリンク式
フロントサスペンションはFマクファーソンストラット式

SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)を使うXC60/XC90が日本人がみな思い浮かべる上質な北欧らしい佇まいなのに対して、XC40は国産にもドイツ車にもない雰囲気を漂わせながら若々しくカジュアルな楽しさを持っている。最上級のUltimate B4 AWDでも価格は579万円。直接のライバルはVWティグアン、BMW X1、アウディQ3、メルセデス・ベンツGLAあたりになるだろうが、XC40にはドイツ勢では味わえない個性が魅力だ。顔つきだけでなく内容も大きく進化したXC40、長く付き合えば付き合うほどオーナーの生活に馴染んでいくクルマとなりそうだ。売れている理由が九州路のロングドライブでわかった。

ボルボXC40 Ultimate B4 AWD
全長×全幅×全高:4440mm×1875mm×1660mm
ホイールベース:2700mm
車重:1750kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rマルチリンク式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド
型式:B420T5(K8)-3330
排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0mm×93.2mm
圧縮比:12.0
最高出力:197ps(145kW)/4750-5 250rpm
最大トルク:300Nm/1500-4500rpm
燃料供給:DI
燃料:プレミアム
燃料タンク:53ℓ
モーター:3330型交流同期モーター
定格出力:8kW
定格電圧:48V
最高出力:13.6ps(10kW)/3000rpm
最大トルク:40Nm/2250rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:電子制御AWD

燃費:WLTCモード 14.2km/ℓ
 市街地モード10.4km/ℓ
 郊外モード:14.7km/ℓ
 高速道路:16.5km/ℓ
車両本体価格:579万円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…