乗ればわかる!? 三角のギザギザがもたらす空力効果! ホンダアクセスの実効空力デバイスを体感試乗【モーターファンフェスタ2023】

シェブロン形状の実効空力デバイスのよる効果は低速の試乗でも体感できるという。
4月23日の日曜日、好天に恵まれ開催されたモーターファンフェスタ2023においてN-BOXを真剣な表情で試乗する参加者たち。その試乗目的は「実効空力」の追求から生まれたシェブロン(鋸刃)形状のデバイスの有無による走行感覚の違いを知ることだった。はたして、その正体と効果とは?
PHOTO&REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya)

ホンダアクセスの実効空力コンセプトとは?

シビックタイプRの純正アクセサリーとしてテールゲートスポイラーを開発する過程において実効空力デバイスの効果は確認されたという。

ホンダ車の純正アクセサリー(ディーラーオプション)を開発している専門の会社があることはご存知だろうか。「ホンダアクセス」という名前に聞き覚えがあるかもしれない、同社こそホンダの純正アクセサリーを担っている会社だ。

さらにいえばホンダアクセスは独自に走り味を追求するこだわりの集団でもある。そうしたスピリットを注入したコンプリートモデルとして「Modulo X」というシリーズを展開していることも知られている。

「Modulo(モデューロ)」らしい走りの根幹にあるのはコントロール性であり、そのための有効な手段となっているのが実効空力と呼ばれる日常の速度域で感じ取ることのできるエアロダイナミクスだ。

最新のシビックタイプR用テールゲートスポイラーにおいて、実効空力は新しい知見を得たという。それが鋸歯(シェブロン)形状の「実効空力デバイス」と名付けられた形状である。

製品化されている新型シビック タイプR用の「テールゲートスポイラー」には、ウイング下面に「鋸歯」形状(シェブロン)実効空力デバイスを採用されている。
裏面後端にある鋸歯が直進安定性や、旋回時の追従性などに寄与する。風洞実験では鋸歯形状により空気の渦を壊して霧のようにしていることが確認できたということだ。

小さな三角形が生み出す空力効果

実効空力デバイスをマグネットによりルーフ上に貼り付けるよう工夫。デバイスの有無による違いを体感できるプログラムとなっていた。

今回の試乗プログラムでは、シビックタイプR用テールゲートスポイラーの下面に備わっているシェブロン形状だけを取り出した「実効空力デバイス」を用意。N-BOXのルーフエンド部にマグネットで貼り付けることで、デバイスの有無による走りの違いを感じ取るという内容になっていた。

非常にマニアックな比較試乗となるが、受付開始から早々に試乗枠が埋まるほどの人気ぶり。すでにメディア向けには実効空力デバイスの比較試乗イベントが実施されていたこともあり、そうしたレポートを読んだユーザーが、「本当に効果があるのか自分でも確認してみたい」といった思いで参加していたようだ。

富士スピードウェイ内の道路を走行し、実際の使用シーンでの効果を検証する体感試乗プログラムだった。

トレース性や乗り心地の改善を実感

ホンダアクセスにてModuloの開発をリードしているのが福田正剛さん。参加者の反応は想像以上だったという。

実効空力デバイスの効果を一般ユーザー代表の参加者は、どのように感じたのだろうか。

助手席に同乗して参加者とコミュニケーションをとったスタッフの福田正剛さんに伺ってみよう。福田さんは、ホンダアクセスにてモデューロの開発を率いている人物。自分たちの成果を一般ユーザーがどのように感じ取ってくれるのか、内心ドキドキだったという。

「クルマのエンジニアリングに詳しい方に乗っていただいたときには、最初は『信じていませんよ』という感じで疑っている様子でした。しかし、実効空力デバイスを装着して走り出すと『あれ? なんか違うぞ』といった表情をされたので、安心したというか、やった! という気持ちになりました。その方からは『トレース性がよくなった』という感想をいただきました」。

「ほかの参加者の方からも、確実に走りが変わったという感想は共通していました。ロードノイズ低減や揺れの改善などの効果を『クルマが落ち着いて感じる』と言ってくださった参加者の方もいらっしゃいました」。

実効空力デバイスのメカニズムとは?

風洞実験では鋸歯形状により空気の渦を壊して霧のようにしていることが確認できたということだ。

ホンダアクセスが生み出した実効空力デバイスについては、「効果は確実にあるが、そのメカニズムについて完全に解析できてはいない」という段階にあるという。

現時点でわかっているのは、シェブロン形状が空気の流れを霧化するということだ。

その効果によりボディ後端やウイングの後ろに発生する渦を解消、渦による悪影響を解消することで、車体の安定性やステアリング操作への応答性、ノイズの低減などの体感できるメリットにつながっていると推定できる。

ちなみに、福田さんによると「今回はルーフ後端に装着していますが、フロントバンパー下部につけても効果はあります」という。ホンダアクセスが手に入れた実効空力デバイスという新しい知見から、どのような機能的純正アクセサリーが生まれてくるのだろうか。大いに期待したい。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…