クルマde給電? HEV、PHEV、BEV、FCEVから家に停電したら給電できる V2Hとどこが違う?

トヨタホームの「クルマde給電」は、停電時にクルマから家庭へ電力を供給できる非常時給電システム。プリウスPHEVの試乗会場でデモが行なわれた。どんなシステムなのだろうか?

新築なら25万円、既存の家に追加なら30万円台後半から

配電盤とは別に、切り換えスイッチボックスを設置する。写真の中央に見えるのがそれだ。
これが、切り換えスイッチ。停電時に系統電力から外部電源に切り換える。

気候変動のせいか災害による停電の備えを考えなければならなくなった。一度停電になれば、復旧するまで冷蔵庫は止まるし、もちろん照明も消える。スマホの充電もできない。

そんなときに、トヨタホームが提案しているのが「クルマde給電」だ。

これは、HEV、PEHV、FCEV、BEVなど大容量バッテリーを持つクルマで100V・1500W/非常時給電システム付きコンセント、または100V・1500W/ヴィークルパワーコネクターを搭載しているクルマから家庭に電力を供給するシステムだ。

トヨタホームだから、トヨタ車については検証済みだそうで、そのほかのメーカーでも1500Wのアクセサリーコンセントを持つモデルなら問題ないそうだが、詳しくは問い合わせて確認してほしい。

上記のとおり、家庭に供給できるのは100V/1500W、つまり15Aである。家庭の分電盤とは別に車両接続用装置と切換スイッチを設ける。切換スイッチは、停電時に系統電力(東京電力や関西電力など)から外部電源(つまりクルマから)に切り換えるスイッチだ。

車両から家には、住宅の給電インレットにこうして繋ぐ。
プリウスPHEVからは、ここから出力する。タイトルカットではプリウスPHEVから給電しているように見えているが、実がテントの外にアクアが置いてあって、アクアの1500Wアクセサリーコンセントから繋いでいた。

家とクルマを結ぶものに、V2H(ビークル・トゥ・ホーム)がある。こちらは、家とクルマは双方向で電力をやりとりできる。それに対してクルマde給電は、クルマから家への一方通行になる。

V2Hは、太陽光発電や定置型バッテリーを組み合わせて、家とクルマ(この場合はプラグインできるPHEVやBEVになる)で電気のやりとりができる。その分、設置にかかるコストは高い。

対するクルマde給電は、非常にクルマから家に給電するだけ。だからコストは低くて済む。ただし、V2Hは導入時に補助金が付く(現在のところ)が、クルマde給電には補助金がつかない。ただし導入へのハードルは低い。

現在、クルマde給電は、トヨタホームとパナソニックホームズ、ミサワホーム(3社はグループ会社)で取り扱っている。

ちなみに消費電力は
照明60W
冷蔵庫150W
TV70W
スマートフォン10W
扇風機30W
エアコン(冷房)500-600W
エアコン(暖房)600-800W
程度だから、停電時に家族がリビングルームに集まれば、1500Wあれば復旧まで安心して在宅避難ができるわけだ。

プリウス(2.0L)のガソリンタンクが満タンであれば約5日間分、給電できるという。トヨタホームの説明によると、ゼロエネルギー住宅などで太陽光発電用パネルを導入する家庭は増えているが、コストがかかるのでV2Hや家庭用蓄電池まで設置する余裕がない場合がある。それでも非常時のことを考えて、クルマde給電を設置する人が新築なら6割ほどいるという。

災害・停電はないに越したことはない。クルマde給電も一度も使用しない方がいいに決まっている。が、いざというときの安心のため、ということでは大変心強いシステムである。

ちなみに、今時は、BEV用の家庭用普通充電器は、新築なら7割、建売の新築ならほぼすべて最初から付いているそうである。

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