強固な基本骨格を継承する孤高の本格オフローダー「スズキ・ジムニー」【最新軽自動車 車種別解説 SUZUKI JIMNY】

SUVテイストやアウトドア志向の軽自動車は数あれど、本格オフローダーとしては「スズキ・ジムニー」の唯一無二のポジションにつく。オンロードのポテンシャルも先代より大きく向上しており、22年の一部仕様変更では、5速MT車の停車時アイドリングストップシステムの追加で実用燃費が向上、日常使いでも好感度は高まった。
REPORT:河村康彦(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:神村 聖 MODEL:大須賀あみ

四角ボディにラダーフレーム 唯一無二の悪路走破性も美点

軽自動車であってもSUV風味の装いが施されたモデルは珍しくなくなっている昨今。そうした中にあっても、スクエア基調でタフネスぶりが強調をされたルックスのみならず、ボディ骨格に現在では稀なラダーフレーム構造を用いていたり、サスペンションにリジッドアクスル方式を用いていたり、さらにはパートタイム4WD方式のドライブトレインには副変速機を備えていたりと、基本部分からヘビーデューティな構造を採用することで「軽自動車では唯一無二の本格オフローダー」と紹介することのできるキャラクターの持ち主がジムニーだ。

エクステリア

典型的な2ボックススタイルで、狭い林道などでもボディ四隅を把握しやすく、機能性の高さを物語る。2021年9月の一部改良で、スペアタイヤロアカバーを追加。ブラックルーフは、「XC」にオプション。最小回転半径は4.8m。

1.5ℓエンジンを搭載し、フェンダー部分を拡幅することによって小型車カテゴリーへと踏み込んだジムニーシエラという派生モデルも存在してはいるものの、実はそのキャビン部分はジムニーと同様で居住空間も変わっていないなど、ベースとなったモデルはあくまでも軽自動車版の方というのも大きな特徴。

もちろん海外に目を転じてもライバルに該当するモデルは見当たらず、1970年に販売が開始された初代以来、4代に渡る歴代モデルいずれもが孤高の存在として、独自の立ち位置をアピールすることになっているのも、他の軽自動車とは大きく異なるポイントだ。

乗降性

実はごく最近になって、インドのモーターショーでかねて噂をされていたジムニーシエラの5ドアバージョンがヴェールを脱いだばかりだが、それが今後日本でも展開されるかは現時点では不明。しかしながら、現在は3ドアボディのみの設定とされている点も、むしろ本格的なオフローダーというジムニーの基本コンセプトをより明確にしているひとつの要因となっている。

インストルメントパネル

取り回しがしやすい水平基調で、エアコン用ダイヤルなどの操作系は手袋をしたままでも扱いが容易。「XG」を除きフルオートエアコンを標準装備し、ナビは販売店オプション。

さらに、多くの軽自動車が4WD仕様を設定する中にあってもこのジムニーのようにそのシステムがいわゆる〝生活四駆〞と表現される簡易的な構造ではなく、また205㎜という大きな最低地上高を確保したものが他に存在していない現状では、文字通り「ライバル知らず」というフレーズで紹介をするに値しているのがこのモデルということにもなる。

居住性

ターボ付きの3気筒エンジンに組み合わされるトランスミッションにはMTとATの両タイプが用意されているが、ATは率直に言って時代遅れ感が否めない4速仕様で、実際にステップ比が大きいことから変速時のショックも大きめでパワーのつながり感も今ひとつのため、より好印象を抱くことができるのはMTの方。

また、いかにオフロード性能の高さが売り物とは言っても現実により多くの機会で遭遇するのはオンロードの場面ということになるはずで、そうしたシーンでのポテンシャルが先代に対して大きく向上していることも確かだが、それでも直進性やコーナリング性能が特に高いわけではないこともまた事実だ。

うれしい装備

頭上や後方が狭くても開けやすい横開き式テールゲート。背面タイヤ付きなので操作に少し力がいるが、小柄な人でも腕を伸ばさずに閉められる。





月間販売台数    3254台(22年7月〜12月平均値)
現行型発表      18年7月(一部仕様変更22年6月)
WLTCモード燃費   16.6km/l ※5速MT車 

ラゲッジルーム

とはいえ、オフロード性能がわずかにでも低下してしまうのであればそれと引き換えにオンロード性向上の手段を選ばなかったのは「正解」と言えるのも間違いのない事柄。ここまでピュアな開発コンセプトが貫かれたのはジムニーならではだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.148「2023 軽自動車のすべて」の再構成です。

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