ルノー・キャプチャーは「欧州コンパクトSUVのリーダー」との触れ込みで、今年2月に二代目となる新型が上陸した。実際、初代キャプチャーは2013年から2019年に世界累計170万台以上を売り上げて、一時は欧州のコンパクト=BセグメントSUV市場1位がほぼ定位置……と言えるほど売れた。また、二代目も欧州で発売初年度となった2020年で、全SUVで1位の売り上げを記録したという。
完全なドイツ車優勢市場の日本から想像するより、欧州におけるルノーは何倍もメジャーであり、そんなルノーの中でもキャプチャーは稼ぎ頭である。つまりキャプチャーを見れば、今現在の欧州車のド真ん中が分かる……といっても、おそらく過言ではない。
欧州でBセグメントSUVが流行の兆しを見せ始めたのは、今から10年ほど前のことだ。当時はいかにも新ジャンルの黎明期らしく、各社による個性的な試みも多かった。中にはハッチバックの地上高を拡大しただけのナンチャッテ系もあれば、逆に古典的なクロスカントリー4WDの残像を色濃く残したものもあった。あるいは、後席や荷室を明確に割り切ったスポーツクーペを思わせるスタイルコンシャスSUVも存在した。
2013年に欧州デビューとなった初代キャプチャーも、そんな前例のない新ジャンル商品の1台として生まれた。その後、BセグメントSUVが確固たるセグメントして確立されるにつれて、そこでトップの売り上げを記録するようになった。そして、最新の二代目キャプチャーも、こうして初代のデザインやパッケージレイアウトの方向性を踏襲する“正常進化型”となっている。今の欧州コンパクトSUVは初代キャプチャーのコンセプトやパッケージを追随したモデルに溢れている。
キャプチャーの特徴をひと言で表すなら“正統派”ということになろう。メカニズムやデザインに奇をてらったところはないが、ライバルと比較するとボディサイズは大きめだ。そして素直に立派に見えて、質感もほどよく高く、とても使いやすい。
基本骨格はBセグメントハッチバックのルーテシアと共有しつつも、ホイールベースをきちんと延長して、地上高や全高もたっぷり確保している。結果として、室内空間は素直に広くて乗降性もよく、スライド機構を備えたリヤシートやダブルフロアシステム付きのトランクは、すこぶる使い勝手がいい。さらには、インテリア調度もBセグメント平均値よりも高級感がある。スタイリングも、素直に街中に似合うデザインながら筋肉質なところはSUVらしい力強さもある。
そんなキャプチャーが二世代続けて売れている理由を、ルノー自身は「C〜Dセグメントからのダウンサイジング層をきっちり取り込めたから」と分析している。考えてみると、コンパクトSUVとしては立派な体躯のキャプチャーの居住性や積載性は、Cセグメントとほぼ同等といっていい。厳密な走行性能や快適性、各部の高級感ではCセグメントに譲るところも少しあったが、見晴らしのいい視界性能やコンパクトサイズゆえの取り回しの良さがそれを補っている。結果として、目の肥えた上級セグメントの顧客から「肩の力を抜いて付き合うのに好適」と受け入れられた。それがキャプチャーが成功した最大の理由だ。
ただ、初代からの進化が最も顕著なのは、走りかもしれない。初代は良くも悪くも活発だが躍動的な乗り味が特徴だったが、二代目はしっとりフラットな所作で、車重はほとんど重くなっていないのに乗り心地は明らかに重厚になった。四輪をバラバラに蹴り上げるようなウネリ路でも、ひたりと吸いつくようにクリアしていく、いかにもルノーらしい体幹の強さとしなやかさには感心する。1.3Lターボの154ps/270Nmというスペックも、同クラスの中では最もパワフルな部類に入る。
これで価格は299万円〜319万円。最新の欧州Cセグメントと比較すると、ちょっと安め……といえる心憎い設定である。必要以上にドイツ車偏重になってしまっている日本の輸入車市場はともかく、フランス車が当たり前にベストセラー争いに加わる欧州市場であれば「そりゃあキャプチャーは売れるわな」と思ってしまうのはウソではない。