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乗り味と操縦性の均衡が絶妙 4WDの走破性や安定性も◎
2021年11月にワールドプレミア、22年4月に日本仕様発表となったスバル・ソルテラ。トヨタbZ4Xと共同開発されたBEV(電気自動車)で、トヨタではe-TNGA、スバルではe-SGPと呼ぶプラットフォームはBEV専用だ。
エクステリア
トヨタ側にスバルのエンジニアが赴いて開発作業が進められたが人数は50対50。当初はそれぞれの車種でデザイン以外の差別化は図るつもりはなく、ともに「いいBEVをつくろう」と始まった。どちらのメーカーがどの領域を担当するという取り決めもなかったが、進んでいくうちに得意分野が自然と分かれていったようだ。その一例が4WDと衝突安全であり、一家言あるスバルのエンジニアが主導することになった。FWDと4WDが用意されるが、前者はフロントに150kWのモーター、後者は前後に80kWのモーターを搭載。4WDではフロントの出力を下げて前後が同等になるようにしたのはスバルのこだわりであり、リヤの駆動力をフロントと同等以上にすることで常に四輪のグリップ力を活かした4WDならではの走破性や安定性が得られるのだという。
乗降性
またFWDモデルは両車で走りに関する差別化は行なっていないが、4WDではソルテラのみパドルスイッチとパワーモードを採用。ショックアブソーバーの減衰力を高めてドライバーズカー寄りの味付けとなった。車両重量が2000㎏前後となるこのクラスのBEVのSUVは、乗り心地と操縦安定性のバランスをとるのが難しい。可変ダンパーなどを使わずに、背高な重量級ボディを支えるには少し硬くなりがちなのだ。
インストルメントパネル
ところがソルテラはしっかりとした操縦安定性がありながらも、サスペンションはスムーズで快適性が確保されている。トヨタRAV4やスバル・フォレスターなどと比べてもシャシー性能は高く、振動の少なさも相まって上質な乗り味になっている。4WDモデルはシャキッとした動きとなっており、bZ4Xに比べるとわずかに硬さを感じることがあるものの、上下動が素早く収束して乗員が揺さぶられることが少なく、ロングドライブではかえって疲れが少なくなる。ショックアブソーバーのチューニングだけでスバルらしさが表現されているのだ。
居住性
かし、座面の短さやヘッドクリアランスの少なさなどから座り心地としてはタイトな印象となってしまう。
加速はFWDでも十二分だが、タイトコーナーの立ち上がりなどではホイールスピンを抑えるために出力が絞られることがあり、そこでは4WDが有利。雪道などでは絶大なトラクション性能に加え、あらゆる場面で安定感がある。前後ツインモーターによる4WDなので駆動力配分の制御は自由自在だが、つくり込んでいくうちにスバルのガソリン車の4WDと近似した制御となり、これまでやってきたことが間違っていなかったと実感したそうだ。そこにモーターならではの自由度を上乗せした制御となっている。
うれしい装備
月間販売台数 50台(22年10月〜23年2月平均値) 現行型発表 22年4月 一充電走行距離 ※WLTCモード 567km※「ET-SS」のFWD車
ラゲッジルーム
バッテリー残量を表示するメーターがないこと、低温時に急速充電の受け入れが思わしくないことなどユーザーから不満の声も聞かれているが、近い将来に改善されるという推測もある。スバル初の本格量産BEVということでバッテリー制御に慎重を期したゆえだろうが、今後の進化に期待したいところだ。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.149「2023-2024 国産&輸入SUVのすべて」の再構成です。